ホーム・計量計測データバンク2005年度計量法改正情報BOX>座談会(2007/06/15)【3】

旺盛に計量管理を実施している適正計量管理事業所
「適正計量管理制度と計量士」座談会

INDEX | BACK | NEXT
【3】

はかりは使っていると誤差が大きくなる

計量器に対する知識が不足する使用者にどう対処するか(川崎市の診療所関係の薬局でタミフルを通常の3・75倍調剤したような事故をどのようにして防ぐか)

横田俊英 適正計量管理事業所はそれができていると思います。しかし、そういう知識がない方々はどうなのでしょうか。

林 紘治 今は、はかりを販売する営業の方が、昔よりは丁寧に説明するようになったと思います。

森川正彦 川崎市の診療所関係の薬局でタミフルを通常の3・75倍調剤したということがありました。g目盛りがもんめの目盛りになっていたのを気がつかずに調剤してしまったというものです。あれも始業点検をしていればすぐにわかったはずです。天びんの目盛りが、簡単にもんめ目盛りに変更できるしくみになっていたことに問題があったことも確かですが。

 現在の電気式のはかりは、ファンクションもたくさんありますし、単位のパラメータも世界中で使用する単位が内蔵されています。

横田俊英 はかりがおかしくなるとは、どういうふうな状態になるのですか。

3000分の1のはかりで1kgの肉を計ると0・数gの誤差(±1・5目量の公差で検定されたはかりは3年間で±2・5目量狂っても不思議ではない)

森川正彦 精度が3000分の1のはかりで、プラスマイナス1・5目量の公差で検定されたはかりがありますね。このはかりを普通の環境のところで時々使用するという状況で3年間置いておくと、プラスマイナス2・5目量狂うようになってもちっとも不思議ではないということです。

横田俊英 具体的に言うと、たとえば1kgの肉を計ったとするとどのくらい狂いますか。

森川正彦 0・数グラムくらいです。日本では通常の取引単位があまり多くありませんから影響が少ないのです。

 ただ電子式の計量器は常に変化しています。また熱によって電子部品や構造部などが変形を受けた場合には元には戻りません。ずっと誤差が蓄積されていきます。

弾性バネを使ったはかりと起歪体を使った電気抵抗線式のはかりの誤差の出方の違い(経年変化によってバネ式は多く表示し、電気抵抗線式は少なく表示する)

林 紘治 昔の弾性バネを使ったはかりですと、使っているうちにだんだんバネがへたってきます。したがって実際の質量より多く表示するようになります。

 現在の起歪体を使った電気抵抗線式のはかりですと、使っているうちに逆につまる症状が出てきます。ただ、耐久性は昔のはかりに比べてかなり伸びています。

デジタル表示のはかりは誤差に気づかずに使っていることが多い

森川正彦 どっちの側に誤差がいくかという問題もありますが、今のはかりは物理的に壊れる部分が少なくなっています。

 しかし、狂っても計量した数字は3桁も4桁も出ますから、問題なんです。

はかりの定期検査は2年に1度

横田俊英 定期検査の合格ラインから外れるのですか。

森川正彦 いや、使用公差の範囲内には入るはずです。しかし、狂ってもわからない、数字が出てしまうというのは問題です。

はかりの年間使用回数10万回とすると保証できるのは最大限3年間だった

桑山重光 私は計量研究所名古屋支所に勤務していた時代に型式承認を実施したことがあります。ばね式のはかりは耐久力テストを10万回やります。当時の計量法は定期検査周期を都市部は1年、郡部は3年と定めていました。実は都市部で一年間に1つのはかりが使用される回数が10万回と想定して耐久力テストをやったわけです。したがって3年、5年と使用しますとラック・ビニオンが摩耗して誤差が出てきます。せいぜい保証できるのは最大限3年間です。

森川正彦 起歪体や構造に関しては、最初の10万回くらいはテストをやった方がよいくらいなのです。このくらいで安定してきますから。

検査前調整が何を指すかによるが、何もしないということになると定期検査不合格率は上がる

横田俊英 定期検査の合格率ですが、この合格率は、検査前にはかりを調整してその後検査した場合の合格率であるということがよく言われます。事前の調整をしないとかなり不合格がでますか。

林 紘治 行政マンとしての経験から言いますと、現在の電気抵抗線式、あるいはそれより前の光電式のはかり、普通のバネ式はかり、てこを使った機械式のはかりはかなりバラツキがありますから、一概には言えません。

 調整するというのが何を指すかによって違いますが、現在よりは不合格率は上がるでしょうね。

計量法の改正時に調査し定期検査周期は2年ではダメだという結果が出ていた(最終的には(都市部1年+郡部3年)÷2=2年という政治的な結論に)

蓑輪善蔵 平成4年の計量法の改正の時に調査しました。そのときに定期検査周期は2年ではダメだという結果が出ていました。しかし、最終的には(都市部1年+郡部3年)÷2=2年という政治的な結論になったのです。

計量法では、検定制度などを敷いて取引・証明用のはかりには2年周期の定期検査の受検を義務づけている

横田俊英 一般の事業所で使っているはかりは、ほとんどが性能の確認もなしに長い期間使われているのでかなりの数のはかりは確かさについて怪しさがあります。

 そのようなはかりを怪しいとも思わずに使用しているのですから、そのはかりを使用して計った結果の正確さは曖昧であるという状態にあります。定期検査を受ける必要のある取引や証明に用いられているはかりが、使用者の知識の欠如によって法律義務に違反して無検定あるいは定期検査を受けずに長い期間平然として使われているという実態が広くあります。

 これに対して適正計量管理事業所で管理しているはかりは大丈夫であるということは確実なこととして宣言できます。適正計量管理事業所であるかそうでないかによってはかりの管理のされ方、本来の機能を発揮しているかどうかということは明らかに違います。はかりは管理なしでは機能しないのです。保守や点検など管理をしないで使用しているはかりは大凡(おおよそ)機能しているということに過ぎない。そのようなこともあって計量法では、検定制度などを敷いて取引・証明用のはかりには2年周期の定期検査の受検を義務づけているのです。

INDEX | BACK | NEXT
ホーム・計量計測データバンク2005年度計量法改正情報BOX>座談会(2007/06/15)【3】