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日本計量新報 2013年12月8日 (2991号)

速度取締器が必ずしも適正ではなく車載の速度計には誤差がある

滋賀県のある警察が交通取締りに使うスピードメーターが所期の値に対して6%上方にずれた状態で用いて、大勢の「違反者」をつくりだした。警察がそうした過ちになぜ気づいたかはっきりしないが、恐らく走行中に自動車のメーターが警察が示した速度より低かったから苦情や抗議がでたのであろう。マスコミに配布した警察の文書は紋切り型であり、取締器が6%速度を超過して測っていたということだけになっている。
 速度違反を取り締まるための速度計にはある程度の誤差が含まれている。その誤差は速度計の設置の仕方、その周囲の気温や湿度や風速などによって増幅する。ある条件で速度計の指示が時速1kmの差異しかなかったとしても、実際にその速度計が使われる状態では3kmほどの差異がでることがあり得る。こうした場合でも警察は取締器の速度計が指示したその値に寸分の狂いもないと決めている。交通取締りはこのような考え方でおこなわれているのだ。
 日本の市街地の道路には法定速度の指定標識がつけられている。道幅の狭い市街地の法定速度は時速30kmに指定されていることが多い。市街地の中でも民家がなく道路が交差しない場所なら時速60kmで走っても安全に支障はない。警察はこの場所で速度違反の取締りをするのである。人は速度標識を読んで運転するのではなく、道路条件から安全速度を割りだして走るので、速度違反者が続出する。警察は交通標識にしたがった速度で走れというのである。
 多くの場合は速度取締器の誤差、そして法定速度がその道路の全部の範囲に適正でないことも考慮して、2割ほどの超過速度には目こぼしをすることが多い。そうでないと国道20号線の東京都と神奈川県の県境の峠道を法定速度の時速30kmで走っていると、後続車が追い越しをして対向車と正面衝突する。善良な市民は違反を咎(とが)められ反則金を徴収されることを覚悟して時速40kmで走る。そうすることが総合的には安全だからである。飲酒運転が交通事故を引き起こすという論理は明快であるようにみえる。車が走ることが交通事故の原因であるという論理がここでは消えている。いずれにしても事故を起こした者への懲罰を過酷にしてある。自動車を含む交通システムが事故の発生がないようにといくつかの仕組みを導入しているのは、車が走るから事故が起こるということを知っているからである。
 道路の速度指定の適性度は十分ではなく、速度違反を取り締まる速度計には誤差があり、運転者のメーターが示す速度計が適正かどうかは判別しがたい。これらを総合すると道路交通の適正速度などについては、ほどよい加減で対応するのがよいことであろう。2013年の春ころに社会の事情に反した形式主義的な交通取締りを戒める大臣談話が出されて、NHKはこれを報道した。警察が用いる速度取締器は計量法の特定計量器に指定されていないので、計量法の規制の対象外の計量器である。

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