安全な輸送環境を実現する計量計測機器
トラックによる貨物輸送は、全貨物量の9割を分担するまでになっており、日常生活はもとより産業経済の発展に欠くことの出来ない重要な役割を果たしている。その一方で、トラック業界を取り巻く経営環境は、原油価格の高騰、安全対策や環境対策への対応等のコストアップの他、過当競争による運賃の低迷などにより厳しい状態となっており、悪環境の中で過積載等による違法運行が横行しているのが現状である。過積載運行は自動車の安全性を低下させ、重大事故を発生させる可能性が高く、道路の損傷や輸送秩序を乱す要因ともなっている。過積載防止対策を盛り込んだ改正道路交通法が施行されたことにより、悪質な過積載運行は減少してきているが、未だ過積載運行が後を絶たない。そのため運輸業関係者は、過積載予防体制の一つとして、各種はかりや装置を導入している。
過積載の取締強化
過積載の危険性
トラックによる過積載運行は、制動距離の伸長、ハンドルの操作性悪化など、重大事故誘発の原因にもなりかねない。
また、路面に過大な荷重を加えるので、舗装や橋梁の傷みを早め、耐用年数を短縮させてしまう。
さらに、エンジンや車体に過大な負担をかけることから、騒音、振動、排気ガスを増大させ、沿道の環境悪化にもつながる。
運行管理者資格者証の返納命令発令基準などを強化
過積載や長時間労働による事故、飲酒運転などが社会問題となる中、関係機関などは、輸送の安全性を向上させるために、事業者や運行管理者に対し事故防止への対策を強めている。
国土交通省は、2007年7月から、自動車運送事業における運行管理者資格者証の返納命令発令基準などを強化した。
自動車運送事業者は、営業所ごとに車両数に応じて国家資格を有する運行管理者を選任することが義務づけられているが、運転者が過労運転、酒気帯び運転、速度違反、過積載運行などを引き起こし、運行管理者がこれらの行為を指示または容認していた場合、ただちに返納命令を発令する。
処分歴等検索サイト開設
また、国土交通省は、運輸・建設などの事業者に関する処分歴などを検索するサイト(ネガティブ情報の公開)を昨年末から開始した(http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03punishment/index.html)。事業者名や、行政処分の種類や違反点数から検索し、2006年10月以降の処分歴を見ることができる。同省は、事業者に対し国民の「監視の目」をつくることで、適正な事業運営を促し、安全の確保につなげたいとしている。
今年の4月2日には、青森県で13事業者が過積載運行で一斉に処分を受けている。青森県公安委員会から過積載があった旨の通知を受け、国土交通省が07年12月14日に実施した呼出監査で、過積載運行が判明した。
過積載に対する処分
過積載運行は道路交通法で罰せられることとなっているが、貨物自動車運送事業法においても過積載運行の禁止規定を設け、過積載運行を行った事業者に対しては、同法の規定により自動車の使用停止等を命じるなど厳しい行政処分を課している(表1〜2)。
また、過積載を防止するためには、事業者のみならず、荷主に対しても啓発活動等を積極的に推進する必要がある。荷主が運転者に対して過積載運行を要求することは道路交通法で禁止されている。違反行為を反復する恐れがある場合は、その荷主に対して「警察署長の過積載再発防止命令」が発せられ、これに従わなかった場合は罰金が科せられる。また、貨物自動車運動事業法でも、過積載運行を余儀なくさせた荷主に対して国土交通大臣が勧告できることになっている。
計って過積載防止
過積載防止の決め手は、まず絶対に過積載を許さないという姿勢を社会全体で徹底することである。いかに罰則が強化されても、荷主や運行事業者の意識が変わらないことには過積載防止の成果をあげることは難しい。
運輸業関係者は過積載防止のための具体策として、はかりを購入して対応している。トラックスケールや軸重計、輪重計等のはかりで計量し、積み荷の質量がオーバーしないようコントロールするのである。
積み荷の計り方
積み荷の総質量(めかた)を計るには様々な方法がある。
(1)積む前に個々の積み荷の質量を計っておき、規定量におさめる方法、(2)積みながら質量(目方)を計る方法、(3)適当に積んでからオーバーしていないか計ってみる方法など。
はかりの各メーカーはこれらの方法に対応した各種はかりをラインアップし、運輸関係業者に対して積極的に働きかけている。
ETC対応の軸重計も登場
高速道路の料金所入口には、古くから軸重計が設置され、軸重違反者には警告書が発行されてきた。以前は料金所で全ての車輌が一時停止していたため、精度プラスマイナス1tに対する速度は20km/h以下だったが、ETCの普及により、40km/hまでの対応が求められるようになった。
また、一般道においても、60km/hでプラスマイナス30〜20%の精度の軸重計が要求されつつある。
大和製衡(株)は、こうした要求を踏まえたウエイトバーセンサー型軸重計を商品化している。
はかりメーカーの対応次第
過積載防止に関連する運輸業関係者の関心は非常に高いが、関係のはかりと計量に対する知識は十分ではない。はかりメーカーの適切な対応が、社会悪であり犯罪でもある過積載を防止する。 【表1】
違反回数 |
処分 |
初違反 |
車両停止処分 |
再違反 |
5割未満を3年間で4回行った場合 |
運輸支局等の指導、定期報告 |
5割以上で10割未満を3年間で4回行った場合 |
事業の停止処分 |
10割超を3年間で4回行った場合 |
事業の許可の取消処分 |
【表2】
違反点数の累積機関 |
原則3年間 |
違反事業者名の公表 |
累積違反点数が20点超となった場合 |
事業の停止処分 |
(1) 1回の行政処分で270日車以上を受けた営業所(ただし、運輸局内の累積違反点数が30点超の場合は180車以上)
(2) 運輸局内の累積違反点数が50点超となった場合、当該運輸局内の全営業所 |
事業の許可取消処分 |
(1) (地域に関係なく)2年間に事業停止処分を4回受けた場合
(2) 運輸局内の累積違反点数が80点超となった場合 |
【表3】
事業者への罰則 |
「過積載関係」行政処分等の基準(貨物自動車運送事業法) |
違反行為 |
処分等の基準(車輌の使用停止) |
過積載等による運送の引き受け |
初回 |
2回目 |
3回目 |
4回目 |
過積載の程度が5割未満のもの |
10日×違反車両数 |
30日×違反車両数 |
80日×違反車両数 |
200日×違反車両数 |
過積載の程度が5割以上10割未満のもの |
20日×違反車両数 |
50日×違反車両数 |
130日×違反車両数 |
330日×違反車両数 |
過積載の程度が10割以上のもの |
30日×違反車両数 |
80日×違反車両数 |
200日×違反車両数 |
500日×違反車両数 |
※過積載違反により、社会的影響の大きい事故を引き起こした場合等には、処分の荷重がおこなわれることがあります。 |
【表4】
「道路運送法に基づく運行管理者資格者証の返納命令発令基準等について」一部改正の主な概要
(1) 事業用自動車の運転者が過労運転、酒酔い運転、酒気帯び運転、薬物等使用運転、無免許運転、大型自動車等無資格運転、最高速度違反行為又は過積載運行(貨物関係)を引き起こした場合であって、資格者が当該違反行為を命じ、又は事業用自動車の運転者がこれらの行為をすることを容認していた場合
(2) 資格者が事業用自動車により、酒酔い運転、酒気帯び運転、薬物等使用運転、無免許運転、大型自動車等無資格運転又はひき逃げを行った場合
(3) 運行管理者に選任されている資格者が、運転者に対する点呼を全く実施していない状態が認められる場合
(4) 資格者が運行の安全確保に関する違反の事実若しくはこれを証するものを隠滅し又は改ざんを行う等これを疑うに足りる相当の理由が認められる場合 |
【表5】
荷主への罰則 |
過積載車輌の運転の要求等の禁止(道路交通法) |
道路交通法において、荷主は運転者に対し過積載となることを知りながら、積載物を売り渡したり、引き渡したりしてはいけません。これに違反した荷主等が、反復して過積載の要求をする恐れがあると認められるときは、警察署長から過積載の「再発防止命令」が出されます。
罰則 再発防止命令に違反すると、6月以下の懲役又は、10万円以下の罰金が科せられます。 |
荷主勧告の積極的な発動(貨物自動車運送事業法) |
国土交通大臣は、貨物自動車運送事業法第64条に基づき
○どうしても過積載しなければ、輸送できないような依頼をした場合
○過積載となることがわかっていながら過積載運行を要求した場合
荷主に対し、再発防止の措置を執るように勧告します。
・協力要請(イエローカード)
・警告書(レッドカード) |
乗務員への罰則 |
違反点数及び反則金(道路交通法) |
過積載の程度 |
大型車 |
普通車 |
・車輌の停止と過積物の重量の測定等
・過積載車輌に係わる処置命令及び通行指示
・従わない場合は3月以下の懲役又は5万円以下の罰金 |
10割以上 |
※6点 |
※罰則適用 |
3点 |
3万5千円 |
5〜10割未満 |
3点 |
4万円 |
2点 |
3万円 |
5割未満 |
2点 |
3万円 |
1点 |
2万円 |
※6点は免許停止処分、罰則は6月以下の懲役又は10万円以下の罰金 |
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