旺盛に計量管理を実施している適正計量管理事業所 |
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【4】 | ||
はかりはよりよい状態で使いたい〜スパン調整の問題〜 |
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スパンはアンプの特性の一つだから調整して当たり前(スパン調整はアンプの特性を調整すること)横田俊英 高徳さんは、全国計量士大会でも、スパン調整の権限を計量士に与えて欲しいということを言われましたが。 高徳芳忠 スパンはアンプの特性の一つです。あれは調整して当たり前なのです。それを合わせた後、なお直線性の問題であるとか、四隅の値がきちんと出るとかでないとか、という問題があるわけです。それらをみた上で故障か否かの判定が出来る訳です。 しかし、スパン調整はアンプの特性を調整することですので、やって当たり前です。 計量法の規制対象でないはかりは調整して使用している(校正して使用するのが本来の姿。正確なはかりにして計ることがなぜ悪い)横田俊英 計量法はダメだといっています。 高徳芳忠 そうです。計量法の規制の対象でないはかりは調整して使用しています。ところが計量法の規制対象のはかりは調整できない。こんな馬鹿な話はありません。正確なはかりにして計ることがなぜ悪いのでしょう。計量機器を正確に校正することは私の身上です。 環境計量器は調整しないと計測でない。スパン調整くらいはやってもよいとと思う蓑輪善蔵 環境計量器は調整しないと計測できませんね。私は同じことだと思います。スパン調整くらいはやってもよいと思いますよ。 計量法で特定計量器では器差に影響が出るものはいじらない(公差の範囲があってもより良い状態で使いたいという欲求があるのは当然だが)横尾明幸(司会) 全体的には測定をするためにはスパン調整は必要だと思います。しかし計量法で特定計量器では器差に影響が出るものはいじらない、ということになっています。それで専門家でなくても誰でもが特定計量器を使えるわけです。そのかわり、使っていると経年的な影響も出てきますから、たとえばはかりについては2年に1回の定期検査を受けるということになっています。スパン調整は法令の規定に触れます。そこに難しさがあります。 販売事業者さんで計量コンサルタントの方からも同じ要望が出ています。たとえば東京で買ったはかりを九州に持っていって使うような場合が出てきます。そのときにスパンも調整する必要があるというわけです。 もう一つ、流通関係で使われている計量器で、最初はスパン調整すればきちんと正確に計れるようになります。ところが、載せ皿に衝撃を受けていたりすると、スパン調整がまっすぐいきません。下手に調整するとむちゃくちゃになってしまっていじれなくなってしまいます。 そういうこともあるので、スパン調整の問題は単純にはいかないということがあります。確かに計量技術の問題からいえば、特定計量器には公差がありますから、このはかりは公差のなかのどのあたりなのかという問題がありますので。 計量士にはかりのスパン調整を認めよという欲求は非常に強い(しかしやると特定計量器の制度が成り立たなくなる心配も)横田俊英 適正計量管理事業所に所属する計量士、あるいは適正計量管理事業所が管理する計量器にはスパン調整を認めたらどうか、という意見がありますが。 横尾明幸(司会) それをやると特定計量器の制度が成り立たなくなると思います。法律のしくみが崩れてきます。特定計量器の趣旨から、ある程度の矛盾には目をつぶっているわけです。簡易修理はできます。 「自動はかり」は検定対象外なのでスパン調整して使用できるが、計量法では「非自動はかり」のスパン調整はできない横田俊英 でもやって欲しいですね。 高徳芳忠 制約があってもやりたいですね。自動計量の場合は私達がちゃんとやっているのですから。「非自動はかり」はスパン調整はできないことになっていますが、「自動はかり」は検定対象外であることから、スパン調整して使用できる。 横尾明幸(司会) 今の制度の考え方を変えて自主管理、自主責任というしくみをつくるところまで持っていかないと難しいと思います。 スパン調整によって不当に利益を得ることがあってはならない桑山重光 スパン調整によって全部プラス側にして計量を通じて不当に利益を得るということも出来ないことではありません。現在の法律ではそれができないようになっている。 横田俊英 スパン調整に潜むさまざま問題を掘り起こして十分に検討するということが必要になるということでしょうか。しかしスパン調整を認めるということの見通しはあまりないということだと悲しい。 横尾明幸(司会) 私も要望の趣旨はわかるのです。しかし制度上の問題がありますから。 はかり販売の現場はスパン調整を認めてもらわないと困る(スパン調整を簡易修理とする方法ではどうか)安斎正一 なぜスパン調整が必要なのか。その背景をお話ししたいと思います。機械式はかり、バネ式はかりだけの時代には、ひょう量500g/目量1g、1kg/2g、2kg/5g、4kg/10gなど、どのメーカーもだいたい5、6種類のはかりしかありませんでした。ですから営業所でも常に予備のはかりを在庫していて、すぐに代替品と交換できました。 ところが電気式はかりになりますと、種類が膨大になって、営業所も代替品を置いておけなくなりました。顧客は悠長に待ってはくれません。そこで部品を交換して現場でスパン調整をするというようになったわけです。営業の現場としては現実的にも、これは認めてもらわないと困るわけです。そこでスパン調整を簡易修理にして欲しいという要望が出てきたわけです。 欧州などでは型式承認をとると鉛で封印をしてしまい開けられません。日本は特殊なシールや特殊ネジでの封印ですから、封印を開けて簡易修理ができるのです。 正しく計ろうとする心と正しく計れない仕組みとの矛盾(消費者ははかりをいじることへの拒絶感が強い)林 紘治 今はシールもありません。基準となる分銅とテンキーの操作でできてしまいます。 横尾明幸(司会) 消費者は、はかりをいじることを絶対に許しません。いじるということへの拒絶が強いです。いじれるということは、不正をやろうとすればできますから。 横田俊英 正しく計ろうとすることとは矛盾しますね。 横尾明幸(司会) 日本の場合は情報が十分に提供されていませんから、外部から判断がつかないですね。そこが問題です。 ラボなどで使うはかりは事前のスパン調整が必要不可欠(しかし一般流通業で使用するはかりにスパン調整を認めると適正計量が担保できるのか)林 紘治 私は研究所などで使うはかりと、一般流通業で使うはかりは取り扱い方が全然異なると思います。ラボなどで使うはかりは、事前のスパン調整が必要不可欠なものです。しかし、それを一般流通業にまで適用すると、横尾さんが言われる適正計量が担保できるのかという問題が出てきます。 試験機の校正証明書を出す上ではかりが必要に。1年に1回スパン調整溝口義浩 当社には取引証明に使うはかりはありませんが、試験機の校正証明書を出す上ではかりが必要になる場合があります。はかりは1年に1回社内の有資格者がJCSS証明書の付いた分銅を使ってスパン調整をしています。 横尾明幸(司会) 最近のはかりは、そうやって使わないと正確な計量ができないですね。大学や大学病院の研究室で使われているはかりも校正がされていないものが多いです。分銅内蔵型のはかりであってもやっていないですね。 ですからわれわれが検査するときには、分銅を載せてあげて「これだけ違っていますよ」というのを見せるようにしています。この違いを見せてあげるということが必要ですね。 溝口義浩 私どものところは、分銅を載せてそれがJISの公差内ならOKということにしています。社内でゼロ点合わせをされない方やチェック用分銅を使わないで測定している人を見かけた場合は注意しております。 特定計量器は18種蓑輪善蔵 今、特定計量器にはどんなものがありますか。 横尾明幸(司会) 現在は18機種です。はかり、温度計、圧力計など18種です。取引・証明に使用するものは検定付のものを使わなければなりません。だんだん減ってきています。 商業用のはかりはだいたい3000分の1の精度蓑輪善蔵 一般の取引に使うはかりでスパン調整が必要なものは精度が高いはかりであると思いますが。 私は商取引には1000分の1の精度で十分だと言っていたのです。ですから5000分の1の精度のはかりを取引に使う分野は限られているのではないですか。 林 紘治 現在、商業用のはかりはだいたい3000分の1の精度のものです。 桑山重光 当社のはかりはロードセル式のはかりもありますが、電磁力平衡方式のものが多いです。検定目量が10mg、補助目量が1mgの1級はかりです。このはかりがどこで使われているかと言いますと、大学とか貴金属店です。 こういうはかりは分銅を内蔵していますので、日常点検で朝、電源を入れまして、使用する前に必ずキャリブレーションをします。翌日も同じようにキャリブレーションします。 横尾明幸(司会) 貴金属店はプラスマイナス10mgの誤差内で取引をするようです。そうすると、その一つ下の桁の精度のはかりが必要というわけで目量1mgのものが使われています。 白金は10mgで価格が51円違ってくる桑山重光 白金は1gの価格が5100円ぐらいします。そうすると10mg違うと51円違ってきます。0・1mgの天びんが欲しいと言われるのですが、このような天びんをお店で使うのは無理な話です。 横尾明幸(司会) 店頭に近いところで使っていますからね。環境的に無理です。 桑山重光 あとは日本銀行や銀行協会などで使われています。金の延べ棒などを計ります。 横尾明幸(司会) そのクラスになると浮力が影響してきますが、そのあたりの補正をきちんとしているか心配ですね。実際に見たわけではないので、何とも言えませんが。 一般の商取引に使うはかりではスパン調整はあまり必要がないのではないか(そうではないスパン調整の要求は強い、やった行為の記録をきちんと残せばよい)蓑輪善蔵 私は一般の商取引に使うはかりでは、スパン調整はあまり必要がないと思います。 森川正彦 スパン調整は主には製造業における要求でしょうが、流通分野でもはかりを使う場所を変えれば、重力加速度補正などはやらなくてはなりません。これも計量性能を変える行為ですが、私はやっても全然かまわないと思います。 適正計量管理事業所なのですから、やった行為の記録をきちんと残せばよいのです。重力加速度補正などはデジタルパラメ−タの入れ替えに過ぎませんから。ですからこれは技術上の問題ではなく管理上の問題なのです。適正計量管理事業所の計量士さんたちはきちんとしているわけですから、きちんと記録するという管理のお約束ごとの上に立って計量性能の変更も可能にしたらよいと思います。それは声を大にして言ったらよいと思います。 高徳芳忠 そういうことです。ぜひともやりたいですね。 桑山重光 一般的に計量器を調整する場合は、必ず調整前と調整後において測定する必要があります。記録を残すことが重要です。 計量士はスパン調整ができるという主張をしてもよいのではないか(その代わり違反行為には厳しい罰則を科す)佐藤克哉 私のような法定計量に関係がない測定の分野にいた人間からすると、スパン調整を認めないなんてことは論外です。私は計量士はスパン調整ができるという主張をしてもよいと思います。 森川正彦 その代わり、違反行為には、国民全体に対して信頼を失わせたということで、厳しい罰則を科すべきです。 |
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