計量計測機器で事故のない輸送と安全な社会を
国内貨物総輸送量における輸送機関分担率を見ると、トラックによる貨物輸送は91・5%と大半を占め、日常生活はもとより産業経済の発展に欠くことの出来ない重要な役割を果たしている。その一方で、トラック業界を取り巻く経営環境は、原油価格の高騰、世界的な景気後退の影響、規制緩和による競争の激化などにより厳しい状態となっている。行政の動きとしては経済的規制は緩めながらも社会的規制は厳格化の方向に向かっており、過積載防止対策を盛り込んだ改正道路交通法と取締りの強化が功を奏して、悪質な過積載運行は大幅に減少してきている。とはいえ、過積載運行はなおゼロではなく、事故が発生した場合に重大事故に結びつきやすい傾向にある上、道路の損傷や輸送秩序を乱す要因ともなっている。そのため運輸業関係者は、過積載予防体制の一つとして、各種はかりや装置を導入している。
過積載の取締強化
過積載の危険性
トラックによる過積載運行は、制動距離の伸長、ハンドルの操作性悪化など、重大事故誘発の原因にもなりかねない。
また、路面に過大な荷重を加えるので、舗装や橋梁の傷みを早め、耐用年数を短縮させてしまう。
さらに、エンジンや車体に過大な負担をかけることから、騒音、振動、排気ガスを増大させ、沿道の環境悪化にもつながる。
運行管理者資格者証の返納命令発令基準などを強化
過積載や長時間労働による事故、飲酒運転などが社会問題となる中、関係機関などは、輸送の安全性を向上させるために、事業者や運行管理者に対し事故防止への対策を強めている。
国土交通省は、2007年7月から、自動車運送事業における運行管理者資格者証の返納命令発令基準などを強化した。
自動車運送事業者は、営業所ごとに車両数に応じて国家資格を有する運行管理者を選任することが義務づけられているが、運転者が過労運転、酒気帯び運転、速度違反、過積載運行などを引き起こし、運行管理者がこれらの行為を指示または容認していた場合、ただちに返納命令を発令する。
処分歴等検索サイト開設
また、国土交通省は、運輸・建設などの事業者に関する処分歴などを検索するサイト(ネガティブ情報の公開)を昨年末から開始した(http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03punishment/index.html)。事業者名や、行政処分の種類や違反点数から検索し、2006年10月以降の処分歴を見ることができる。同省は、事業者に対し国民の「監視の目」をつくることで、適正な事業運営を促し、安全の確保につなげたいとしている。
過積載に対する処分
過積載運行は道路交通法で罰せられることとなっているが、貨物自動車運送事業法においても過積載運行の禁止規定を設け、過積載運行を行った事業者に対しては、同法の規定により自動車の使用停止等を命じるなど厳しい行政処分を課している。
さらに、ハード面における対策として、ダンプカーへ積載重量の自重計の取り付け義務を課している。
09年4月、(社)全日本トラック協会は、規制改革に関する要望としてこの自重計の取り付け義務廃止を要望として提出した。しかしハード面における過積載防止対策として有効であり、自車に積まれた土砂等の質量を把握し運行管理を行う上でも必要不可欠として、取り付け義務規定を廃止することは困難であるとされた。
また、過積載を防止するためには、事業者のみならず、荷主に対しても啓発活動等を積極的に推進する必要がある。荷主が運転者に対して過積載運行を要求することは道路交通法で禁止されている。違反行為を反復する恐れがある場合は、その荷主に対して「警察署長の過積載再発防止命令」が発せられ、これに従わなかった場合は罰金が科せられる。また、貨物自動車運動事業法でも、過積載運行を余儀なくさせた荷主に対して国土交通大臣が勧告できることになっている。
計って過積載防止
過積載防止の決め手は、まず絶対に過積載を許さないという姿勢を社会全体で徹底することである。いかに罰則が強化されても、荷主や運行事業者の意識が変わらないことには過積載防止の成果をあげることは難しい。
運輸業関係者は過積載防止のための具体策として、はかりを購入して対応している。トラックスケールや軸重計、輪重計等のはかりで計量し、積み荷の質量がオーバーしないようコントロールするのである。
積み荷の計り方
積み荷の総質量(めかた)を計るには様々な方法がある。
(1)積む前に個々の積み荷の質量を計っておき、規定量におさめる方法、(2)積みながら質量(目方)を計る方法、(3)適当に積んでからオーバーしていないか計ってみる方法など。
はかりの各メーカーはこれらの方法に対応した各種はかりをラインアップし、運輸関係業者に対して積極的に働きかけている。
ETC対応の軸重計も登場
高速道路の料金所入口には、古くから軸重計が設置され、軸重違反者には警告書が発行されてきた。以前は料金所で全ての車輌が一時停止していたため、精度プラスマイナス1tに対する速度は20km/h以下だったが、ETCの普及により、40km/hまでの対応が求められるようになった。
また、一般道においても、60km/hでプラスマイナス30〜20%の精度の軸重計が要求されつつある。
こうした要求を踏まえたウエイトバーセンサー型軸重計を商品化しているメーカーもある。
はかりメーカーの対応次第
過積載防止に関連する運輸業関係者の関心は非常に高いが、関係のはかりと計量に対する知識は十分ではない。はかりメーカーの適切な対応が、社会悪であり犯罪でもある過積載を防止する。
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