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日本計量新報 2015年9月20日 (3073号)

事実が数として3倍の開きがでる原因と計量器の検定をめぐる思惑

人が集まって示威行動をすることをデモといっている。2015年8月30日に国会前に集合した人々の数をその主催団体は12万人と発表した。NHKは警視庁発表の数を4万人と伝え、その2つの数字を報道した。1960年安保のときに国会前に押し寄せたデモ隊の数が13万人であるからその規模は大きい。12万人と4万人のどちらの数が実態を示すものなのか、計数をめぐって多くの人は戸惑う。
 人が1つのところに集まるということでは大衆音楽の分野は政治にからむ示威行動を数の上でははるかに上回る。人気アイドルグループの音楽会は東京ドームを連日満杯にする。人気ロックバンドは幕張メッセの駐車場に20万人を集めており、これが最高の動員記録とされている。人の官能に訴える音楽の方が論理によって人の感情を高ぶらせる政治などの分野よりも直裁の効果があり、お金を出して音楽に人は集まる。
 政治の世界から爪弾きされた民主党の元総理大臣の2人は、国会外の示威行動の隊列に紛れ込んで存在を主張する。原発を推進した元総理と、陶器つくりをして死んだふりをした元総理の2人は、反原発を掲げて都知事選挙に登場した。物事への思いは時が経過すると変化することがよくあり、逆の立場に立ってしまうことは希ではない。国会への示威行動を誘発した政権政党とその補完勢力の思いはどこからきて、どこへ流れていくのだろう。このうちのいずれかの政党とその党首は、それをしたことは他人ごとであるかのように、憲法9条と連動する平和の在り方を真顔で説くはずだ。
 人の心はうつろうのであり、現在このように思いのままに軍事行動ができるようにすることを推進した国会議員はこのときの自分の行動を棚に上げることは間違いない。政府や役所がいうことなどは、どこかで誰かがささやいたことの延長にある。ささやきが論理になり政策という形になって、政治が動き国が動いていくのである。そうしたことの結末をみると、あの時の論理とそれに基づく政策は的外れであったことになることが多い。役所と政府が持ち出す論理には警戒しなくてはならない。人口減少のことが急に騒がれるようになったのは、税の値上げと連動しているように思われる。
 「検察は罪を重くしようとし、弁護人はそれをできるだけ軽減しようとする。一つの犯罪の状況、一つの法令の条文をめぐって、両者はそれを両極に引張り合う」と松本清張は短編小説『種族同盟』で述べている。この短編では無罪を勝ち取った弁護士が、真犯人であった被告に証拠を示されて恐喝されるという落ちが付く。小説の落ちのことは別にして、松本清張の言葉は示威行動の参加者の数が12万人と4万人にわかれる論理を示す。  
 計量して取引する行動に関係しても、売る側は目方を小さめに読もうとし、買う側は大きめに計ってほしい気持ちが働き、いつでも誤魔化されたように思う。計量器の検定のための器差判定をする検定官は、目盛りの読み方を公正中立の気持ちでおこなうのだという。計量器の製造者は、製造した計量器の器差が十分でなくても、せっかく造った物だから、そのままの状態で検定の合格に持ち込もうとする。こうした事実を語る元計量研究所の幹部職員がいる。

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