田中健一(計量標準センター長)
(日本計量新報98年6月14日号)
一九九八年三月十六日、新しく建設された計量標準センター(工業技術院知的基盤課に所属する)の開所式が行われた。工業技術院標準部知的基盤課が主催する国際計量研究連絡委員会の開催に合わせて、この委員会委員や工業技術院内関係者の方々の列席を得て行われた。
施設の概要
計量標準センターは、つくば市の工業技術院筑波研究センターB地区の敷地内の南東に位置し、地下一階、地上二階、延べ床面積二九七四
の施設である。この施設において、計量標準の研究所である、計量研究所、電子技術総合研究所、物質工学工業技術研究所の三つの研究所で行われていた計量標準の研究や標準供給の一部分が今後この計量標準センターにおいて行われることとなる。
計量標準センターの体制
計量標準センターには、長さ標準、温度標準(抵抗 温度)、温度標準(放射温度)、質量標準、高周波減衰 量標準、測光放射標準、真空標準、無機標準物質、標 準ガス、分子量標準物質、表面分析標準物質の実験室 がある。これらの実験室に、各研究所から機器を移設し、これらを利用して各研究所の研究者や技術者がそ れぞれの研究所の仕事として研究や供給を行う。各実験室は、それぞれの標準の校正に必要な、恒温、クリーン、除振、暗室等の条件が整えられている。
計量標準センターの役割
近年の、国際貿易の増大と認証制度の発達と呼応して、測定の確実性が必須の要件とされ、測定のトレーサビリティが求められるようになった。トレーサビリティとは、「不確かさがすべて表記された、切れ目のない比較の連鎖を通じて、通常は国家標準又は国際標準である決められた標準に関連づけられ得る測定結果または標準の値の性質」であり、国家計量標準の供給、すなわち国家標準による標準器の校正や標準物質の値付けが必須の条件となる。しかし、わが国の計量標準の研究所における校正体制は未だ十分ではなく、施設の面においても整っていない。このような状況に対応する施設の一つとして、計量標準センターが建設されたものである。
計量法トレーサビリティ制度(JCSS)では、計量標準センターで校正された標準(校正依頼受付等の事務は従来の通り各研究所で行われる)は認定事業者が校正する際の標準となり、認定事業者による校正サービスによって一般の標準器が校正され、時にはさらに数段の校正や検査を経て現場の計測器へ標準の値が伝達される。
一方、校正証明書の国際的な相互承認においては、校正事業者が行う校正の信頼性が問われる。そこでこの信頼を付与するものとして認定制度があり、計量法トレーサビリティ制度においてもこの認定制度により認定された事業者が生まれている。この認定の実務は製品評価技術センターで行われており、当計量標準センターとは関係しない。
標準の供給
国家計量標準は、左図の研究所によって標準の実現のための研究が行われた後に、国家標準として設定されている。
また、産業の高度化に合わせてさらに確かな標準や校正技術の研究が継続的に行われている。
実現された標準と校正方法は、その不確かさが丹念に評価され、どの程度の不確かさで校正ができるかが明らかにされる。
このような過程を経てはじめて標準の供給すなわち校正サービスが実施されることになる。 校正には高度の技術が要求されるため、熟練した技術者の確保も重要である。
所在地 〒305-0045
茨城県つくば市梅園1-1-4
電話 0298-54-4351
FAX 0298-54-4359