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日本計量新報 2011年7月24日 (2879号)

組織の長には、全社員に目的と理念を徹底し実現の段取りをつける責任がある

 組織は、全構成員が互いに努力して、できうる限りの成果を実現し、皆で幸せになることを目指して行動している。組織がモノを作って売ることで成り立っている場合、成果を出すためには、人と社会が求めるモノを生み出さねばならない。性能がよくても、価格が高ければ他社の製品が選ばれるので売れない。性能と価格が顧客の好みに適合するように上手にモノをつくることは容易ではない。


 それまで市場になかった商品が新規に開発・製造され、消費者の心をつかんで新しい市場が生まれれば、開発企業に利益をもたらす。やがて、その市場には競合企業が登場して開発者利益は減じる。こうしたことの繰り返しが市場である。市場の変化が経済を活性化させて世の中が進む。


 明治期は、お蚕(かいこ)と製糸そして絹織物産業が日本の振興産業であった。
 その後、時代の移り変わりと共に、軽工業から石炭と製鉄、重工業、化学産業、電機産業、自動車産業などが大きな地位を占めるようになった。一次産業、二次産業、三次産業といった分類でいっても、かつては農林水産業といった一次産業が国内総生産の多くを占めていたが、現代の日本ではサービス産業などが含まれる三次産業がその半分を超える状態にある。
 常に変化する世の中に適応して、努力しなければ、市場で生き残ることは難しい。

 世の中には、モノのつくり方、売り方、儲け方などを、こうすれば上手くいくと理論を述べたり書いたりする個人や組織がある。学校で成績が良かった者ほど、こうした存在とそこに登場する理論に頼ろうとする。しかしその内容は、「原理原則の実行の貫徹が基本で、そこから外れてはならない」と説いても、実際にどのように良いモノをつくって、つくったモノをよく売り、結果としても儲けをだすのか、という具体的な事柄にまでは踏み込んでいない。頼りになるように見えながら当てにならないのが現実であるから、結局は自分で考えて自分で頑張るしかない。


 企業など一つの組織が皆で幸せになるために皆で努力し頑張ろう、と考えるのは当たり前であるとしても、そのために皆で努力するための方向性と成果をあげるための用意周到な準備がなされていなくてはならない。虎の巻のようにみえて実際にはそうではないのが理論の現実であるから、踏ん張りの肝心要は自分自身にある。

 物事が上手くいくためには目的を徹底的に確認することが何よりも大事である。見えないものは忘れる。千両箱を床下や木の下に埋めても、人はいつの間にかその千両箱のことを忘れ、ついには思い出さなくなる。
 個人も組織も常にその目的や理念を意識できるようにしていなければならない。当然知っていることだろうなどということでは極めて危うい。日に何度も礼拝の儀式をする宗教があるが、こうした作法には人々を心身ともに帰属させる目的が少なからずある。


 企業は、事業が上手くいくようにするために従業員の教育や訓練をする。その成果を、報告書の正否で判断することが多いことであろうが、そのようなことをしていると学校のお勉強の真似事になってしまい、企業の目的実現とは無縁の努力になりかねない。教育の要諦は、企業の目的や理念を徹底して従業員の意識に浸透させることである。企業の目的や理念と無縁のところで従業員がてんでバラバラに考えて、勝手に行動していることが少なくない。
 企業や組織の長は、目的や理念を明確にし、その目的や理念を実現するための幾重もの段取りを用意して、従業員に行動を指示すべきである。そうした段取りを考えるのは組織の長がすべきことでありる。


 目的と理念そしてその実現の手段や方法を持たない組織は機能不全をきたす。長がしっかりしている組織は良い方向に進む。長の責任は重い。

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