What's New計量新報記事計量計測データバンクOther Data会社概要出版図書案内リンク
2007年8月  5日(2686号)  12日(2687号)  26日(2688号)
社説TOP

日本計量新報 2007年8月26日 (2688号)

執念は我慢の気持ちを大きく育て辛抱は世の適者なる人と企業をつくりだす

人の能力は目標に向かって邁進するときに開発される。人の行動は目標と一対をなしてあるものだが、その目標を立てずにただ、ぶらぶらと月日を無駄にする人がいるから、このような人はどんな能力をも開発することなく一生を終えてしまう。目標を立ててその目標を絶えず意識し、目標を見つめつづけることによって、その目標は叶えられる。目標は人にとっては夢や希望ということと何ら変わらない。だから人も企業もどのような組織もどんなに小さくても夢や希望と同じこととして目標をもっていなくてはならない。目標をもつ人間は能力を開発することができる。そして目標をもたない人間は能力を開発することができない。

 スポーツ選手はみな目標をもっている。陸上のトラック競技の選手は時間を短縮する目標を、プロ野球選手は投手の場合には勝ち星の数や防御率や奪三振の、そして打者の場合には打率や打点やホームランの数などを目標としてもっている。三千本安打を記録した張本勲氏はシーズン始めになると今年は一本も安打を打てないのではないかという強い不安に襲われてしまうという。しかし、プロ野球選手としての張本勲氏にはチーム事情などの求めなどを総合してシーズンごとに目標を設定していたはずであり、シーズンの終了時にはこの目標をほぼ達成しているのが常であった。

 目標を立ててそれを実現することはどんな状況でも必要であり、目標が人の意欲と行動を駆り立てるのである。積み重ねることによってしか目標を実現できないという性質の者であれば、目標の実現させるべき時期に対してそれを日割りにしたり、週割りにしたり、月割りにして、小刻みに目標に向かうことが大事である。1年365日を費やして実現させるべき目標は1日や2日あるいは1月では達成できないのが普通であるから、大きな目標は夢として見続けて、今日できること、今できることに全力を投入するという心構えをしっかり持つようにすることである。目標とあわせてそれを実現するための過程を大事にすることだ。大リーグでプレーする鈴木一朗(イチロー)選手も4打席凡退することが時にはある。4打数0安打で打率はゼロだから、この瞬間においては打率3割などとても思い浮かべることはできない。しかしイチロー選手はこの日のことを忘れる。この日の結果を気にしない。目標はしっかり見つめるけれど、日々の結果に強くとらわれないのである。イチロー選手のカメラインタビューを見ているとそのような態度で通している。

 計量計測関係のビジネスの世界も世の習いにたがわずに栄枯盛衰である。かつては栄えたビジネスも世の波長との同調を損ねると苦しい状態になることが多い。苦労していても希望と明るさを失わずに目標を見続けて懸命に努力する企業はいつの間にか再度浮かび上がってかつての繁栄のその上を行くことがある。ちょっとした成果に浮かれて経営の努力を怠った企業は衰弱することが少なくない。また長い期間利益を上げ続け世間の聞こえが良い企業は傲慢になっていて不祥事など引き起こして企業の信用を失墜させる。苦しくてもその苦しさに耐えるためには、目標や夢や希望をしっかりと持ち続けることもあわせて求められる。苦しさに耐えかねて勝つことを諦めるとその様子は外部に明瞭に見えるようになる。ある人を指して「家業を諦めて投げてしまっている」と苦労して経営を再建した長老が述べたことがあったが、指摘された人のビジネスは時の経過が良いように作用せずにいる。粘りとか執念は我慢の気持ちを大きく育てる。そしてその執念は暗闇のなかから生きていく新しいビジネスの在り方を見いだす力を育てる。「苦しいときこそ我慢」であり、辛抱は世の適者なる人と企業をつくりだす。


記事目次本文一覧
HOME
Copyright (C)2006 株式会社日本計量新報社. All rights reserved.