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日本計量新報 2008年11月9日 (2748号)

企業を発展させる技術開発は狙って実現を図るもの

産業の停滞を突き破るのは技術革新だとシュンペーターは述べ、これをイノベーションと呼んでいる。経済全体としてはこの理屈はそれなりに当てはまるため、人はしたり顔でイノベーションを論じ立てる。しかし個々の企業にイノベーションが起こるのかというと、大概の企業はイノベーションの蚊帳の外にあって世の中の動きから置いてけぼりになる。
 電気、ガス、水道など一般家庭向けの計量器と、その他の計量計測機器、とりわけ電子化とかコンピューター化という言葉をそのまま上のせできる計量計測機器の技術の変化を比較するとその差は大きい。ガスメーターなどに安全装置が取り付けられたことは大きな変革ではあるものの、その全体を比較すると技術の変化の度合いは電気、ガス、水道用のメーターの側がはるかに小さい。計量法の規定にしたがった計量器のなかでも、技術の変化が大きく進んだ器種もあれば、技術の変化が表面的には目立たない器種もある。需要家が少数で限定されている器種に技術の変化が少ない傾向がある。
 技術革新が大きく進んだからといってその計量計測機器の市場がふくらむことにはならないのが、技術革新の成果の痛いところである。技術革新が新市場を創り出すような働きをすることが望ましい。
 質量計を例にすると、料金をデジタル計算するハカリが登場して新しい市場が開拓され、この延長上に店舗の管理に直結するさまざまな製品やシステムが開発されている。また、体脂肪を推定するハカリの登場で、体重測定と体脂肪測定とが組み合わされるようになり、この方面の市場が拡大された。幾つもの個別ハカリを作動させ質量の総合的な組み合わせによって一定量の質量を計り取る組み合わせハカリは、農業用として開発されたのち、多くの産業方面で使われるようになっていて、市場規模も大きい。部品の数を精密に計ることができる計数はかりは画期的であったが、普通の電子ハカリにコンピューターの演算機能を盛り込むことでこれが簡単に実現するので特殊性が薄れがちである。
 計量計測機器の技術革新を推進することは、企業の発展にとって大事なことである。しかし、それが販売面で有利に作用したり市場を拡大したりするなど、新しい市場開拓につながらなければ意味がない。
 企業の技術開発は事業と不可分であるから、何に役立つかという目的をしっかりと持って、新技術・新理論の開発を行わなくてはならないのである。


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