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「食」に関するすべてのフィールドを改革

片山隆(株)寺岡精工社長に聞く

聞き手は高松宏之編集部長

vol.3

日本計量新報 2015年7月5日(3063号)2面掲載

「食品」をキーとして

−−寺岡精工が今後力を入れていきたいフィールドはどこでしょうか。

4つのフィールドとも力入れる

それは全部です。4つのフィールドとも力を入れていきます。
 現在は「流通小売分野」の貢献度が相対的に大きいですが、それ以外のフィールドも拡大していかなくてはなりません。「流通小売分野」についても、POSレジなどまだまだ伸びる余地があります。

カギは「食品」

全体を俯瞰してみると、すべてのフィールドで食品がらみの製品、ソリューションの提案が多いということがいえます。
 それは食べるという行為は、人間が生きていく限りは絶対になくならないからです。生産者が食料を生産して、それが加工されて食品になり消費者の口に入るまで、その経路のすべてのところに寺岡精工は関係しています。
 寺岡精工が事業を展開している「流通小売分野」、「食品製造・加工分野」、「製造・物流分野」、「飲食・専門店分野」のすべてのフィールドが、「食品」をカギにして関連しています。

いろいろな提案ができる

6次産業という言葉がありますね。農業や水産業などの第1次産業が食品加工・流通販売にも業務展開している経営形態をさす言葉です。
 農業を例にとると、農業生産者が主体的、総合的に関わることで、加工賃や流通マージンなどの今まで第2次・第3次産業の事業者が得ていた付加価値を、農業生産者自身が得ることによって農業を活性化させようというものですが、小さな会社が大手に対抗するためにいろいろ考えるわけです。
 寺岡精工は「食品」のすべての局面に関わっていますから、そういういろいろな局面でさまざまな提案ができるわけです。それが他社との違いといってよいでしょう。これは寺岡精工の強みですから、やれることはいっぱいあります。

−−寺岡精工がいろいろな提案ができるのはなぜですか。

自分で垣根をつくらなかった

われわれ自身が、ここまでは自社のフィールド、ここは違うフィールドという垣根をつくってこなかったということでしょう。
 たとえば、寺岡精工は「はかり」から出発して事業を拡大してきたわけですが、自分たち自身で「おれたちははかり屋だ」と思ってしまっていたら、そのフィールドの内側だけの事業で終わってしまい、現在の発展はありませんでした。

−−そういうモチベーションはどこからくるのでしょうか。

ものをつくっている人たちは、新しいものをつくることが好きなんですよ。技術者は、ほかの会社がつくっているものをなぞるのではなく、新しいことをやりたいわけですから。それが、強いモチベーションになります。

海外市場は無尽蔵

−−世界市場を見て、どこに力を注ぎますか。

海外市場は無尽蔵です。やったことよりも、まだまだやれていないことのほうが圧倒的に多いのですから。世界には日本の高度成長期に該当する国がたくさんあります。

−−そうするとアジアに力を注ぐことに。

いやいや、そんなことはありません。ヨーロッパでも寺岡精工の存在がまだ小さな、発展の余地が大きい国はいっぱいあります。
 全世界で伸びていきたいということです。

新しい市場をつくる

「匠の技術」は嫌い

国内では現在の市場は飽和状態ですから、新しい提案をして、新しい市場をつくっていかなくてはなりません。
 私は「匠の技術」という言葉は嫌いなのですよ。余人がまねができない優れた技術という意味のようですが、よく考えると全体的に考察するというのではなく、ある一部の局面しか考えていないことを示しているといえます。狭いセグメントのことだけを考えて全体を考えていないのです。
 また、匠の技術は日本の専売特許のようにいわれていますが、そんなことはありません。世界中に匠の技術はいっぱいあるし、匠の技術を持っている職人もいっぱいいます。ただ、日本の技術者はまじめですね。そこは優れた点だと思います。

ノントレーもエコ時代に合った提案

包装機も、最初にこの仕掛けを考えたのはイタリア人です。ノントレーの深絞り包装機も昔からあります。しかし、これを使い方を含めて新しい提案をしたのは寺岡精工です。
 使い方を工夫すれば同じ製品でも全然異なるマーケットで、違う販売方法ができることを私が提案したのです。
 これも「こんなのは絶対に売れない」という意見が多かったですね。しかし、日本では今、エコというものが重要な考え方になってきていますので、ノントレーは市場や消費者に受け入れられました。コスト削減にもなります。

ビジネスの新しい発想

つまり、枯れている技術でも少し見方を変えると、違う商品になりますし、新しい商売になるということです。
 新しい製品をつくるだけが新しい発想ではありません。新しい使い方を考える、新しい売り方を考えることも新しい発想です。

お支払セルフも新しい発想から

セルフレジも最初の提案はフルセルフ、つまりお客様が自分でスキャンして自分で支払いまでやるという方式でした。
 ただ、フルセルフ方式は、利便性はもちろんありますが、実際に導入してみるといろいろと不都合な面も出てきます。お店が扱う商品にはバーコードがついていないものもけっこうありますし、2〜3個でいくらという販売も多いですね。
 ならばキャッシャーさんがいるレジに、セルフレジの便利さ、有利さを取り込めないかという発想が出ました。手間がかかるところはキャッシャーさんが処理して、支払いだけをお客様にしていただくという、お支払セルフのPOSレジの始まりです。今から5年前になります。
 利便性を理解していただくのに5年間かかりましたが、おかげさまで、昨年からぐっと伸びてきました。

技術を需要に合わせて活用

クラウドなども、寺岡精工はASP(アプリケーションサービスプロバイダ)と呼ばれていた時代からやっています。その技術を、スマートフォンなども活用して、現在の需要に合わせて構築して、新しいさまざまな提案をしているわけです。

学研の図書『レジのひみつ』

−−学研の「まんがでよくわかるシリーズ」に『レジのひみつ』がありますね。

公立小学校の全部の図書室に

昨年、寺岡精工は80周年でした。その記念事業の1つとしてつくったのが、この『レジのひみつ』という本です。学研の「まんがでよくわかるシリーズ95」で、全国の公立小学校の図書室や公立図書館に置かれています。
 いまや日本人の生活に欠かせないレジのことがわかるだけではなく、寺岡精工のことがよくわかる本になっています。英語版もつくりました。
 子供が興味を持つ内容になっているので、子供の時代からレジを理解してもらうと、当社もさらにいろいろな展開が可能になりますね。
 当社の社名を入れた寺岡精工版もつくって、お客様にもお渡ししました。社員教育のよい教材にもなっています。

−−ありがとうございました。

学研の図書『レジのひみつ』〈学研まんがでよくわかるシリーズ95〉
『レジのひみつ』
 『レジのひみつ』は全ページをインターネットで閲覧できます。
URL:http://kids.gakken.co.jp/himitsu/095/book/index.html
【漫画】おがたたかはる
【構成】望月恭子
【シリーズ】学研まんがでよくわかるシリーズ95
【体裁】A5判、128ページ
【発行】学研パブリッシングコミュニケーションビジネス事業室
【刊行】2014年4月30日

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