輸送中の交通事故減少へ
トルクレンチで規定値を管理
安心・安全輸送特集の第2回は、貨物輸送車輌の整備面で大きな役割を担っているトルク計測機器を取り上げる。むかしは「力任せにただ締め付けるだけ」の管理だったが、現在では、車種ごとに規定されたトルク値を、専用の工具であるトルクレンチで数値的に管理する手法が、法的に整備されている。
官民協同で事故防止
2007(平成19)年4月から、定期点検時にホイール・ナットを規定トルクで締め付けることなどが規定された「改正自動車点検基準」(国土交通省令)および「改正自動車の点検及び整備に関する手引」(同告示)が施行された。この改正は、大型車の車輪脱落事故が発生していることなどを踏まえ、見直しを図ったもの。大型車の車輪脱落事故の再発防止のためには、適切な点検・整備の実施とタイヤ交換時における的確な作業が必要である。そのため国土交通省では、「再発防止のための注意事項等」を取りまとめ、大型車の運転者・使用者、自動車整備事業者、自動車製作者などへの啓発活動を行ってきたが、依然として点検・整備等の不良を原因とした車輪脱落事故が発生していることから、一層の徹底を図るため、2007(平成19)年4月施行時に、次のとおり点検内容の見直しと追加を行なった。
(1)日常点検に関しては、ホイール・ナットの脱落・緩みや、ホイール・ボルトの折損等の異常がないことを点検することを規定(新設)。(2)3カ月の定期点検において、「ホイール・ナットとホイール・ボルトの緩み」を点検するとされていたが、規定トルクでホイール・ナットを締め付けることを規定(明確化)。(3)12カ月の定期点検において、ディスク・ホイールを外してホイール・ボルトを細かく点検すること、取り付ける際には規定トルクでホイール・ナットを締め付けることを規定(新設)。(4)タイヤの交換の際の注意事項として、規定トルクでホイール・ナットを締め付けること、誤組みをしないことを規定(新設)。
トルク機器での管理
適正なトルク値がある。この規定値を把握していないと、締め付けすぎてボルトやナット類を痛めたり、逆に締め付け不足によって、部品の脱落を発生させたりしている。結果、重大事故につながったり、製品の不良を生む。
■数値で管理が大事
各種の機械生産工場や自動車や電車、飛行機等の整備工場における現場では、日常的に使われている各種のトルク機器は、数値で管理することで勘に頼ることなく、また個人差もない安全な生産と整備作業を確立している。
関係業界で取り組む安全対策
(公社)全日本トラック協会では、国交省が取りまとめた「事業用自動車総合安全プラン2009」の数値目標や取り組み計画を踏まえ、今後の交通安全対策を推進するにあたり、10 年後(2018 年)を目途とした「トラック事業における総合安全プラン2009」を策定して、実施している。
同プランでは、▽コンプライアンスの徹底=点検整備実施率が他の業態に比べて低いため、点検整備実施率の向上対策を検討するなど。▽安全体質の確立=略。▽飲酒運転の根絶=略。▽IT・新技術の活用=略。▽道路交通環境の改善=略。などがあげられている。
■車種ごとに決められた適正トルク値
(一社)日本自動車工業会は、「大型車(トラック)のホイールナット締付けトルク一覧」として、メーカー名と車種ごとに適正なトルク値を公表している。 |