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日本計量新報 2008年10月26日 (2746号)

計量計測機器産業は日本が世界に誇る産業である

日本国の人口はどうあればよいのか。人口が増えなければ経済が発展しないから国民が困ることになるのか。人口の増加が経済の発展の根源であると想定することは間違いではないのか。人口が多いのに国の経済の規模が日本より少ない国は数多くある。
 2007年推計世界人口は66億7千万人であり、世界人口のトップ10は1位中国13・16億人、2位インド11・03億人 、3位アメリカ2・98億人、4位インドネシア2・23億人、5位ブラジル1・86億人、6位パキスタン1・58億人、7位ロシア1・43億人、8位バングラディッシュ1・42億人、9位ナイジェリア1・32億人、10位日本1・28億人。
 国民総生産GDPランキングは1位アメリカ11兆7343億ドル、2位日本4兆6694億ドル、3位ドイツ2兆7510億ドル、4位イギリス2兆1320億ドル、5位フランス2兆0466億ドル、6位中国1兆9316億ドル、7位イタリア1兆6777億ドル、8位スペイン1兆0404億ドル、9位カナダ9916億ドル、10位インド6853億ドル(ドイツの人口は8・3千万人で14位、イギリスの人口は21位で5・9千万人、フランスの人口は20位で6・0千万人、イタリアは22位で5・8千万人、スペインは29位で4・4千万人、カナダは36位で3・2千万人)。
 国民の豊かさ指数(人間開発指数)というのがあり、2003年国連開発計画(UNDP)調べのランキングは1位ノルウェー、2位アイスランド、3位オーストラリア、4位ルクセンブルク、5位カナダ、6位スウェーデン、7位スイス、8位アイルランド、9位ベルギー、10位米国、11位日本。
 人間開発指数とは、一人当たりのGDP、平均寿命、就学率を基本要素として、独自の算式に基づき指数化したもので、各国の豊かさを測る指標。1992年にリオデジャネイロで開催された国連環境会議をはじめ、1994年のカイロでの国際人口開発会議および1995年のコペンハーゲンでの社会開発サミット等 を通じて、人間開発という概念は国際的にも幅広く受け入れられ、今や定着した概念となりつつある。
 イギリスの経済学者ロバート・マルサスは、「人間が生きていくためのに必要な食料や衣料などの生活物資の生産量が人口を決める」と1798年に『人口の原理に関する一論』で述べている。世界人口の66億7千万人は世界の食糧生産量を示す指標であるといえる。諸工業は農業機械や肥料生産を発達させていてアメリカは世界最大の食料輸出国である。
 しかしその生産方式は食物を機械と化学肥料で育てるというものであるから、その背後には化石燃料の消費がある。もちろん水と太陽光という恵みがあるわけだが、インドや中国では水が極端に不足するという事態が発生している。
 日本の人口の歴史的推移をみると、縄文時代は10万人前後であり30万人を超えることはなかった。弥生時代は大きく見積もっても60万人である。奈良時代は450万人、平安時代は末期で680万人、鎌倉時代は600万人。室町時代1、000万人、豊臣時代1、200万人、江戸時代の1721(享保6)年は3、100万人、1792(寛政4)年3、000万人、1828(文政11)年3、200万人。明治時代は1873(明治6)年が3、330万人、1900(明治33)年4、654万人、1920(大正9)年5、596万人、1950(昭和25)年8、411万人、1975(昭和50)年1億1193万人、2004(平成16)年1億2778万人。住民基本台帳に基づく2006(平成18)年3月末の時点では、日本の人口は1億2705万5025人であった。日本の人口は減少に転じている。
 人口は食糧生産に依拠している一方で近代産業社会のもとでは工業生産に依拠する。
県別人口減少率(2005年住民基本台帳)によると人口減少の著しい県は、1位 秋田▲0・80%(116万人)、2位青森▲0・73%(147万人)、3位島根▲0・67%(75万人)、4位岩手▲0・60%(140万人)、5位高知▲0・60%(80万人)。
 日本では、少子高齢化が叫ばれるなか実際に人口が減りだしている。人口減少と少子高齢化は社会や企業活動に影響を与え、業種によっては存亡にかかわる。推計によると50年後の2055年には8、993万人、100年後の2105年には4、459万人となって現在の3分の1ほどになる。
 人口の多い少ないは経済の反映やその国の人々の豊かさとは直接的な関係はない。人口減少で影響するのは年金と保険である。保険では65歳以上の医療保障が半分になるという通知を大手のがん保険会社が通知した。年金は将来の就労人口をもとにして組み立てているためにこれが壊れる。国の年金制度は仕組みを変えないと存続できない。
 人口が減ると国の行政機関も縮小を余儀なくされるから、人口維持の推進を図ろうとするのは行政機関であり、そうした機関から発せられる口車に政治家と政治がのせられているようにみえる。役人が行う未来予測の多くは外れる。予測のための前提条件に変化が起きるからである。しかし人口予測の場合は、第二次世界大戦後の復興日本における人口予測は的中した。
 人口予測はヨーロッパの実例があるので予測が大きく外れることがなさそうだ。日本の50年後、2055年の8、993万人は適正人口であるようにも思われる。これに見合った社会の仕組みをつくることになるであろう。
        ◇
 計量計測機器産業は知的産業に属する。計量計測機器を製造・販売する事業、計測の確かさを実現するための公正サービス事業、計測の安全を監視するための業務は社会にどのような場合でも必要な業務であるから、社会と産業の求めに対応した計量計測の仕組みができあがることになる。
 社会基盤(社会基盤のなかの知的基盤という言い方をしている人々もいる)としての計量制度の確立と運営は、産業と文化の発展の礎(いしずえ)である。計量計測機器産業は発展の仕方によっては日本が世界に誇る産業になる。
 かつてのイギリスやスイスの計測産業を日本が受け継いでおり、現在でも日本の計量計測機器産業は世界に冠たる産業である。いまの計量計測機器産業は技術・知識・理論などあらゆる面で革新と改革を推し進める立場にある。
 この程度の現状に満足することなく世界に大きく打って出ることによって、知的産業としての計量計測機器産業の未来が拓かれる。先進企業は世界を股にかけてビジネスを展開しており、それでこそ稼ぎもあがる。
 日本のGDPは小さくはないが、大きな市場が海外に広がっているのだから、小さな島国日本に閉じこもっていてはならない。


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