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日本計量新報 2013年4月14日 (2960号)

ハカリの定期検査を実施する地方計量行政は半壊状態にある

「むかし軍部で、いま官僚」とは通産省のキャリア官僚であった堺屋太一氏が述べている言葉であり、不敗神国日本ということで蒙古来襲をしのぎ、ロシアとの海戦で勝利した日本は戦争に負けない国だという思いに完全支配されてモノを考えなくなった軍部の暴走が敗戦をもたらした。そのあとで軍部と同じ体制を敷いているのが官僚体制であり、この国をどうするか、国の経済をどうするか、国民の生活をどうするか、ということを飾り言葉にして、官僚が官僚機構の制度を維持してうまく生きていくことを目的として、これが運営されていると説くのである。これは中央官庁にとどまらないこともまた事実である。
 ずいぶん前のことになるが地方公共団体の職員として最高級の幹部職を勤めて退任し、民間機構で働くようになった人物が登壇して講演する場が設けられた。その人は一時間半にわたり、してきた仕事の内容をつぶさに話したが、講演を聴講した幾人もの企業経営者がその仕事とその考えはすべて要らない、そのような人物と組織のために税金が使われていることがわかったのは皮肉なことだがそれが収獲だったと述べた。
 横文字が肝心な箇所に使われて、それがずらりと並んでいたり、勇ましい漢語が羅列されている文章のほとんどは嘘であり、嘘を繕うための虚飾がカタカナ文字であり漢語であると思えば外れは少ない。自分で意味が判っていないカタカナ文字を日常生活の会話に持ち込む人がほとんどである。言っている当人に意味が判らないのだから聞いている人にはなおさらである。上記の講演者とは異なる、ある地方公共団体の幹部職員の話はローマ字ばかりであった。住民、市民を相手にそのようなうわずった言葉を並べていて大丈夫なのだろうかと思うのであるが、税は入ってくるしそれを使わなくてはならない、どのように使おうか、と空想に似た身勝手な構想を立てることで地方公務員の能力が計られるのだから、地方公共団体はますますおかしくなる。
 そのような浮き世にあって地方公共団体の計量行政の壊れ方の状態は半壊状態に留まっていればよいほうだ。ハカリの定期検査の実施割合はせいぜい5割だという世評に対して、まさか嘘だろうと思って確かめた地方公務員がいた。この人は昔の定期検査の状態を知っていて退職間際に計量検定所に勤務したのであるが、その世評はさまざまな旧知の仲間に確かめたところ本当だった、と述べている。定期検査予算が半減すればその程度の数だけしか検査ができない。1965(昭和40)年の初めころまで無料だった定期検査が有料になってもその内容は実費に遠く及ばない。地方計量行政予算を削減するときに定期検査予算を減らさずに職員給与などを減らすことができれば、定期検査の実施率の悪化を食い止めることができるかもしれないが、そうはいかないようだ。年間に3%か5%の関係費用が減ると10年間では大きな減額になる。そのしわ寄せを定期検査機関や代検を委託した先に押しつけて誤魔化している状態は卑怯なことである。上記のような要らない仕事をもっともらしくしている職員が幹部になるという実態と連動する地方計量行政は半壊状態にある。

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