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日本計量新報 2012年2月19日 (2905号)

豪雪被害は想定外ではない

地球温暖化が世界的な問題となる中、2012年の日本は豪雪による被害が心配される。2月1日午後6時20分頃、ガンや難病に効能があると評判の高い秋田県仙北市玉川温泉で、温泉宿「玉川温泉」の岩盤浴場に雪崩が押しよせて3名の死者がでた。日本各地で数十年ぶりとされる積雪が記録され、被害が報告されている。
 歴史を振り返ると、日本は周期的に大雪に襲われていることがわかる。気象庁が初めて命名した豪雪は、三八(さんぱち)豪雪である。1963年(昭和38)年1月から2月にかけて、主に新潟県から京都府北部の日本海側を襲った記録的豪雪で、折に触れて語り継がれる。
当時、滋賀県の湖北地方は雪に埋まって大変な難儀となり、県と議会を挙げてこの対策に取り組んだことを(社)滋賀県計量協会の新年会に来賓として出席した県議会議長が語っていた。
 また2011(平成23)年度秋の叙勲に際して旭日雙光章を受章した高森博氏の祝賀会のしおりに、ただ一つ載せられた写真入りの事業の思い出に「創業から15年目の冬、4メートルを超える積雪を記録した三八豪雪に挑む」と記されている。
 
 何が豪雪をもたらすのか。直接的な原因となるのは日本列島に襲来する寒波である。
 1963(昭和38)年1月から2月は偏西風蛇行が異常に大きくなり、アメリカ・ヨーロッパ・東アジアの3方面で極の寒気が大きくの南下した。ヨーロッパでは1月の月平均気温が平年より10℃も下がった所もあり、数万年に一度の低温で氷河期の気温と同じ状態であった。台湾でも5℃前後下がるほどの極端な寒冬となった。一方、暖気の北上域に入ったアラスカではラニーニャ現象によって1月平均気温が14℃も上昇している。1963(昭和38)年1月豪雪は、こうした世界規模の異常気象の結果、発生した。
 近年は、豪雪を地球温暖化と結びつけようとする人も多い。人が増え、モノを造るために石油を燃やせば、温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量は増える。火山活動が活発化すれば、二酸化炭素ほかの発生量は、予測できないほどに増えるはずだ。地球と太陽活動の関係によっても、地球大気の温度は変化する。
 元首相の鳩山由紀夫氏は二酸化炭素削減を鳩山イニシアブとして国連会議の場でうたう政治的パフォーマンスをした。今となっては環境対策を政治的に利用することになる醜い姿であった。
 

異常気象の原因となる地球規模の問題を解決することは、重要な課題である。
 しかし、豪雪にみまわれ被害を最小限にしようと戦う現場で、より切実に必要なのは、すぐに受けることができる直接的な支援である。記録的な豪雪は、過疎・高齢化に悩む集落を直撃している。全国の警察や消防、自治体からの支援や派遣を、恒常的な仕組みとして構築できないか。財政支援、人員の確保や調整など、リーダーシップをとるべきは政府である。
 繰り返される雪の被害を「想定外」で済ませてはならない。

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