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日本計量新報 2014年6月8日 (3013号)

ニュース報道の舞台裏と見過ごせない計量事情

ある商品としての物品を買うにあたって、限られた時間で調査して一番安いのを買って、これでよし、と満足する。調査範囲を広げて時間を費やして調べるとそれよりも安いのがある。調査方法と調査時間が情報の内容を決める。
 情報を次のように説明する文章がある。@あるものごとの内容や事情についての知らせのこと。A文字・数字などの記号やシンボルの媒体によって伝達され、受け手において、状況に対する知識をもたらしたり、適切な判断を助けたりするもののこと。B生体が働くために用いられている指令や信号のこと。C(情報科学での用法)価値判断を除いて、量的な存在としてとらえたそれ。
 情報の定義は観点によって変わるので固定的に考えてはならない。ある大学では数学と情報を一緒にした学科があり、ここでの情報とはコンピュータを使うことのようである。それで数学科である。
 テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などは、ニュース・情報や知識などを、電波やインターネットの電子通信あるいは紙への印刷などによって伝える。現代の人はこうした情報によって、自分の考えを整備して物事に対処している。人はニュース報道によって、その日の、あるいはその週の、その月の、その一年の世のなかの出来事を伝えられ、その伝えられた内容によって世の中を理解する。図書などによる知識を習得する習慣がない人は、ニュース報道とその解説を受けて知識の世界あるいは思考の状態を形成する。
 テレビ、ラジオ、新聞がニュース報道する舞台裏でもあるが次のようになっている。地方公共団体であれば都道府県庁の記者クラブに対して役所が定期的にだすニュースは、大体はそのままの内容で記事になり、ニュースとしてテレビの音声となって伝えられる。これは市町村でも同じである。そして中央官庁においても同じだ。国会記者クラブ、省庁別の記者クラブなどが、同じように行動し、ニュースがつくられて流される。
 犯罪報道は警察の記者クラブにもたらされる犯罪事例が「警察への取材によって」の前置きをつけられていて、そのまま報道される。別の場合にはニュースの出どころは証券取引所であり、証券取引所と連動した企業の発表の場であったりする。他にもこのようなニュースの出所がさまざまにあり、どこから出てくるのか地方紙では出産情報と死亡情報が身近で必要な情報として新聞に掲載される。世のなかには「報道機関」という言葉がある。先に示した事例に対応するマスコミを、そのように呼ぶことは皮肉にも当を得ている。マスコミ報道がそのようなニュース情報の出所に頼って、ありきたりにニュースがつくられる。
 人の思考は与えられて頭脳におさめられた内容に規定される。人が形成されるときに頭脳に押し込めるべき事柄はどのようであるべきか。これについては古典と呼ばれている書物を頭に浮かべる。日本では四書五経(ししょごきょう)であり、「論語」「大学」「中庸」「孟子」の四書、「易経」「書経」「詩経」「礼記」「春秋」の五経がそれだ。これらを読んで学ぶと古くさい人のようになってしまうが、ほかの古典と呼ばれる書物と併せ読むことによって人は教養を身につけることができるのであろう。「読み、書き、ソロバン」という言葉があり、読みとは読むことができるということだけではなく、四書五経の内容を身につけるということでもある。
 政治の世界では民主党が拍手喝采され、その前には小泉純一郎氏が首相として圧倒的な人気を誇った。いまは安倍晋三氏である。短い期間になぜにこのように激しく世論と政党支持が動き回るのか。その原因の一つは報道機関の同じ価値観による単一の報道の繰り返しにある。記者クラブで麻雀をして「何か情報をだしてくれ」と役所にだだをこねて、出てきた書面をそのまま記事にして新聞に載せ、スピーカーから記事内容の声が発せられるというのは堕落そのものではないのか。公共テレビ局と民報テレビはこのようなしくみをつくって報道するのが間違いが少なく、安定的なのである。
 計量計測の世界の事情をみると、ノーベル賞を受賞してもおかしくない科学者の文章に長さや距離を示すのに単位を接頭語のセンチで終わらせて、メートルをつけないのはどうしたことか。
 長さを表すにはその量の単位の名称か単位記号を示さなくてはならない。長さであればメートルの単位の名称か、単位のmをつける。質量はキログラムかkg、時間は秒かs、電流はアンペアかA、温度はケルビンかK、物質量はモルかmol、光度はカンデラかcdであり、この7つの量は国際単位系(SI)の基本単位である。
 温度についてはセルシウス温度が国際単位系(SI)組立単位のうち22個ある固有の名称とその独自の記号で表される単位の一つとなっており、名称はセルシウス度で記号は℃である。
 法律に決められて国と地方公共団体で権限をそれぞれわけあう計量行政の実施については、はかりの定期検査などは法律や法令の文面と現実が大きく乖離した実情があり、このことを国と地方公共団体が暗黙のうちに国民の目から隠しているような状態があるのはどうしたことであろう。はかりの定期検査を実施するに足る行政組織とその職員ならびにその体制を崩してしまっている地方公共団体が幾つもある。重要な計量行政事務であるはかりの定期検査の実施が、それをすべきこととして理解されていないか、忌避できることとして取り扱われていると疑われる。

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