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日本計量新報 2011年4月24日 (2867号)

自らを省みることが更なる向上心へと繋がる

テレビのニュース番組の中で、東京電力福島第一原子力発電所の事故に関して「ベクレル」という単位が出てきた際、キャスターが「シーベルトのことを覚えたらベクレルが突然でてきた。これは一体何なんだ」と人を攻撃するような口調で言葉を発する場面があった。
 自分が知らない事柄や言葉が出てくると、自分の知識不足を棚に上げて全て他人のせいにする。マスコミ関係者に多くみられる傾向である。一般のテレビやラジオや新聞に携わる人間は総合的に広く情報を取り扱うが、その一方で、専門分野を深く学ぶ機会が少なく知識に乏しいという面もある。「私はシーベルトとベクレルの関係がよくわかりません。誰か教えてください」と言えばいいのに、謙虚さに欠ける言動は他人への攻撃となる。

 『日本計量新報」では、放射線に関係する単位のことを解説した特集を組み、あわせて地震や放射能に関係する諸事項も紹介している。新聞に掲載した記事は『計量計測データバンク』のデータベース「東日本大震災 特集と関連記事」(http://www.keiryou-keisoku.co.jp/kiji/2011sinsai/2011sinsai_top.htm)に盛り込んであるので、常時閲覧することができる。
 シーベルトとベクレルのことを簡単に説明すると次のとおりである。
 「シーベルト(Sv)」は、放射線による人体への影響度合いをはかる物差しである線量当量を表すSI単位。放射線を安全に管理するための指標として用いられる。「ベクレル(Bq)」は、放射性物質が放射線を出す能力を表す単位で、ある物質に含まれる放射性同位元素が1秒間に壊れる数を示す。1ベクレルは、1秒間に1つの原子核が壊変することを表す。
 2つの単位の関係は、「雨」に例えるとわかりやすい。空から単位時間に降る雨粒の数がベクレル。雨が当たったことによって人が受ける影響がシーベルトになる。
 ベクレルの値に、放射性物質の種類ごとに異なる実効線量係数という値をかけると、ベクレルをシーベルトに換算できる。
 放射性物質にはさまざまな種類がある。放射性物質によって、放出される放射線の種類やエネルギーの大きさが異なるため、人体が受ける影響も異なる。このため、放射線が人体に与える影響を考えるには、ベクレルの大小を比較するのではなく、放射線の種類やエネルギーの大きさ、放射線を受ける身体の部位なども考慮した数値、シーベルトで比較する必要がある。

 シーベルトもベクレルも、以前から使われていた単位でいきなり登場したものではない。いきなりと思うところにニュースキャスターの浅はかさと思い上がりが露呈されている。自分の知識不足を顧みず、何かのせいにして済ませるのはつまらない人間のすることである。社会的に高学歴なエリートと言われる職に就いているのであれば、奢ることなくより謙虚な姿勢で物事にあたり知識習得に励むべきである。
 慢心せず、己を省みて反省することが更なる向上心へと繋がる。

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