What's New計量新報記事計量計測データバンクOther Data会社概要出版図書案内リンク
2009年1月  1日(2755号)  11日(2756号)  18日(2757号)  25日(2758号) 
社説TOP

日本計量新報 2009年1月18日 (2757号)

新しいことを知る仕組みをつくることが計測機器の開発である

上り調子で発展してきた自動車産業が前年同期比3割減の状況にある。人と物を運ぶ自動車は。通常お金を借りて買うような仕組みになっているが、お金を貸すための信用が失墜したことなどによって3割減の状況になった。自動車産業やオートバイ産業はカメラ産業と同じように現在に至るまでに国内外で幾多の企業の勃興と盛衰があった。何らかの要素があって生き残り覇者となった自動車会社が市場の3割縮小という異常事態に直面していて米国のGM、クライスラー、フォードのビッグスリーの息が止まる寸前である。日本の自動車企業には蓄えがあるから米国のビッグスリーに比べると持ちこたえられる能力はある。
 自動車をめぐる状況がこれまでと大きく違っているのは、排気ガスが汚くて公害をまき散らすとか、石油がなくなりそうだという危機感ではない。石油を燃やす内燃機関は炭酸ガスを出すから地球温暖化につながるので駄目だという意識が人々の間に高まっていることである。この意識は地球終末論に近いカルト的な要素を帯びていて救いがたい状況にあるから大きな図体の大きなエンジンの車が否定されてしまう。車はそれをつくる企業と国々の事情を反映する文化でもある。とにかく大きいという印象の米国ビッグスリーの乗用車は状況が元に戻ってもこれまでのようには売れないことになる。日本のホンダはハイブリットカーを前面に押しだしてスモールカーを売っていく方向を示しているし、トヨタのハイブリッドカーは絶好調の売れ行きである。軽自動車メーカーは流れがこちらにきたと思っている。スバルは電気自動車を追いかけている。電気自動車が普及するためには社会設備の対応と連動することが必要であるから、この先はハイブリッドカーの生産が顕著な伸びを見せることになる。水素を燃やして電気をつくって走る燃料電池車の本格的な実用化には年月の目途がつかない。不確定要素をいくつも抱えながら前に進む自動車産業は、日本経済あるいは国際経済とともに苦境にあり、これを乗り越えなくてはならない。
 日本の人口は少子化対策という新しい福祉政策を推進してもわずかに人口減少の速度をおしとどめる程度にしか作用しない。
 厚生労働省の統計などではこの先には七千万人程度で落ち着くという観測がある。今でこそ、一億三千万人にも膨れ上がっているが、江戸時代末の人口が三千万人か四千万人であったことを考えれば、七千万人という数字は適正といえるかもしれない。人口減少がこのままのペースで続けば、日本の人口はゼロになるが、もちろんこれは馬鹿げている。物事はときによっては馬鹿げたことをまねくのである。炭酸ガスを出すから自動車は駄目だという考えは原理主義の臭いが強いけれど人はこの原理主義に集団で陥っていて、石油を燃やして走る自動車は駄目だと決めてしまった。人の数は減る、自動車は駄目だという状況は新しい交通の仕組みを生みだすことになる。内燃機関の自動車が減って電気自動車が増えることは間違いない。ハイブリッドカーはこの両方を持ち合わせている車だ。
 日本のGDPの6割をサービス産業が占めているとはいっても自動車産業ほかの製造業には意味がないということではない。計量と計測とその産業は製造業にもサービス業にも、その他のすべての産業にも結びついている。物でも財でもサービスでも、計量とのかかわりを抜きにしては存在し得ない。自動車は計測センサーと計測装置のかたまりの様相を呈するようになっている。農業生産は気象観測との深い結びつき抜きにはあり得ない。ホテルや家屋の快適性は、計測と制御によって実現する。人の健康や利用と計測のかかわりは重要であり、医療・診療と治療の分野は計測と計測器によって機能しているのが実態である。
 計測はさまざまなことを知り、制御するために使われる。したがって新しいことを知る仕組みをつくることが計測機器の開発である。


記事目次本文一覧
HOME
Copyright (C)2006 株式会社日本計量新報社. All rights reserved.