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日本計量新報 2010年12月19日 (2851号)
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安心・安全な社会は計量行政の確実な推進でつくられる
ハカリの製造数の内訳をみると、体重計、料理用ハカリなどの家庭用ハカリが全体の8割を占めている。工業用ハカリは、製造数としては1割程度であるが、生産・出荷金額は8割ほどを占める。一般家庭向けなどに生活の用途として供給されるハカリは、製造数は多いが、一つ一つの価格が安価である。認知度が高い企業も、売上額の規模は案外小さい。反対に、工業用ハカリを生産する企業は、認知度が低くても売上規模が大きい。
日本社会では、一般に知られていないハカリ製造の企業が、思いのほか頑張っている。計量計測機器産業には、需要は多くないが世の中にはどうしても必要である計量計測機器をつくっている、大規模、中規模、小規模、極小規模の企業がある。大ひょう量で精密に計ることができるハカリを開発するなど、規模の大小にかかわらず、その技術力で頑張っている企業も少なくない。
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ハカリはメンテナンスしないと安心して使うことができない。
1999(平成11)年にハカリの検定検査、計量器の検定検査の業務(事務)を機関委任事務から自治事務に移したことは、物事の性質にそぐわない措置であった。この政策を実施したときの行政が、地方分権推進の勢いに流されて、時勢に乗ろうと判断したのだが、それを今指摘しても手遅れである。計量法上の重要事項が、計量行政審議会にかけられずに変更されたことを振り返ると、計量行政審議会そのものの存在にも疑問を投げかけなくてはならない。
なすべき議論をせずに、計量行政が機関委任事務から自治事務に変わったことを契機にして、地方公共団体の計量行政は様態を大きく崩している。
計量担当の行政職員が他の職務と兼任で1名いるだけという県が幾つかあり、職員に計量法と計量行政の知識がないという事実もある。行政当事者の知識や意識が欠如した途端に、商取引などにあたって、計量の安全確保がなされているかの事実確認ができなくなってしまう。このような、あってはならない事態が発生し、深刻な状況が年を追って進行している。計量の安全は社会の安心だと、「安全・安心」を掲げ続ける行政の人々の足下から、安全と安心を実現する意識とその体制が崩れているのである。
計量の安全が損なわれれば、販売者と購買者などの間に相互不信が生じて、社会がぎすぎすする。これは、社会の快適性を失うことで、社会的損失といってよい。計量行政の確実な推進に要する経費は、少額である。税金を有効に活用し、安全で安心な社会をつくることができる。
選挙のときに有権者の支持が得られそうな政策にだけ予算を計上して、計量行政を投げ捨てるなどという行為は「貧すれば鈍す」の典型である。計量行政職員は、計量行政の確実な推進に力を尽くすべきである。
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