音叉振動式荷重センサーは1983年日本で開発された。実用に供されてから20年以上の月日を経て、大きな実績と信頼を得るに至っている。
金属音叉は、両端に加えられた荷重の大きさに比例して、振動数が変化する。金属音叉振動方式はかりおよび天びんは、この原理を応用し、金属捧や弦の固有振動が、加えられた張力や圧縮力によって変化する現象を利用して荷重を求める。
センサーは金属製の音叉とこれに荷重を伝達するリンク機構だけで構成される。荷重はデジタル量である振動数として直接取り出されるため、A/D変換器が不要である。
金属音叉式電子はかりは、比較的最近開発された技術だが、分解能は電磁式はかりに近く、ロードセルを凌駕しており、経年変化が少ないなど抜群の安定性を備えている。年々改良されて高精度の製品が開発されており、最近では精度でも電磁力平衡方式にせまるものが開発されている。
音叉センサの優れた特性
(1)再現性=金属の歪みを利用しない方式で再現性に優れる。
(2)直線性=もともと得られる信号は非直線だが、安定しているため直線化の計算をマイクロコンピュータが行い、ノンリニアを極小化できる。
(3)温度特性=メカニズムの大半が単一の恒弾性材料の使用により構成されているため温度特性に優れる。
(4)発熱が少ない=センサーや回路の消費電力が少なく、発熱は微少であるため外部機構に与える影響が少ない。また電源投入時のウォーミングアップも不要。
(5)長期安定性=誤差要因が少ないため、特に長期安定性に優れる。
日本の文部省(現文部科学省)が2000年にハワイに設置した世界最大級の反射型天体望遠鏡「すばる」にも、音叉センサー技術が採用された。
口径8・3mという、一枚ガラスでできた巨大な反射鏡面の形状を保持するために、システム内のセンサーに金属音叉式荷重センサーが使用されている。これは、精密さ、安定性の2つの特性によるものである。261本の形状保持システムの中には金属音叉荷重センサーが設置されている。100万分の1、相対測定精度で30万分の1を超えている。
金属音叉振動式は、ロードセルのようなひずみ計ではなく力計であり、測定範囲内で実際に発生する振動子の応力やひずみが小さいため、ヒステリシスが少なく再現性に優れている。
この特性を生かし、電子天びん、電子はかり使用上の困難とされていた、爆発性雰囲気下で使用を可能にする本質安全防爆構造の電子はかりとして、日本で初めて労働省(現厚生労働省)の認定を受けている。また、高精度で広い測定レンジを利用して、書状から小包までを1台でカバーできる郵便料金はかりもつくられている。
MMTS音叉式センサー
MMTS(Mono-Metal Tuning-Fork Sensor)は、はかりの基本性能を更にグレードアップした。60万分の1の高分解能が得られノイズに強く高速応答とチラツキの少ない安定した表示を可能にしている。省エネ設計とシンプルな機能が、優れた長期安定性と抜群の耐久性を実現した。
不確かさに影響する分解能、長期安定性を向上するために、一体型音叉式力センサーが開発されたのである。双音叉振動子を取り込んだ構造になっており、組み立て時の残留応力やひずみによる再現性低下を解決した。軸方向の応力だけが双音叉振動子に作用するので、精度も向上している。実験結果も、感度の安定性が6カ月で3・0×10−5以下というすぐれた数値となった。
JIS規格対応の天びんも
JIS規格に対応した音叉式天びんも登場し、音叉式に対する信頼度は上がっている。JIS精度は1級もしくは2級。
音叉式の分析天びんが登場
さらに最近では、音叉式の分析天びんが登場。
これまで、220万分の1の計量性能(分解能)は、すべて電磁力平衡方式による電子天びんに限られていた。しかし2007年、世界で初めて電磁力平衡方式以外のセンサーを搭載し220万分の1の計量性能(分解能)を実現する音叉式分析天びんが開発された。
ここに至って、電磁力平衡式と音叉式の機能的な境界は徐々に曖昧になってきていると言える。
日本機械学会関東支部賞
こうした動きには、外部からの評価も高い。
新光電子(株)は2009年3月、分析天びんの音叉センサー開発により、「2008年度日本機械学会関東支部賞」の技術賞を受賞した。
感度が高く外部振動に強い音叉振動子形状および信号処理方法を考案し、高精度で高安定な計測特性を持つ革新的な音叉センサーを開発・実用化したことが認められた。
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