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日本計量新報 2010年8月29日 (2835号)

計量行政は場当たり的な考えでやってはならない

最近の政治情勢は、政治家の思いつきや場当たり的な考えで動いているように思えてならない。
 菅直人首相は、消費税は向こう4年間は値上げしないという去年夏の衆議院選挙の民主党選挙公約(マニフェスト)を覆して、消費税を5%から10%にする考えを突如として口にした。支持率回復を狙った民主党の党代表選挙で圧勝して間もなくの発言である。日本国首相になるという秘めた思いが実現した高揚感に流され、世論調査での民主党と新内閣への支持率60%という状況に慢心した結果であろう。
 この軽はずみな発言は、7月の参議院選挙での大敗、民主党参議院過半数割れの原因となり、後に党大会で首相自ら陳謝することとなった。

 首相になった菅直人氏は、慢心して「消費税を10%に上げる」と発言し、その後も日本の木材生産について思慮に欠ける発言をした。ドイツの森林行政施策を手本に挙げて、機械が入るための道路を整備すれば、国土面積の70%を森林が占める日本は輸入木材に頼っている状況が変わる、という内容である。
 山あり谷ありで険しい地形の日本の森林は、ドイツのように機械を入れられる環境ではない。環境を整備するにしても人や機械や資金がない。仮に道路をつくって機械を導入しても、費用対効果が決して大きくないことを知らない者の発言である。
 官僚か学者か誰かの「レクチャー」を鵜呑みにして、深く考えずに発言したのであろう。新しく習得した知識をひけらかすかのように、その真偽や影響を考えずに発言していたのでは、思慮の浅い人間と判断されても仕方がない。

 太宰治は小説『ヴィヨンの妻』の中で「人間三百六十五日、何の心配も無い日が、一日、いや半日あったら、それは仕合わせな人間です」と述べている。これと対照的に、慢心して軽はずみな発言を続ける菅直人首相の姿に、我が身を映して自分を見つめること、私たちの周辺を見つめることが大事である。

 計量計測の世界では、ほとんど計量の知識もないまま組織を動かして、組織を破綻に導くという状況がいくつも発生している。無責任な組織の長と無知な組織運営者、無関心な組織員という3つの要因が重なると、破滅への道のりを歩むこととなる。

 地方公共団体の税収は、良いときの7割から8割程度にとどまる。税収が落ち込んだ分、人員や業務量を削減するか、行政機能そのものを削除して対応している状況がある。組織を残していれば、熱意や知識がなくても何とか計量行政が実施できるが、業務担当者がいなくなっては、完全に計量行政、計量の知識が消えてしまう。いま、計量行政機関の組織と人員を残すことが計量行政にとって最大の課題であるといえる。
 変化する経済状況に流されて場当たり的に組織を消してはならない。投げ出したり、うち捨てたり、いい加減にしては駄目だ。これまで実施してきた計量行政は国民にとって必要なものであるから、しっかり維持しなければならない。 

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