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日本計量新報 2009年8月2日 (2784号)

皆既日食がもたらす天文ショーと地球の平和

太陽が地球の環境を決める。その太陽が注目をあびた日が09年7月22日であった。奄美大島など日本の一部では、地球から見ると月が太陽に正対して太陽を丸ごと隠してしまう皆既日食が見られた。インドの一部や上海でも皆既日食が見られた。NHKテレビが中継した硫黄島での皆既日食の模様は圧巻で、皆既日食のまさにそのときに太陽から雷のような閃光が飛び出している姿が映し出された。その閃光が飛んで太陽に戻るまでの長さは地球の数個分に相当するということで、規模の壮大さに驚愕(きょうがく)する。
 太陽の活動は11年周期で変動する。産業革命時にアムステルダム川が凍結した当時は14年周期であった。地球温暖化の原因は、石油を燃やしたときに発生する二酸化炭素(炭酸ガス)が地球を毛布のように包んでいるからだとして、原因を取り除くために二酸化炭素の排出を抑制する国際的な取り決めと実際行動を模索している。しかし、現代の産業は石油エネルギーに依存しているため、理念と実際が乖離するジレンマがある。
 長野県と岐阜県の境、乗鞍岳の山頂付近にあるコロナ観測所では、レンズの先に月と同じように作用する装置を付けて太陽とコロナを観測している。コロナの観測を通じて太陽の温度を特定するなどの成果をあげてきた。しかし、雲がかかれば乗鞍岳のコロナ観測の望遠鏡は機能しない。3つの望遠鏡を積んだ太陽観測衛星の「ひので」が同じ機能を果たすようになったので、乗鞍岳の望遠鏡は09年秋で運用を終了する。ちなみに、宇宙望遠鏡の草分けは米国のハッブル望遠鏡であり、宇宙の謎に迫る数々の発見をもたらして現在も活動しているが、機能不全寸前であったため、5回目で最後となる修理が施された。
 宇宙を知るための基礎を築いたのはアインシュタインである。物質は時空を曲げる。その曲がった時空を物質が運動することが重力である。アインシュタインは一般相対性理論によって重力の正体を突き止めた。物質があると時空は必ず曲がる。一般相対性理論では、非常に重い物質の周りでは重力が大きくなっているので周囲の空間が曲がる。そのため光は直進せずに曲がって進む。アインシュタインが1916年に発表した一般相対性理論を実際に確かめる作業が1919年5月29日になされた。英国の天文学者アーサー・エディントンはアフリカのギニアでこれを確かめた。09年7月22日の皆既日食でも水星や金星が肉眼でもみえたが、アーサー・エディントンは、皆既日食中に撮影した太陽の近くにある星の位置が本来の位置とずれているのを確認、そのずれの角度が一般相対性理論による方程式によって計算される値と合致した。
 アインシュタインによる質量と速度(光の速度)とエネルギーの関係式、すなわちE=mc2は、質量とエネルギーは互いに変換されるものであることを示す。ロケットが速度を上げようとして使うエネルギーはロケットの質量を増やすように作用する。推進力のエネルギーがロケットの質量に変換されロケットの質量は限りなく増大する。ロケットにどんなに強大な推進力を与えてもそのエネルギーは質量に変わるように作用するのでロケットは光の速度に到達できない。「質量保存の法則」と「エネルギー保存の法則」は物理学の基礎をなす基本法則であるにもかかわらず、アインシュタインのE=mc2の関係式の下では、従来は全く別物であると考えられていた質量とエネルギーが本質的に同一のものであり互いに変換されるものとされる。世界観を一変することがアインシュタイン理論の真骨頂である。
 物質の崩壊が巨大なエネルギーを生み出すという理屈から原子力の利用に道が拓けた。二酸化炭素を排出しない原子力をエネルギーとして用いることの可能性は大きい。太陽のエネルギーを利用する太陽電池パネルの改良や水素からエネルギーを取り出す方式も推進されよう。二酸化炭素を排出せずに必要なエネルギーを人のものとするための取り組みがなされている。

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