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日本計量新報 2012年3月11日 (2908号)

震災への日本人の共通理解

山を削って高台に家を建てる。山から出た土で平場を盛り上げて津波対策とし、旧来の中心市街地を再興する。防波堤は今以上の高さにして強さも増す。魚市場など海辺の漁業施設は津波のときは水没を前提とし、人は避難用に高い鉄塔に登って難を逃れる。防波堤を越えて押しよせる津波には高くて頑丈なビルに登って非難する。

これは2011年12月22日に策定された岩手県山田町の復興計画の概要で、旧来の鉄道と国道の位置を変更しない事を前提にしたものである。釜石市でも「撓(たわ)まず屈せず」と題して同じ日に復興基本計画をだした。釜石市の復興計画は、産業振興を強く意識しており、堤防は大きな河川敷にあるような土盛りも考えており、津波被害を受けなかった市の内陸部に街の重心が移行する内容になっている。
 山田町、釜石市ともに復旧期、復興期、繁栄期へとつづく期間を10年としている。時間がかかっても必ずや復興を遂げるという強い意志が込められているように思う。
 2011年3月11日午後2時46分、三陸沖でマグニチュード9・0の巨大地震が発生してから1年が経つ。2012年3月6日現在の警察庁発表では、東日本大震災における死者は1万5854人、重軽傷者6025人、警察に届出があった行方不明者3272人である。自動車の生産工場、電気機器などが大打撃を受け、日本経済の規模が縮小する事態となった。被災した地域の産業活動と日本経済が密接に連動していることを物語っている。
 地震直後は、日本全体が被災地の悲惨さに息を飲んだ。テレビは民間のコマーシャル放送を全て止めて、地震関連の特別報道に力を注いだ。それが今はどうであろうか。被災地の状況を伝える報道は極度に減って、復興支援活動も停滞状況にある。総理大臣を始めとした政治家、行政担当者が被災現場にどれだけ足を運びその地に立って、そこで物事を考えたことであろうか。

 放射線被害の巻き添えの心配もあることから、世界の人々が福島原発に寄せる注目と関心は高い。日本には、現在17カ所54基の原発がある。このうち2基が稼働しているが、東電柏崎刈羽6号機は12年3月26日に、北電泊3号機は遅くとも5 月下旬には、定期検査のため停止する。この間に他の原発が再稼働することは考えにくく、日本の原発は一基も動かない状態になる。

 国の原発関係の機関は原発の耐久試験のことを「ストレス・テスト」と称し、マスコミもまたこれをそのまま使った。英語などの音をそのままカタカナ言葉にした「日本語」は受け取る人によって解釈が異なる場合があるので、コミュニケーション手段としての言葉としては失格である。事実をあいまいにしたい心の現れかもしれないが、東日本大震災で日本が受けた大きな被害は無くなるわけではなく、未来まで影響を受けるのは明かである。
 三陸津波被害、福島原発事故など東日本大震災によって日本が受けた傷と、負うべき負担に対して日本人の共通にして正しい理解が求められる。

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