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日本計量新報 2017年6月18日 (3153号)

計量のブロック会議は世界に例のない素晴らしい文化だ

夏の旅行は楽しい。季節の好きずきは人による。冬が寒く夏は蒸し暑い日本の国である。松尾芭蕉は『おくのほそ道』を夏に歩くように計画した。春も深まったころに千住を発って途中、那珂川が流れる烏山で逗留して門人たちと句会をした。尾花沢では<RUBY CHAR="紅花","べにばな">で財をなした俳人の接待を受けた。お伊勢参りは富士講などと同じように庶民にとって楽しい旅であった。芭蕉の場合にはどうであったか。体力が落ちた老齢の身にはきつい旅であったが体力の限りを尽くして歩いて自然と一体となることで蕉風の確立に役だった。芭蕉の名句を引こう。

〇閑さや岩にしみ入る蝉の声(山形県の立石寺)

〇夏草や兵どもが夢の跡(岩手県平泉町)

〇荒海や佐渡によこたふ天の河(新潟県出雲崎町)

 立石寺と平泉は芭蕉の句によって観光名所になった。芭蕉によってもたらされた観光収入のことを考えると芭蕉は旅したところにお金を残した。立石寺と平泉は東北北海道の計量協会連絡協議会に付設する見学会で訪れた。旧計量研究所の所長と計量教習生であった現役の計量検定所長や計量検査所長ほかの人々が汗をかきかき立石寺の石段を登る姿は微笑ましいものであった。東北北海道のこの会議は秋におこなわれるようになったが青森市のねぶた祭りでも同じことがあり、あるときにはねぶた祭りの運行委員長を青森県計量検定所長であった佐々木吉郎氏がつとめていた。

 富山県主催の中部地域の計量のブロック会議では視察地が立山であり、立山の室堂で視察を抜け出して剣岳の登山に飛んでいく強者がいた。中部ブロックの会議では観光の行事がなくなった(今年は施設見学会が設定されており、MRJミュージアムを見学する)。併催でゴルフがおこなわれることもあるが、本紙ではこの会議の翌日に有志の参加による計量管理座談会を企画するようになった。会議が開かれる場所へ行って帰るだけでも行楽であると述べると顔をしかめる人がいるかもしれないがこのへんのところは寛容でありたい。

 計量協会のブロック会議で何度も議論されていた電気式ハカリの検定の中抜け問題はその後の法令改訂で解消された。動いている状態で計量する自動ハカリの検定対象機種への追加の法令が間もなく成立する。物事が動かないようにみえても道理のある議論をして求めていれば道が開ける。直ぐにできないものに対してくどくどしいと思ってはならない。執念があってこそ形になる。関東ブロックにおける自動ハカリの検定対象機種への追加の意気込みに学ぶべきだ。つまらない議論だと馬鹿にできない。議論とはそのようなものだ。

 ブロック会議は議題が少なくなっている。さみしいことだが現状はそうだ。地域ブロックの計量の関係者が一堂に会することには意義がある。昔同じ仕事をしていた人や同業の人々が年に一度あって酒を酌み交わし旧交をあたためる。よいことではないか。メーカー主催の販売代理店会議としておこなわれている。これはこれでよいことだ。計量協会などのブロック会議は計量の普及宣伝活動や計量管理技術の交換ということで多方面の人々が集まる素晴らしい場である。

 日本の計量行政と計量の普及活動に関係するブロック会議は世界を見回すと類例がない。そのような文化が継続されている。工夫によって今後とも衰退することのないことを期待する。行政機関、地方の計量関係団体の職員、会の役員と会員などが、計量行政の目的である適正な計量の実施の確保と計量の普及と啓発という崇高な目的のために都府県の垣根をこえて会していることは賞賛される。

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