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日本計量新報 2010年9月26日 (2839号)

外れがちな未来予測と仕合わせ実現のための備え

パソコンが壊れて、内蔵のハードディスク内のデータが消失し、金額に換算すれば相当額におよぶ損失が生じる事態がたびたび発生する。損失は、時に1千万円あるいは1億円を超えることがある。
 不足の事態に備えて、外付けのハードディスクなどにデータを保存することは、パソコン利用における「常識」である。少しの手間や煩わしさがあっても、業務として実施することだ。そのうちにと思いながらついつい後回しにしていると、予期せぬ事故で大金を失う事態に陥る。パソコンの思わぬ故障にも慌てない準備は、予測困難な未来への安全保障といえる。

 会計から商品管理、インターネットを利用した商品やサービスの売買等、あらゆる職種の業務で、パソコンの使用は必要不可欠になっている。機能も進化して小型化が進み、特別な技術操作を可能とするソフトウエアもデータにしてパソコンに保存することができる。
 データとなった技術は、技術先進国の汎用技術を開発途上国に伝搬することにつながる。最近では、伝搬先における教育や文化といった社会基盤の水準に左右されず、技術が持ち出されるようになった。森の生活をしていると思われた国に立派な工場が建ち、商品が世界に供給されるという状況が、世界のあちこちに見られる。
 安い労働力と一般化した技術によって大量生産が実現すると、高品質・高価格である日本の商品は、市場での立場を大きく落とすことになる。
 中国は実質的なGDPで日本を抜いている。日本は世界第3位の経済規模の国である。2位から3位に下ったのち、将来的にはインドや他の国々に追い抜かれることになるだろう。1億3千万ほどの人口で、これの10倍近い国と経済規模を争うことはできないし、人口の多い国に追い抜かれることは必然である。米国も日本と同じような経緯によって、経済規模が中国に及ばなくなることが予想される。
 技術発展の基礎的要素となっているパソコンの機能向上は、演算回路の高集積化とあいまって、いまなおムーアの法則を過去の遺物にしないだけの勢いがある。半導体の演算チップは、技術開発により小型化がさらに進行し価格も安くなることが見込まれる。

 技術という視点で、未来を予測することはある程度はできる。しかし、半世紀前にどれだけの人が、パソコンが発展しインターネット社会が来ることを予測できたか。同様に、デパートやスーパーなどの大型店とコンビニエンスストアが、売り上げや地位が逆転することを予測できただろうか。
 繊維、石炭、製鉄、電機、自動車と発展してきた日本の産業の次の主役は何であろうか。産業の発展は、技術革新すなわちイノベーションによってもたらされる。コンビニの運営と規模の拡大は、パソコンの機能向上と連動している。
 人は、未来を予測するのに現状の技術と社会環境を土台にしがちである。そのような方法での未来予測は、ほとんどが外れる。企業の未来予測にしても同じである。
 未来予測と、個人や企業の在り方が良い方向で結実していれば仕合わせである。現在の仕合わせが、その先にも同じように続くことは皆の願いである。外れがちな未来予測を、出来うる限りの備えで補い、仕合わせな方向で帳尻合わせができるように奮闘したい。  

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