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日本計量新報 2014年8月24日 (3022号)

STAP(スタップ)細胞発見の論文取り下げと実験計画法

蝉(せみ)の一生ということで、蝉は地中で7年を過ごし、地上にでてくると1週間の命であると、まことしやかに言われており、人の一生がこれになぞらえて語られる。ある研究者が蝉を卵から育ててその一生を観察したところ、蝉は地中に潜って幼児期を過ごす期間が他の昆虫たちと大して変わらなかった。早ければ1年、長いと5年ほどを地中で生活し、地上にでると1カ月ほど生きて、交尾をして子孫を残すためにメスは卵を産むのであった。
 万能細胞の1つであるSTAP(スタップ)細胞については、この研究を指揮する立場の人は「STAP現象は存在する」と主張し、現場の担当責任者は「STAP細胞はあります」として、「200回ほどこれが実現した」と述べる。科学誌「ネイチャー」に掲載した論文は画像に改ざんがあり、ねつ造も認められると、この研究をしていた国立系の研究所の検証組織が指摘した。STAP現象とSTAP細胞の実現は、その後の検証実験で明らかになることだから、一連の騒動はそれによって結末をみる。
 現場で研究の先頭に立つ女性の担当者は、右手にピペットを持ってテレビなど報道媒体に登場する。ピペットは精密に調整された体積計と考えてよく、手動で作業する場合には試薬などを計測しながら投入・混合して、その反応を観察する。どのような結果がでてくるかやってみようという場合には、試薬を投入する試験管などを大量に備えて、そこにさまざまな試薬を容量を変えて投入する。このための試験装置は30年も40年も前からつくられており、いまの装置はコンピュータと連動させて、データを取りながら巧みに動かす。
 ここで思いを馳せることは品費工学の創始者ともいえる田口玄一氏(博士)が健在ならば、一連の混乱にどのような処方をするか、ということである。田口博士は統計手法を取り入れた実験計画法を提示、世の反響を呼んだ。生命科学の分野での実験はいつでも証明できる内容を備えていることが求めらる。この分野にタグチメソッドなど統計の論理を利用した品質工学の手法が備えられることを求めるのは夢のような絵空事であるかもしれない。しかしSTAP現象の仮説を立て、STAP細胞の実現を追い求めた行動は立派であったとしても、なかったことをあったこととして取り扱っていないことに願いを込める。常識をくつがえす科学実験は痛快である反面、仮説を「証明」するために、ない事実をあったこととして取り扱うことがあったとすれば、そこに働くのはどのような作用か要素であったのだろう。

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