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日本計量新報 2017年3月12日 (3141号)

計量法で規定された計量士の業務と教養豊かな技術者の仕事

大手電機企業の経営の行方に大きな感心が集まっている。家電と電機関係は技術と社会の状況変化への対応がうまくいかなかったために苦況にあり、ある家電企業は台湾の投資会社に買われたが電機企業どうなるのであろうか。新しいビジネスを興すことをあまりせずに未来の市場を現在の延長としてだけ考えて横並びの事業をしているのが家電と電機企業であるようだ。

 企業は人によって運営される。事業にかかわってさまざまな部署に人は配置されて働く。企業では経営幹部となるべく採用された人が順をおって職場を替わり経営陣になる。そうした人々が物事を考えて行動した結果が家電と電機企業の現在である。これでうまくいっていたのが日本の企業であったが、技術状況と社会状況が大きく変化し市場がかわる時代になるとつまづくことが多くなった。官営企業のように運営されてきた日本航空がそのようであった。東京電力なども国との馴れ合いによって経営してきていて大津波の襲来があれば破損し暴走する原子炉によって日本を破壊する寸前に陥れた。原発被害がどのよう癒えるのか見通しがたたない。臭いものには蓋をするという対応がなされている。国民は事故と事件は収束したと考えさせられている。

製造業と流通業などでは事業推進をするためにさまざまな業務がおこなわれ、そこに管理業務も含まれる。管理業務は事業目的を達成させるためになされるものである。管理業務は企業の目的ではなく目的達成のためにある。管理業務の内容はさまざまであり、企業によっては品質管理業務は意識しても計量管理は品質管理に含まれると考えるか、あるいは計量管理を意識していない。

企業にいて品質管理業務あるいは計量管理業務に従事する人は始めからその業務をすることを目的に就職し働いているのではない。技術者としてあるいは現場業務に従事するなか、必要があって計量士の資格を取得したという人は多い。これらの人々は計量士の資格は持っていても計量士資格による業務は目的ではない。大企業の社長で計量士の資格を持っている人もいるし、通産省の計量課長時代に計量士の資格を取った人もいる。そのような人にとって計量士資格は業務目的達成の手段ではない。そのような資格を持っているということであり、計量士資格はその人の能力発揮の制約にならない。

そのような事情を踏まえると計量士資格を保有している人が計量士が計量法の規定の中で働ける業務の範囲を超えて広い視野を培い、新たに修得する技術と総合知識をもって業務に当たることは当然であり、そのように業務している人は多い。計測知識と品質への知識と技術と社会への総合知識を磨いて企業および社会の有益な働き手になるように努めている人を称賛する。

製造過程において所要の精密さを実現し適切な工程がつくられることによって事業目的が実現される。所要の精密さの実現とは、ジャガイモを計るのに金を計るのと同じ精密さを追及して要らぬ手間と費用をかけないことである。乳業メーカーでは製造の日付をごまかしたために企業の命を絶つほどの致命傷を負った。採水場所に毒物が混入したためにその時に製造した食品を回収した企業もある。不確かで不確実な行程と設備がもたらす損害への備えがなくてはならない。

東京電力は冷却用設備の予備電源を備えなかったということによって放射能による国土の汚染という惨事を引き起こした。監督する側も意識が欠落していたが地震と津波への知識を養っていた人が事故前に危険のことを関連の会議の場で指摘していたが考慮されなかった。これでよいのだ、何も間違ってはいないのだという原子力発電にまつわる電力会社と行政の不文律があった。東京電力は上高地への途中にある梓湖にある発電所の見学ができるようにしており、ここでは原子力発電所の宣伝をしていて原子力発電への批判を断固拒否する態度であった。原発事故と無縁ではない。電機企業は米国の原発設備会社を買ったことで手負となった。

計量士の業務は計量法との関連ではハカリの検査に限定される。限定された業務それ自体はかけがいのない大事な業務であり多くの計量士がこの業務に精励している。企業に勤務していて計量士資格をもって業務に従事する人のなかでは計量法による計量士業務を超えて仕事をするのが普通である。多くの計量士有資格者は教養ある技術者として仕事をしている。計量士の資格を保有している人ある人は電気主任技術者の資格をもっていて、それにかかわる業務を定年退職後もつづけている。インターネットで自身の業務内容を公開しているために東京や大阪に本社がある企業の工場の管理業務の依頼を受ける。自身では手が回らない状態にあるため仲間に業務を振り向けている。

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