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イノベーションで不連続の変化起こす


寺岡 和治

(株)寺岡精工 代表取締役社長

vol.2

日本計量新報 2011年8月7日 (2881号)3面掲載

平時と異なる行動が必要

−−日本のエネルギー問題に関してはどのようにお考えですか。

再生可能エネルギー20%超は不可能

寺岡和治政府は今、電力に占める再生可能エネルギーの割合を20年代の早期に20%を超える水準にすると言っていますね。しかし、現在の再生可能エネルギーの比率は日本では2005年の総発電量に占める再生可能エネルギー比率は9%、2020年の目標で10%です。しかも、そこから比率が高い水力発電を除くとそれぞれ1・7%、2・5%です。太陽光発電や風力などによる発電量は現状ではこんなものです。これを約2倍にして、20%を超える状況にするのは、まず不可能だと思います。

原子力政策も場当たり的

原発政策も混乱しています。九州の原発の再稼働を進めておきながら、一転して全原発のストレステストを実施することになりました。明確な基準が見えませんね。国民の眼から見ると、一体どうなっているのか、ということになります。場当たり的だといわざるを得ませんね。
 原発に関しては、福島第一発電所であれだけの事故が起こって、まだ続いているわけですから、徹底的な検証が必要です。

国民のコンセンサスつくる

そのうえで、つまり危険度や安全対策をきちんと押さえた上で、日本で使うエネルギーのうちのある程度は原発による発電で賄っていくということを、国民のコンセンサスにしていく必要があります。再生可能エネルギーの状況を考えても、脱原発は不可能だと思います。
 今は原発問題が、沖縄の普天間基地を巡る問題と同じような状況になっています。普天間問題は、日本政府がアメリカ政府との間で政府合意を形成しても、地域の人々の合意がないと、その政策が実施できない状況になっているということです。原発がまさにこの状況になっています。

政府発表は信用されていない

現在、54基ある原発の半分強が停止しています。これは電力の供給状況としては厳しい状況ですね。政府や原子力安全委員会などがいくら安全性が確保されたといっても、国民がそれを信用していないですからね。

国際機関で客観的な判断を

ですから、唯一やれる方法は、IAEA(国際原子力機関)のような国際機関に、日本の原発の安全性判断を国として依頼し、客観的に判断してもらうことですね。日本はデータを全部提供するなど全面的に協力して、一切口は出さないようにする。そして、指摘があればそれに真摯に対応していくということです。そういうふうに、プロセスをすべて国民に見えるようにしていかないと、現在の状況を打破できないと思います。

選挙制度にも問題が

私は現在の選挙制度にも問題があると思っています。小選挙区制ですね。小選挙区というのは、議員を選ぶ地盤が非常に小さくなるということですから、議員が扱う問題が小さくなってしまうということでもあります。どぶ板の問題を解決するのが議員の仕事のようになってしまいます。
 ですから、今の政治の枠組みの中では構造的に、先ほど言った、100年の計を練るような政治家は出てきません。日本には優秀な人材はいると思いますが、今の選挙制度の下ではそういう人材が政治の場に出てこられないですね。選挙のメカニズムがジャマをしています。

思い切った行動が必要だった

東日本大震災は日本にとって非常に大きな衝撃ですから、それを捉えて、根本的に仕組みを変えていくという大改革の提案、日本のアジェンダ(行動計画)をスピーディーに示していく必要があります。
 東日本大震災という非常な事態が起きたわけですから、平時とは異なった思い切った行動が必要であったし、震災直後であったらやることができたと思います。もう、これからやるとなると無理でしょうね。そうなると、海外の日本を見る目、関心も薄くなってきます。残念です。

イノベーションがカギ

−−現在の世界経済、日本経済の状況をどう見ていますか。

中国やアジアでのビジネスを強化

中国やアジアのマーケットは、高度成長を続けています。インドも伸びてきます。インドが今のところ一歩遅れた感じになっているのは、官僚主義のせいです。しかし、これも変わってきています。日本市場は、マクロでは伸びないですね。ヨーロッパも同じです。ヨーロッパと日本のマーケットは成熟していますから、市場全体としての伸びは止まっています。
 アメリカ市場は、まだまだ伸びます。現在も、移民が続いていますから、毎年人口が増えています。これがアメリカの活力になっています。

政府と心中はしない

企業にとっては、市場規模が伸びているところで商売をするのは当たり前ですから、われわれも中国やアジアのマーケットでのビジネスを強化しています。  先ほど言いましたように、日本の将来に明るい展望は見えていませんから、企業としては日本政府との心中、愚かな政策による、とばっちりを被ることは、何としても避けなければなりません。

ウィンブルドンになることは可能

日本のマーケットもマクロで見ると、今後全体のパイは増えていきません。  日本市場も、イギリスで行われるテニスのウィンブルドンのようになればよいのですけれどね。つまり、出場選手ではイギリスのプレーヤーはあまり奮いませんね。しかし、ウィンブルドンには全世界からプレーヤーや観客が集まってきて、賑わうわけです。こういうことは、日本でも可能だと思います。ただ、今の政府のやり方ではダメです。

企業の伸びはマクロ経済では測れない

日本市場はマクロでの成長はありませんが、しかし、企業はマクロで商売をしているのではありません。われわれも売上が500億円くらいの企業ですから、500兆円のGDPが増えていかなくても、その中でわれわれが売上高を伸ばしていくことは可能です。

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