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日本計量新報 2007年1月1日 (2658号)

国民の安全安心と計量行政とこれを取り巻く様々な「欲」

計量法の改正の作業が進行しているなか、ここで何がどのように検討されているかということは別にして「欲」という観点から考察してみたい。政府は行政事務が肥大化し税収とのバランスが著しく欠くことになったため「規制緩和」そして「官から民へ」という命題を設けてどのような規制行政であっても一度これを緩和しその業務を民へ移すことを検討することをあらゆる政府機関に命じている。これが政府の欲である。地方公共団体も政府と同様に税収不足がつづいていて財政面から旧来の業務をそのまま続行することが困難だから「民に移せるものは民へ」という構想がある。
 計量行政は計量行政審議会の審議を必要としない項目であるということで「機関委任事務」を経済産業省の判断で自治事務に切り替えてしまった。計量行政の自治事務への移行の後に発生しているのは機関委任事務時代になされていたハカリの定期検査などの実施率が実質上後退するという計量行政の不実施である。計量法が定めている内容を地方公共団体が独自に判断してやらなくてもよいことの枠を拡大したため地方公共団体の計量行政に費やす予算を削減し従事する人員も大きく減らしている。日本の計量行政機関と計量行政職員が保持していた「適正な計量の実施の確保を通じて国民生活の安定と経済社会に貢献する」という気持ちが実質的に後退し、幾つも計量行政機関からはこうしたマインドが消えたために計量行政がやるべきことがほとんど分からなくなり、実質的に計量行政を放棄したとみられるところもある。
 国と地方公共団体の直接的な欲は行政にお金を使いたくない、計量行政に費やすお金をできるだけなくしたいというものである。これに拮抗するはずの「適正な計量の実施の確保を通じて国民生活の安定と経済社会に貢献する」という気持ちが地方公共団体から実質的に欠落してしまうと、誰を恐れることもなくやましさの思いもなく計量法で定められているなさねばならない計量行政を放棄することができる。
 計量法が規定する制度としてハカリの定期検査を地方にある計量協会など民間組織に実質上「委ねる」「指定定期検査機関」制度がある。ハカリの定期検査は計量協会に「委ねる」という動きが急激に進行しているのは、それ自体計量法が規定していることを選んで実行しているのだから悪いことではないもののその内容をよく見ると決して継続可能なものではない。
 民間業務だからということであっても旧来の地方公共団体が実施していた関連の直接的な行政費用を半減しているところがある一方で、当の民間団体が指定定期検査機関業務の運営費用が慢性的に不足しているところへ一律マイナスシーリングということで年度ごとに提供する費用を削減している。幾つもの計量協会では「ボランティア組織」としての会費収入を指定定期検査機関としての検査業務の経費不足に充填するという状態にある。「指定定期検査機関」の業務に従事する人々、とりわけ若手の計量士資格を持つ人々の将来にわたっての必要な待遇をしていくということでは見通しがつかない状況にあることなどもあって、このままでは計量法が定めている様々な業務が滞ることになる。
 日本の計量法に関連する人々として国と地方公共団体のほかに、前述の地方の計量協会、計量士、計量証明関係の事業者、計量器の製造販売関係の事業者、消費者などがある。計量士はハカリの定期検査の代行業務という仕事のほか、「適正計量管理事業所」に付随して対をなしている。「適正計量管理事業所」制度は以前は計量器使用事業所制度と称されていて、所属する計量士と事業所の共同の管理体制のもとハカリを検査することを条件に、ハカリの定期検査を受けなくてもよい制度である。これを「ハカリの定期検査の免除」という言い方をしてきているが、公共機関等が実施する定期検査を受検した方が費用面で有利ということからダイエーが指定を返上するなどの動きがでている。単純にハカリの検査費用という観点からは「適正計量管理事業所」制度は企業、事業所にとっては好ましいことではないので、計量法は「適正計量管理事業所」になることによって、ハカリの定期検査受検よりも費用が少なくてすむ措置か別の選考用件を創出することが必要である。
 計量器事業者の製造あるいは販売関係者の計量法改正に臨む姿勢は多様である。自分たちが製造している計量器を検定対象から外すことを積極的に求める企業や団体組織もある。検定対象器種の縮小という国の考えがあるならやむ得ないという企業や団体組織があり、また繰り返される縮小方針に耐えきれなくなって投げやりになっている企業グループもある。一部の器種のメーカーは計量法制度の改正によって従来製造修理していきたハカリなどの需要が極度に減少したことから実質的に廃業あるいは業種変更を余儀なくされていて、さらに今回の改正でそれに追い打ちをかける内容に「合意」までしているのだから情けない。ある業種は検定対象器種として絶対存続を望むということで、これがかなえられなければ所属する工業団体からも脱会するという意志を表明している。計量法の検定があることでその計量器の製造事業がなりたっている企業があるので、こうした企業は検定続行を望むという欲を持っている。
 消費者代表の意見は様々である。誰が本当に計量の安全確保という計量法の規定と関係して消費者を代表する意見を持っているかの判断は難しいことであるが、意見が出ればそれが消費者意見となって計量法改正の場では通用することになる。消費者・国民の立場からは計量の安全が確保されることが絶対的であり、それが国や地方の財政のことを考慮すれば小さな費用で実現することが望ましいことになる。計量の安全は絶対に守って、だけどうんとお金を使うことは望まないというのが消費者の欲であり意見になることであろう。
 このように計量法に関係する人々の様々な「欲」はそのままそれに基づく意見となって審議の場に現れることであろうが、国の内外との整合のことを考慮しながらも日本の計量法と計量行政によって確保されてきた安全・安心の社会に変動をきたすことがあってはならない。そのような結論を考えると地方公共団体から計量行政に関する意識が年ごとに消えていることは大いに不安であるから、計量行政の費用と人員をこれ以上減退させないためには関係者の獅子奮迅の努力が求められることである。


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