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日本計量新報 2016年12月4日 (3129号)

新規に検定対象とする自動ハカリは製造者自己検定制度で対応する(1

計量法令はハカリ分野においてこれまでは検定対象になっていなかった自動ハカリを検定対象にする内容で改正される。停まった状態で計量するか、動いている状態で計量するかで非自動ハカリと自動ハカリが分類され、これまでは停まった状態で計量する非自動ハカリを計量法令が直接に関与して、検定と定期検査の対象にしていた。自動ハカリの検定と定期検査対象としての制度の運営実施はおおよそ5年後を想定している。答申の内容のうち政省令の改正が求められるものは2017(平成29)年4月の公布予定で作業を進める。

今回の計量法令の改正によって自動ハカリも非自動ハカリと同様の扱いになり、検定と定期検査の実施対象になる。ここで留意したいのは計量法が直接に規制する計量器は取引または証明にかかる計量分野であることである。検定と定期検査の対象となる特定計量器に指定されている非自動ハカリであっても「取引または証明」の用途でない分野では検定も定期検査もそれを受検する義務は課されない。自動ハカリの特定計量器への指定は取引または証明分野での使用が今後とも増えるためである。

新たに検定と定期検査の対象になる自動ハカリの場合にも検定と定期検査の受検義務は取引または証明にかかる分野で使用される場合である、そうでない分野での使用では検定と定期検査の受検義務はない。計量法に強制法規として義務を課して立ち入るのはほとんどどの計量器において原則として「取引または証明」にかかる使用分野である。

法令改正によって検定と定期検査の対象となる自動ハカリは「取引または証明に使用する分野のもの」に限られる。そのうえでさらに対象は狭まる。その範囲はホッパースケール、充填用自動はかり、自動捕捉式はかり、コンベヤスケールの4種類に限られる。4種類に限定されたのは国際法定計量機関(OIML)勧告等を踏まえた技術基準が整備されていることと連動する。自動ハカリの概念にくみする走行中の車両重量を計るトラックスケールは現状では対象から外れる。これはOIML勧告に技術基準がないためである。

自動ハカリが特定計量器に新たに指定されて計量法による検定と定期検査の対象となることが決定したが、法の実施は検定と定期検査の実施体制が整うころを見計らってなされることになり、その実施時期はおおよそ5年後となる。

計量法ではメーカー自己検定制度である指定製造事業者制度を組み込んでおり、電気、ガス、水道、ガソリン計量器、ハカリ、体温計、血圧計など大量生産方式の特定計量器は製造企業が指定製造事業者の指定を受けて、自己検定によって対処している。今回の自動ハカリの検定と定期検査の対象につながる特定計量器としての指定によって、どの製造企業のどのような製品が対象になるか必ずしも明瞭ではないが、想定されているのは製造企業が指定製造事業者になってメーカー自己検定をすることである。指定製造事業者の指定の技術要件ほかが厳しい場合には小規模企業では指定を受けることが難しいかも知れない。このような想定されない状況の出現に対して的確で柔軟な対応が望まれる。

自動ハカリの検定対象への追加に際して地方公共団体による自動ハカリの検定は実施しないことが前提になっている。ハカリについては取引または証明分野の使用においては検定と定期検査が法によって義務にされている。定期検査はハカリ(これまでは非自動ハカリ)、分銅、おもり、皮革面積計に限って課された義務であり、2年に1度の周期でこれを受けて器差検査などの基準を満たさなくてはならない。定期検査の器差の合格条件は検定公差の2倍である。

計量法には指定検定機関制度が一部の器種で運営されている。自動ハカリの検定あるいは使用中のハカリの修理後の再検定に関して法整備の面で考慮する方針である。修理検定では「指定検定機関に参入することとなる民間事業者が、従来のメンテナンスと連携して実施することなど、合理的な運用を整備することを検討」する。修理後の検定が迅速に実施されることで使用不可の期間の短縮を図ろうとしている。指定検定機関に修理事業者を認める場合、信頼性を確保するために、「検定の実施者は、修理部門とは独立した者とする」ことなどを要件にする考えである。

今回の法改正では「器差検定のみをする指定検定機関」という表現が登場している。この対象は主に質量計のうちここで扱ってきた自動ハカリの4種類のことと思われる。器差のみ指定検定機関に参入する民間事業者は、指定要件を満たした製造事業者や修理事業者を想定している。器差のみ検定とは構造検査ほかのことが省かれ、器差を検査する行為に限定(表記事項の確認などは実施)される。(次号以下につづく)

 

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