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日本計量新報 2013年10月27日 (2985号)

持ち場で全力を尽くすことが人を成功に導く

『日本計量新報』に「私の履歴書」という連載欄があり、ここには企業家、計量管理業務に従事した大企業の社員、計量器企業の従業員、計量士、計量公務員などが登場して、その半生というよりも一生を綴っている。この新聞で一番の読み物となっているのは、人の人生の変遷の妙が如何にもおもしろく、また読者の人生と書き手の世代の社会事情が重なり合っているからだろう。その人々が初めからその仕事に就くという思いで生きていたのではなく、何かのはずみでそこに居るようになり、全力で生きていた末の成功の姿がある。
 ある人は陸軍幼年学校から陸軍士官学校にすすみ、終戦によって郷里のハカリ企業に職を得て、その延長で高松市から仙台市に移住してハカリ企業の仕事を発展させて現在では東北地方で一番の規模で地域貢献をしている。またある人は新制中学校を卒業後少し間をおいて職に就くために上京し、仕事をしながら夜間高校、夜間大学を終えて、その後ハカリ企業に転職して活躍した。ほかの人々の人生経路もこの欄で見ることができるが、どの人もその職に就こうとしたのではなく、何かの縁でいつしかそこに居るようになった。これは旧制の中学高、高等学校、帝国大学を経た人も同じで、人生の大半をガス関係の事業に従事して成功をおさめている。
 世の中と人の親は浅はかであり、まだ何も考えていない、何も知らない小さな子供に対して、「大きくなったら何になりたい」と聞く。親はいい学校にいって、安定性のある世に聞こえた企業ほかの職に就くことを希望する。子供はテレビでみている範囲の職場とか仕事だけを思い描いて、その範囲がやりたい仕事になる。
 松下幸之助氏は人は自分がしたい仕事に就ける人は10人に一人くらいだ、そして、その人がしたいという仕事と同氏が観察する向いた仕事とは別のことが多いと述べる。学校で習うことよりも社会で覚えることに大事なことがあるのは同氏の経歴が物語る。高等教育の場では法律学を教え、経済学を教え、工学を教える。企業経営に経済学や商学の知識は大事であると思われるが、この方面のこまかな知識がなくても確実に稼ぎ、儲ける才能を備えている人が大勢いる。そのようなことは別にして、人はいまいる持ち場で全力を尽くして奮闘することが何より大事であるようだ。そのことを『日本計量新報』の「私の履歴書」に登場したすべての人々が身をもって示している。

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