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日本計量新報 2007年5月20日 (2675号)

事実ではあるけれど真の事実でない事実を事実としてしまうことの不幸

インフルエンザ関連の薬のタミフル服用にともなう幻覚から発生する異常行動の結果、高層住宅から飛び降りて死亡する事故をめぐって政府機関の厚生労働省は、大臣が「原因はタミフルにあるのかインフルエンザそのものにあるのか不明である」と述べてタミフルの継続使用を決めて、その後原因がタミフルにあることがわかってタミフルの使用に制限を用いた。異常行動インフルエンザ説を白々しくも述べた厚生労働大臣の知恵のなさは今更のことである一方で、大臣にこれを語らせた厚生労働省の職員たちの嘘つき体質と事実を確認する怠慢さがどうしようもないというよりも、政府や国や役所は国民に嘘をつくものであることを見せてしまった。
 役所は嘘をつく以前に公表し公開しなければならない事実を隠蔽することを常としている。国民や市民や住民のためのサービス業務を行うパブリック・サーバントの機能の前に審判や調整機能を先に考えて、役所に不都合な事柄は隠してしまう体質がこびりついている。馬鹿な民間人は役所の秘匿情報をこっそり入手するための役人に媚びる行動にでる。役所と関連団体の間では本来は一般に公表し公開しなければならない情報をこの二者の間でだけやり取りして妙な関係を継続しており、こうした民間の団体が公務員の退職後の勤務先になることが多い。地方公務員も情報の開示に関する姿勢は国と似たような様子であり公平性ということに関して疑義の多いことである。
 国が事実を知らないこと、国が事実を国民に知らせないで隠すことによって日本人は大きな痛手を被った。先の戦争がそれである。国に勤務する公務員は生意気にも「ネグろうか」などと隠語を用いて、採用し公表する事実と隠してすます事実とを分ける。さまざまな事実があるなかである用事を処理しようとする担当者に都合の良い事実だけを事実として決めて、不都合な事実は事実として採用されないので社会には不都合が生じてしまう。タミフル服用と異常行動の関係では厚生労働省の委員会は、タミフルを供給する会社に不都合な事実はネグってしまい、都合の良い事実だけを事実として採用した。委員であった大学教員は「ケチな考えはしていない」と大見得を切ってケチな野郎であることを国民に晒していたのは笑い物である。
 国と地方などの公共機関が物事を推進するときに取り巻きのような団体を通じて事実という情報を集めるのは良いけれど、実際には団体からの聞き取りや報告だけを事実としてしまうことがほとんどである。団体は一見すると総合とか代表に見えることが多いけれどもそこには有力者たちの偏った意見に基づく事実であることが少なくない。団体は私たちは関係業者の一部でしかありませんとは言わないし、一方役所の方も他の多くの関係者の意見から発生する事実を知ろうとすると労力が重なるのでこれをしない。社会の実際に不適合な政策や法令などできあがるのはこのようなことによる。


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