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日本計量新報 2008年5月25日 (2725号)

計測はソリューションシステムの形式をとることによって完結する

情報は国家が誰よりも保有していることになっている。情報集積機能とその体制がそのようにできているからである。
 米国大統領のもとには、毎日世界のさまざまな出来事のすべてを掌握した上で必要事項が文書となって届けられ、それによってその日の行動が変わることがたびたびある。このような仕組みになっていれば、米国大統領は情報の把握とそれへの対応で間違いを起こさないのではないかと思われるが、事実はさにあらずで、ジョージ・ブッシュ大統領はミシガン州を襲った台風カトリーヌがもたらした災害への救援と復興の対応に失敗して大統領の威信と信用を失墜させた。
 日本の例では、村山富市首相は、正月明け未明に発生した阪神淡路大地震の際、NHKなどテレビが生中継しているにもかかわらず、真っ当な対応ができずに内閣の無能さを露呈させてしまった。
 日本ではその後、危機管理対応の仕組みをつくったものの、その訓練をしてみると、危機管理担当の役人の意識が低すぎて実際には機能しないことが分かってきている。だから、我々は役所が行う危機管理に頼ることができないことを前提に、災害への危機管理をしなくてはならないことを教訓とすべきである。情報あるいは情報のようなものがあるからそれへの対応は大丈夫だと考えてはならない。ブッシュ大統領と村山首相の台風被害や地震被害への対応を見てきた私たちは、日頃からそのようなことが起こったらどのように行動すべきかを考えてシュミレーションをしておかなくてはならないということを肝に銘じなくてはならない。
 同じようなことで、道志川の激流に飲まれて流されるキャンパーたちを救えなかった消防隊のようすをテレビが映し出しているのをみると、消防隊は救助のための体力強化訓練をするよりも、さまざまな危機に対応する体制としてのソフトウエアをつくりだすことを心がけなければその機能を果たせないことがわかる。身体を鍛えることは大事だが頭を鍛えること、柔軟な思考方法の鍛錬をしなければ危機管理はできない。
 企業でもその他の組織でも、組織体の構成員のさまざまな活動は多様な形での報告によって、その組織が機能しているかどうかが検証される。企業であれば活動のようすは売り上げの情報に集約されることになるが、それだけでは十分ではなく、売り上げを実現する方法や手段その他も報告され、それを組織が把握することによって、過去の行動を未来の行動につなげることができる。
 計量計測機器産業においてサービスやシステムなどのビジネスをソリューションと称しているのは、原因を把握して問題があればそれへの対応の仕組みをつくり未来の製造などに反映させる仕組みのことである。温度分野、圧力分野、質量分野に限定した計量ソリューションシステムがあるし、いくつもの測定要素を組み合わせたソリューションシステムもある。
 過去の行動から学んで未来の行動につなげるという意味では、計量ソリューションシステムは、ブッシュ大統領や村山首相が失敗した自然災害への対応の間違いを犯さないための、計量計測分野における危機管理システムでもある。計量計測とは科学的に物事を知ることであり、知ることはそれに対応することを目的としているから、どのような計測も結局はソリューションシステムの形式をとることによって、それが完結する。


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