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日本計量新報 2009年9月13日 (2789号)

人の苦役や単純な頭脳労働作業を解放する計測機器の開発

1946年に米国陸軍軍需部の後押しで完成した砲弾の弾道計算用の電子計算機「エニアック」は、1秒間に5000回の加算能力を持ち、以前は20時間かかった弾道表を半秒で計算できるようにした、最初の電子計算機であった。
 複雑な構造を持ち、記憶容量はわずかであったにもかかわらず、この「エニアック」は北アイルランド生まれ(1914年)で、ケンブリッジ大学などで応用数学を学んだ科学史家サミュエル・リリー(Samuel Lilley)氏が第二次世界大戦中のほとんど全期間を費やして従事した弾道計算の仕事を、5時間か6時間で処理するものであった。このことを同氏は『人類と機械の歴史』のなかで指摘し「ひどく口惜しかった」と述べている。
 サミュエル・リリー氏は、その著書で奴隷制を容認することを前提にしてそれはあり得ないことだということで規定した「機械が命令の言葉か知的な予見によって自分自身で働く」ということが、現代の社会ではオートメーションとして実現していると述べている。
 一般的な意味でのオートメーションは、現代の商品生産場面では当たり前のことになっていて、このオートメーションの出来の善し悪しが商品の性能や品質などを決定づける重要な要素となっている。
 オートメーションの動作の計画や動作の実行の場面では計量計測が基礎となっている。計るためのオートメーションでは計量計測が主役になり、その他の機械仕掛けや電子仕掛けが応援装置として機能する。オートメーションと計ることとはほとんど一体になっている。これにコンピュータの機能が組み込まれて、オートメーション機能が飛躍的に能力を増大しているのである。
 銀行における、お金の管理と連動するキャッシュディスペンサーなどは、身近にある便利で驚異的なオートメーションシステムである。
 居眠り運転による追突事故や、カーブを曲がりきれずに転覆するなどの事故が頻発するのを問題視すると、自動車通行を安全かつ快適にするためにオートメーションシステムを推進するという課題が持ち上がる。機械が人を傷つけ、人の意のままにならない不都合を克服するシステム構築は、これから積極的に推進されることになる。電子通信と計測機器と各種センサーを上手に組み合わせると高速道路のセミ自動運転が実現する。今あるオートクルーズコントロールシステムほかの革新によって、自動車運行が安全かつ快適になるだろう。
 計量すること、計測することを仕事としてきた分野では、計りにくいものを手軽に計れるようにしてきた歴史があり、今後も発展していく。
 ごく簡単な例をあげると、ネジなどの部品を質量比例で計数するカウンティングスケールがある。不揃いのピーマンなどを一定の質量にまとめてパックするハカリがある。空気中のみえない成分をみえるようにする、分析機器がある。分析機器も計るという概念でくくることができる、計測機器である。
 計測機器はシステム化しており、その延長では計測機器とオートメーション・システムは一体不可分である。ソリューション・システムを直訳すると、「課題解決装置」である。計測と計測機器とそのシステムは、すべてがソリューションシステムであり、同時にオートメーション・システムである。そのように物事を考え規定すると、取り組むべき事柄がいくつも浮かびだす。
 オートメーション・システムが進展すると、過去の人の働き方が、大事なことではあったかもしれないが、無益に思えて「ひどく口惜し」い思いをする(サミュエル・リリー氏の述懐)ことになる。
 単調な人の頭脳労働は、パソコンの能力の向上によって人からパソコンに移されている。計測機器を核心としたオートメーションシステムの開発によって、人の苦役を機械に移行することが追求される。

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