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日本計量新報 2017年6月11日 (3152号)

「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」計量計測機器産業のことだ

世の中の人々が就職口として選ぶのは名の知れた企業である。最終顧客が一般消費者である商売をしている企業に人気があつまる。親が知っていて、大学の教職者が知っていて、本人が知っていて利益が上がっている企業に就職したがる。ニトリという家具店に人気が集まるのであるが中央競馬会がかつては人気のトップになったことを本欄で話題にした。女子に人気なのは食品会社、菓子会社、旅行会社などであるのは自分たちの行動と生活感覚がそのまま現れたからだ。

子の職業は親と教員が決める。親も教員も世の中のことは知らない。教科の成績が良い順に人気の企業に振り分ける。5年ほどは会社はまずまずの業績で推移する。銀行などは2000人もの学卒を採用して全国の支店などに配置する。職を求める側は世の中の評判と学校のなかの職に対する雰囲気で人気企業に憧れる。職を得た人々は3年すると3分の1は離れる。調子よいことを言って人を集める企業の言葉にだまされたか、信ずべからざるものを信じたためか。10年もすると職場に残る者は3割ほどになってしまう。マンション販売会社の秘書室にいる人の証言である。緩和して3割と述べた。残るのはもっと少ない。

日本の世の中は悪くなった。大学生に1年以上の会社訪問とか就職説明会などで足止めをする。就職希望者と求人希望者の求めを擦り合わせるためなのか。マンション販売会社には10年もすると3割も人は残らない。それを見越して人を採用する。かつてのTBSブリタニカの販売はもっとひどかった。人の適性を見極めるのは難しい。大学生活を就職活動のための言葉と仕草を覚えることに費やす者がいる。企業は適性を判定する試験をするがその試験は果たして頼れるものだろうか。人は1年ほど働かせないと性格や適性は判別できない。普通にみえながら1年すると疾患があらわになる人がいる。学校の教科の成績が良くても卒業するとすぐに忘れてしまう者が多くいる。

大学の4年間は幼少期から人より先にものを覚える競争を経た疲労を緩和する猶予期間のようだ。授業にでていても遊んでいるのと同じだ。文科系の一般教科がそうであるし、理科系だって中学校レベルの内容も理解しないままに4年間を過ごすのがいる。中学校までの読み書き算盤を身に付けていれば数学の難しいのだって仕事の現場に立ってから覚えることができる。中堅私大の数学科の半数は落ちこぼれる。大学の教科学習は頼りにならない。

一流とされている大学の理科系の大学院の教科を修得することができればその分野の適性を大体ははかることができる。大学院修士課程の修了者は就職服を着て企業訪問をすることがない。一流とされる大学で学科の適正が確認された人々に限る。計測と分析機器関係では島津製作所の人気が高い。企業業績が寄与してのことだが田中耕一さんのノーベル化学賞の受賞が大きい。島津製作所という企業がイメージされやすい。

日本の社会はGDP6割ほどを個人消費が占め、一番大きな産業分野は商業などサービス産業である。計量計測機器産業が属する第2次産業は比率を低めている。第2次産業に含まれる計測機器産業ではあるが規模はゆるやかに拡張している。国内の消費財需要分野あるいは生産財の需要分野または第3次産業分野への需要拡大と輸出がある。計測機器企業が計測機器を生産し供給するだけではなく、タニタ食堂といったビジネスや「ほっともっと」のタニタ弁当やコンビニエンス・ストアで売られるタニタ味噌汁をつくって他分野で事業が拡大されることもある。

世の中に配置される仕事は、学校教育で教えられるほど単純ではない。学校教育を通じては知ることがない仕事はたくさんある。計測機器企業の工場をいくつもみて回ればそうしたことを知る。仕事は尊い。自分の置かれた場所で、目の前のことを精一杯やっていく、それがそのまま周りを照らすことになる。「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」と最澄が説いた。彼が著した『山家学生式』にこの言葉が載っている。計測機器企業と計量計測機器産業と計量計測の業務に従事する人にはこの言葉が重なる。

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