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  since 7/7/2002

私の履歴書 齊藤勝夫(第18回計量賞受賞者、元千葉県計量検定所長、元流山市助役、現千葉県計量協会・計量士会会長)                 

私の歩んだ道−公務員として信念を持って

第3編 新しい夜明け、計量法の歩み

岩井さんに真情を吐露し、信頼を得る

 さらに、千葉県計量管理協議会も設立の昭和40年(1965年)3月9日から6年が過ぎ、4代会長としての事務を実質担当する岩井さんとしては、独自の会の存在感と、会の組織をしている構成員に、会に入っているからこそ受けるメリットを実感として知らしめ享受させる絶好の機会として示し得ると意識を強め張り切っていることを、敬意を表しつつ所長として感じとっていたからこそ以後、肝胆相照らす程の友として心を許し合う真情を吐露し合い、結果として受検企業、検定検査実施の県計量検定所の行政機関、協議会の三者三様の異なる立場をうまく利害を調整して一致させることができたと信じている。 
  そのために、会長事務を引き受けて張り切っている岩井さんに、行政指導は行政処分ではないので行政訴訟の対象にならないことを論理的に説明説得し、所長が将来異動しても小林一正検査課長がおるので、行政責任は果たし得るし後顧の憂いはないことも併せて説ききかして信頼も得たのである。 
  何故そのようなことまで行ったかは、検重車に代わる台車(トロ)3台と検査用分銅を少なくとも20t余り新たに購入方を借り入れをして、調達して保管をしてくれる立役者を恵藤計器(株)にお願いすることを強く説得する共々布石を打っておかなければならないからである。

千葉計管協を仲介役に

 その布石とは、恵藤計器(株)は中小企業者であるので設備保有のために、それ程の余裕とゆとりがある筈もない。全額銀行から借入れして調達し、確実な返済方法をも構築しておかなければならない。私が自治大で学んだ知識と検定所を離れて本庁時代所掌した中小企業経営診断と実態調査の経験を生かして、自ら構築した腹案は協議会を双方(支払側と返済側)の仲介役になってもらい、中核に取り込んだ手堅い方法を編み出していたらこそ大事な人、岩井さんが布石の重鎮役そのものに狙いを定めておいていたのである。

打合せで強い指導力を発揮

 その前後の布陣として「貨車はかり」の検定検査方式を変更する協議を所長帰任後、時間をかけ、その間、現状のいたみを味わい続けてもらって解決しなければならない切実と切迫感を忘れることなく、感じつつ頃は良しと2年を経過した昭和47年(1972年)9月に、受検企業の代表会社と打合せ会を持ち始めたのである。第1回の打合せ会は計量検定所で行った。当時の発見された書類資料を繙くとき要点を述べると次のように所長の強い指導力が示されている。

打合せの要点

 まず(1)国鉄の検重車を使用しない検査方式を検討し、定期検査にも、検定にも使用できる設備とし、検査分銅直乗方式(他の方式の加重システムは5年以内の、実用化は難しいとの判断から)を採用する。(2)準備する保有すべき検査分銅は、検定用に60t、定期検査用にはその5分の3の36tとする。B移行は、昭和49年度を目標として、昭和48年(1973年)度中に、県計量検定所において、500kg分銅で34箇の17t、20kg枕型分銅で20tとし、残りの23tは1tの分銅を23箇分恵藤計器(株)で調達する。C検査用分銅積載台として、検重台車(トロ)、自重1tのもので、最大積載量15tを3台、恵藤計器(株)で調達保管する。上記の基本事項を協議し、その所長案を双方が了承し合い、恵藤計器(株)への説明と資金調達方法と資金の返済は、受検企業側が適正金額として了解した場合は、5年間均等払いでトロ及び検査分銅使用料として支払うこととし、その適正金額は、公正を期す所長に原案を一任することとした。

成否は受検企業全員の理解と納得にかかる

 第1回は、計量検定所ベースで打合せ会は大きく前進し、次回は、協議会側に役割分担即ち立合者として、検査の実施と使用料支払いの双方の実行の担保責任を引き受けてもらうことにして、いよいよ実現に向かって歩みを始める見通しがついた。円滑な歩みは、受検企業12社全員の理解と納得にかかっていた。
  これこそ、ここに岩井さんの格好の出番が待っているという二の矢の筋書きである。急いては事を為損ずる。しかし、天のときは一気呵成に仕上げること良し、との暗示が自らの経験から閃き、次の打合せ会は1ヵ月後の10月に開くと宣告をした。
 役割分担の基本形態は初めにしっかりと決め、以後は、設備の増強と各社のトップの了解をとるための時間をかけて、本当の私の腹は昭和49年度からのスタートを目論んでいたのである。

実現性、強制力ある返済方法が必要

 次の打合せ会は、設備の増強の大役を担任する恵藤計器(株)にとって、場合によっては社運を賭ける投資(借入れ)について、どのような返済の確実性を示せる手段方法を構築し、採れるかが最大の難関で、単なる相手方や役所サイドからの要請で「ハイ、分かりました。」と答えてもらえる程単純ではない。すべては、実現性と強制力のある返済方法の実現いかんである。

5か年で全投資額を回収する

 秘めてもっていた私の腹案は、勿論、前述してきた覚書という当事間(私人対私人)の契約による約束ごとの締結と履行であるが、今回の検重車に代わる方法の別の方式採用の前提は、検査方法の革命的簡便方法は向う5か年間は発生しないとしてきたことの論拠をベースにして、新方式を開始したら、向う5か年間で全投資額を回収する。そのようにしてまず、実施引受の大役の任から恵藤計器(株)を開放して、増強した台車と検査分銅の精度管理に専任してもらって、この変えた検査方法の確立安定に寄与させ、併せて受検工場側の信頼と安心感を長く得ておきたいと念願して私案を持ったのである。

私案の骨子

 私案の骨子は、次のように構築した。(1)変える検査方式に使用する台車3台と検査分銅(1t用)23箇は恵藤計器(株)で調達用意すること、(2)所要の資金は全額銀行借入れとし、原資と利息額を明確にすること、(3)返済は調達設備費を5か年で、受検企業側が、使用料として均等払いとして負担すること、(4)使用料の算定に当たっては、支出の区分を固定費と変動費に大別して、企業会計にならって算出すること、(5)履行者は常時(毎年定期検査を受検すべき企業)使用する各社として、覚書締結時の発足企業側が5か年間は責任をもつこと、(6)立合者は、千葉県計量管理協議会及び会長とすること、(7)円滑運営のため定めのない事項は、双方協議して処理すること。とする内容であり、借入れ額の返済の期間を5か年間とした。

異議なく、大きな前進の要因に

 もう一つの説得ある論拠は、本庁にいるとき、当時中小企業用合理化機械は、大蔵省令をもって、5か年間の特別償却が認められてきたことを、ここに採用し、大企業側を十分説得でき得ると確信して打って出た手なのである。このことは見事に異議をさしはさむ余地がなく、了承され、大きな前進の要因となったのである。

 

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