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日本計量新報 2012年11月11日 (2941号)

素直になれと説く松下幸之助と山本五十六の語録

人はそれぞれに自分好みの世界をつくりあげるようである。
 総理大臣をした細川護熙(ほそかわもりひろ)氏は議論しても相手の考えは変わらないと述べているが、護熙氏の父親護貞(もりさだ)氏は護熙氏の首相就任時に「あれの性格では、いずれ投げてしまいます」という趣旨のことを述べたがそのとおりになったとはいえ、肥後熊本藩主だった肥後細川家の第18代当主の細川護煕氏の意識の状況は人のひとつの見本である。人の様子を観察していると同じものをみて同じことをしていてもその人の意識に反映する実像は異なることがわかる。
 人は目に見えるものを全部頭に入れるかというとそうではないようである。アメリカに視察に出かけてオートドアを見て日本に帰ってそれを真似てオートドアの事業を興す人がいるその一方で、すべてを物見遊山の出来事として思い出に残して満足する人もいるのである。このことは計量関係の人々のアメリカ視察で出現した事実である。人の意識は自分勝手であり、自分が見たいものしか見ておらず、見たくないものは見ていないと養老猛氏は指摘する。老齢になって脳の機能が劣化すると人の話の重要な部分は耳に入っていても脳に反映させず、したがって意識にも登らせないために、その部分を欠落させなかったこととして、相手を非難し誹謗中傷するという事例を散見する。こうした被害を身近な存在の人から受けると逃げ場がない。縁遠い相手で生活や事業に関係して無視できるのであれば混乱はほとんどおきない。
 松下幸之助さんは人の性質をよく理解していて、人は素直になることが大事だと説く。そのように説かれても多くの人は、好きなことしか見聞きしないし、好きなことしかしない。そのような目で周囲の人や周囲の組織を観察すると結局はそのようなことだと理解できるはずである。日本の社会と日本の人々というのはある種の共通の物の見方、物の考え方、感情の持ち方をしていて、このまとまりが良いということが言えそうである。だから8人掛けの電車の座席に7人掛けで少しの隙間が空いていて、そこに腰を掛ける気配をして人が身動きするとひとつ分の座席ができるように身体をずらすのである。不思議な光景だが意識の共通性がなせる業ということができる。その意識の共通性は同じ日本に日本人が居ることは当たり前だからエレベーターに日本人が乗り込んでくるのは当たり前であり、それに対していちいちあいさつをするにおよばないということになる。外国人は私はあなたの敵ではないよ、とばかりに笑顔をつくってあいさつをするのが普通である。
 噛んで含めるように話しても、論理を尽くして諄々と諭しても、馬耳東風というのは人それぞれが身勝手な世界観をつくり、同じ言葉で会話しても別の言葉として聞いているからである。こんなことでは組織のまとまりができないではないか、と組織の統率者は意気消沈してしまうことになる。そこで挫けてはならない。人の意識を変え、人を望ましく行動させる方法を山本五十六氏が次のように語ったとされている。「やって見せて、言って聞かせて、やらせて見て、ほめてやらねば人は動かず。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」

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