「計量計測データバンク」web記事(寄稿、ほか)トップページ

「計量計測データバンク」寄稿、ほか
2023年


「計量計測データバンク」web記事 2023年
「計量計測データバンク」web記事 2021年
「計量計測データバンク」web記事 2020年
「計量計測データバンク」web記事 2019年
「計量計測データバンク」web記事 2018年

〈計量関係機関・団体の長の年頭あいさつ〉(順不同)

 

〈寄稿(個人)〉(順不同)


 


品質問題の専門家集団集まり日本クオリティ協議会
(一社)品質工学会会長  椿 広計

 激動の2022年を終え、2023年を迎えました。品質工学会を代表して新年が世界にとってより良き年になることを祈念すると共に、読者の皆様とご家族のご健勝をお祈り申し上げます。2020年初春に報じられたダイヤモンド・プリンセス号の集団感染以来、COVID−19がかくも長期にわたり私たちの生活に大きな影響を与えると誰が予想できたでしょうか。感染者数は増加しても、重症化率は押さえられ、私たちはウイルスと共存の社会に移行しつつあります。一方、旧年突如として起きた、ウクライナ紛争は今世紀にこのような不条理な侵攻が起きるのかと誰もが驚嘆したと想像します。この紛争に直接起因するエネルギーや食糧の供給問題、それが引き起こした世界的インフレ傾向、それに対応する金融政策のばらつきに起因する日本の円安基調、そして紛争前も進行していた欧米を中心とした自由主義諸国と中露を中核とする統制主義とも呼ばれる諸国の価値相克の益々の顕在化など、国内外の情勢は不安定さを増しています。

 品質において最も根源的な社会や生活の「品」と「質」との大問題が、この数年国内外で急速に顕在化していると言わざるを得ません。ちなみに私が品と呼ぶのはエクセレンス、すなわち品格のことです。日本では1960年から毎年11月を品質月間としてまいりました。一昨年から、私はこの月間委員会委員長を務めておりますが、品質月間のテーマには「新たな社会のクオリティ」を目指す、実践するといったスローガンを掲げました。まさに社会のための品質工学を創成する時期になったと考えます。

 品質工学創始者の田口玄一は、ばらつきや不安定性に起因する製品や機能の機会経済損失を品質の尺度としました。一方で、生涯にわたって社会損失低減を呼びかけました。このことが、国際的技術者・統計科学専門家コミュニティの支持を受けたと認識しています。品質工学会は、田口の技術哲学、それから導かれる管理技術、これらのエッセンスが不安定性を増す社会に存する様々な課題の解決に有効と考えています。しかし、複雑かつ様々利害関係が存する社会課題を品質工学会だけで解決できるはずはありません。オールジャパンの関連する組織の結集が必要で、それを通じて社会品質改革活動が展開できると考えます。新年4月には、品質工学会、日本品質管理学会、日本規格協会、日本科学技術連盟、日本能率協会を設立時メンバーとする「日本クオリティ協議会」が発足することになりました。少なくとも品質問題の専門家集団は結集が可能となりました。新年が新たな社会のクオリティを皆様方と共に目指す第一歩となることを期待してやみません。本年もなにとぞよろしくお願い申し上げます。

↑トップへ


科学機器を通じて科学技術・イノベーションの発展を期す
(一社)日本科学機器協会会長 長谷川壽一

 明けましておめでとうございます。

 令和5年の新年を迎えるにあたり、皆様方におかれましては、健やかに新年を迎えられたことと、お慶び申し上げます。

 科学機器業界は、研究支援を主体とする産業であり、あらゆる領域の研究開発や生産技術を支援する産業でございます。また、近年では、感染症対策をはじめ製薬、医療の分野においても注目されており、これは科学技術立国実現の基盤として期待される業界としての社会的使命であると考えております。

 旧年、政府は「骨太の方針2022」の中で、新しい資本主義に向けた改革として「“人への投資”は、新しい資本主義に向けて計画的な重点投資を行う科学技術・イノベーション,スタートアップ,GX,DXに共通する基盤への中核的な投資である」と明記しています。

 研究開発やスタートアップへの支援は、社会にイノベーションを生み出し新たな産業を創出します。大学や研究機関から新たな成果が生まれ、それが新たな産業につながり、さらに研究開発に再投資される。このエコシステムの構築こそが、日本経済発展の要であり、科学機器業界の目指すところと考えます。

 さて、旧年9月に開催された、科学機器・分析機器総合展示会「JASIS2022」は、約320社、約12,500名の方にご来場いただき、活況を呈しました。新型コロナウイルスパンデミックが長期化する中での開催でしたが、前回の約1.5倍の来場者数を記録し、JASISを支持してくださる研究者の方々の期待感を強く感じた次第です。

 そして本年は、4年ぶりに関西地区における展開として「JASIS関西2023」を2月1日(水)から3日(金)までの3日間、グランキューブ大阪にて開催いたします。

 また、「JASIS2023」は9月6日(水)から8日(金)までの3日間、幕張メッセにて開催することも決定いたしました。

 幕張と関西におけるJASIS開催を機に、日本の研究開発と生産技術の更なる発展に貢献して参ります。

 また、研究者必携の書と称される業界の総合カタログ「科学・分析機器総覧2024」も発行いたします。本年も印刷版とDVD及びWEBでの展開も計画しており、JASIS2023の会場にて印刷版とDVDを無料配布いたします。

 末筆ではございますが、日本の科学技術産業の発展と皆さまの事業隆盛を祈念致しまして、新たな年にあたってのごあいさつとさせていただきます。

↑トップへ


お客様に会員企業に魅力ある団体に
日本圧力計温度計工業会会長 西野寧一

 令和5年の新年を迎え、謹んでお慶び申し上げます。平素は、日本圧力計温度計工業会の活動に、ご理解とご指導を賜り厚く御礼申しあげます。

 さて、全世界で猛威を奮っております新型コロナウイルスは、感染者の拡大が治まらず、国内においても過去最大のピークを記録した第7波を過ぎ、再び第8波へ向かって拡大の様相を見せています。経済状況は、終焉の見えないコロナ感染症の蔓延が長期化しており先行き不透明な状況が続いています。しかしウィルス株も変異により弱毒化し、またワクチン・治療薬などの承認・処方も進んできており、早期に通常生活に戻れることを願っています。

 また、昨年はロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まり、世界に大きな暗い影を落としました。戦争は長期化し今もまだ続いています。この影響で、見え始めたコロナ感染症による経済低迷からの脱出の兆しを打ち消すかのように食糧危機・エネルギー危機が叫ばれる状況に急変し、エネルギー・食料品・原材料の高騰など世界経済に大きな打撃を与えています。当業界においても例にもれずエネルギー・原材料の高騰により収益が圧迫され、苦しい経営を強いられています。しかし、産業機械・半導体関係をはじめとする需要は底堅く関係業界の受注は維持され危機的状況は回避できている状況です。早期に紛争が終焉し安心した生活と経済活動ができる状況となることを期待しています。

 当業界の状況について、アネロイド形圧力計の生産量におきましては、上半期は前年度後半からの高水準を維持しましたが、下半期には減少の傾向で推移しています。また金属製温度計につきましては、ほぼ横ばいで推移しています。

 『JISB7505−2:2015アネロイド型圧力計−第2部:取引又は証明用』ついては、水銀基準液柱型圧力計の代替基準電気式圧力計に関する改正JISの公布が近々行われる見込みです。公布により基準器の切替えが必要となりますが、お客様にご迷惑のかからない様、完全切替えまでの経過措置の適用など関係省庁・関係団体との調整対応を行っております。

 当工業会としては,水俣条約の採択・署名を受け,水銀使用製品を廃止する方針を定め、すでに水銀充満圧力式指示温度計を廃止し、JISB7549液体充満圧力式温度計、JISB7529蒸気圧式指示温度計への切り替えを完了し生産・提供いたしております。

 水銀の特性を最大限生かし、過酷な使用環境条件(高温・高圧・高粘度な測定体の圧力測定)において、圧力計測を行う特殊計器である高温用ダイアフラムシール式圧力計測器につきましても、各メーカにおいて代替え技術の開発を推進しておりますが、現時点においては、水俣条約の適用除外とされ、製造・販売・使用は可能となっておりますのでご承知おきください。

 お客様各位におかれましては、今後の非水銀化への対応につきまして絶大なるご理解・ご協力を重ねてお願いする次第です。

 アネロイド形圧力計・金属製温度計は高度化する産業界になくてはならないツールであり、一般産業機械をはじめ油圧機器、空圧機器、建設機械、石油化学プラント、電力プラント、空調設備、高圧ガス関連、半導体製造装置、鉄道車両等広範囲のお客様の圧力、温度の監視制御にご使用いただいております。お客様の安全・安心を守る重要な計測器であり、お客様のご要望にお答えして多くの品種を揃えてきた製品群は、高品質であり、電源不要で堅牢安価という特徴から長年に亘り多くのお客様からご愛顧を頂いております。信頼性の高い製品をタイムリーにお客様に提供し、安全・安心及び信頼性を向上し、お客様製品の高品質維持のお役に立てていることを自負し、今後とも努力をいたしてまいります。

 産業界の「安全・安心・信頼」が叫ばれる中、計量・計測機器の技術向上及び製品の品質向上は重要なポイントとなります。当工業会の会員企業においても、アネロイド形圧力計・金属製温度計の品質及び技術向上により、お客様の製品のさらなる高品質化に貢献すべく日々精進してまいります。

 当工業会は、本年も会員企業にとって魅力ある団体として、有益な情報をよりスピーディに共有し健全な活動が図れるよう注力してまいります。

 関係各位におかれましては、当工業会と業界の発展にご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申しあげると共に、皆々様のますますのご発展を祈念いたしまして新年のご挨拶といたします。

↑トップへ


多くの情報発信やネットワークの構築を進め「繋がるJEMIMA」を実践
(一社)日本電気計測器工業会会長 曽禰寛純

 会員の皆様、新年あけましておめでとうございます。

 2023年の年頭にあたり謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 新型コロナウイルス感染拡大から3年目となり、感染症に適応する社会や企業の取り組みも進んでおりますが、新たな変異株による拡大や国際的なコロナ禍・東欧の情勢などによるエネルギー価格の高騰、製品生産のための原材料の供給不足、円安影響を含む物価上昇など、世界的な経済への影響懸念が強まっており、月例経済報告でも経済社会活動が正常化に向かい、景気が持ち直していくことが期待される一方で、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等による下振れリスクや国際的な感染動向に十分注意する必要があるという状況です。

当工業会におきましても、国内外での事業展開や生産・サービスでの対応においては厳しい環境が続いておりますが、経済産業政策においてもこのような環境への対応をし、将来に向けたCN(カーボンニュートラル)社会の実現とDX(デジタル・トランスフォーメーション)によるデータ主導のデジタル社会の実現という大きな展開を掲げており、これらを進めるために必要となる状況把握や管理データの創出に無くてはならない「計測・計量、制御」という当工業会のコア技術への需要は引き続き活発に推移しております。

輸出および海外拠点の売上を含む電気計測器の2022年度の売上は、大きく伸長した先期2021年度実績を超え、8,753億円(前年度比+0.5%)を見込んでおり、2022〜2026年度の電気計測器の中期見通しも、年平均成長率+1.7%で推移すると予測しております。会員各社のみなさまの経営努力に感謝するとともに、継続的に当工業会の活動に多大なるご支援・ご参画、ご尽力を頂き、心より御礼申し上げます。また、経済産業省をはじめ、関係省庁、関連団体の皆様には、当工業会の活動を日頃よりご支援いただき感謝しております。

 このような大きな変化を見据え、当工業会では2021年度から@ニューノーマル時代のDX推進による工業会活動の進化、Aデータ社会を支える計測技術の技術革新・進化、B繋がるJEMIMAへ、の3つの基本方針を定め取り組みを進めて来ました。

 第1の「ニューノーマル時代のDX推進による工業会活動の進化」に関しては、工業会横断のタスクフォースを中心に活動を進め、多くの委員会でのテーマとして、また工業会自身の活動(委員会、展示会)へのDXとしての対応が進みました。2021年よりDXに関する会員向け講演会を実施しました。内容も経済産業政策、会員会社におけるユースケースとして、事業展開に関するもの、自社の生産や業務に関するものをテーマに継続しており、毎回多くの参加者を得ております。また、将来のあるべき姿についての具体的検討や計測データの利・活用におけるデータ共有のユースケースについても具体的な検討を進めており、関連団体への提案も実施しております。

 第2の「データ社会を支える計測技術の技術革新・進化」に関しては、計測・計量領域の技術革新を進めるとともに、DX推進との関連での取り組みも加速しております。国際標準であるIECへの対応の取り組みの強化を進め、また国内での電力DXを支えると位置づけられる次世代スマートメータの開発に関する国の方針・施策を背景とした電力会社からの委託研究を、昨年度に引き続き今年度も受託するなど活動が進んでおります。

 第3の「繋がるJEMIMAへ」に関しては、JEMIMAでの活動は引き続きWebの活用で部会・委員会の繋がる活動を継続しました。また、JEMIMA主催の展示会で最大のイベントである計測展2022 OSAKAを「未来へ、持続(つな)げる。」をメッセージとして開催し、多くの関連団体との繋がりも深められました。特に、公益財団法人 計測自動制御学会(SICE)の協力による学生参加の共同企画や、SICE・日本電気制御機器工業会(NECA)との3団体での合同パネルディスカッションを新たな企画としてスタートし、これらを起点に委員会間での意見交換会や産学連携セミナーなどの開催がスタートしました。引き続き、多くの情報発信やネットワークの構築を進め「繋がるJEMIMA」を実践してまいります。

 これからも、JEMIMA基本方針に沿って活動を展開し、新たな潮流の先端を走る工業会へと変革を進めることで、会員企業の皆様への価値提供と、会員企業の皆様を通じての社会への価値提供を推進してまいります。

 日ごろ当工業会の事業運営にご協力いただいております各会員企業の皆様に、あらためて深く感謝申し上げますとともに、本年もなお一層のご支援とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げて、新年のご挨拶とさせていただきます。

↑トップへ


新たな取り組みと従来からの事業をリニューアルし、会員各位に資する事業を展開
(一社)日本計量機器工業連合会会長  田中義一

 2023年の年頭にあたり謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 2022年の社会を取り巻く状況を振り返りますと、2020年初頭から世界中で猛威を振るった新型コロナウイルス感染症が未だ収束には至らず、昨年末から年始にかけては第8波が到来するなど、国民の四人に一人は罹患するほどの広がりとなりました。

 また、昨年2月に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻の戦況はこう着状態にあり、エネルギーの供給制限や食糧問題など、世界経済に大きな影響を与えています。

 国内では、多くの産業がコロナ禍から回復基調にある一方、ものづくり産業では、部品、製品の生産拠点である東南アジア地域におけるロックダウンの影響が残り、半導体を中心に電子部品等の納期遅れに起因するサプライチェーンの寸断などで、生産活動が制約を受ける事態となっています。

 国際的な動きでは、ロシアによるウクライナ侵攻の影響以外にも、米中間に横たわる貿易摩擦や人権問題などの地政学的な不透明感はさらに拡大しており、世界経済の成長の阻害要因にもなってきています。

 一方、RCEP、TPP等の巨大経済圏による自由貿易が実現したことで、今後のビジネス拡大に期待を持てる話題もありました。

 そのような中、計量計測機器産業は、コロナ禍以前の水準には届かないものの最高益を記録した2017・18年に近い生産量に回復してきています。しかし、電子部品の供給は未だ十分な状況とはいえず、今後の生産活動に不安を残したままであることは変わりません。

 一方で、半導体、情報通信機器業界が進める5Gの実用化が加速する中、IoT、AIなどを活用したDXによる新たな製品市場の創出、社会実装が進むことによる需要の拡大など、今後の生産活動に明るい兆しを感じつつあります。

 このような先行きが不透明な状況下ではありますが、本会では、会員の皆様とともに2023年度事業を積極的に展開してまいります。

 事業の方針としましては、政府が進めるDX、次世代ヘルスケア等の新産業創出や、会員各社が取り組む情報セキュリティー、企業価値向上に係る活動や最新の計量計測技術の紹介とともに、SDGsで掲げるカーボンニュートラル、グリーン社会の実現に向けた様々な技術開発支援事業に取り組み、本会ホームページにて情報発信してまいります。

 具体的な事業としては、5年間ほど取り組んできましたグローバル化の成果であるICWが4月にドイツ・ハンブルグで開催されます。DXへの取り組みをテーマに最新の計量関連技術情報について紹介する機会となることから、多くの会員企業、関係者の皆様にご参加していただけるよう、積極的に働きかけてまいります。併せて欧州の計量事情、自動はかりの規制実態を調査することも予定しております。

 昨年より整備を進めています本会ホームページの全面リニューアルでは、より多くの情報発信を行えるよう、また、訪問者が見やすいように改定を行ってまいります。

 会員向けの「諸外国の法定計量制度に係るデータベース」については、取り扱う情報の見直しを行い、更に多くの方々に閲覧してもらえるよう一般公開としてまいります。併せて、計量計測機器業界の発展に資するよう、業界PR情報の発信拠点としての機能も整備してまいります。

 新市場開発事業では、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、新エネルギー利用技術で活用が期待される計量計測機器とセンサの需要動向調査等を積極的に行い、会員の研究、新製品開発につなげるための支援を推進してまいります。

 また、社会貢献活動として、会員企業が製造する計量計測機器が社会生活でどのように使われているか、その重要性を理解していただくため、小学校高学年向け学習教材を作成し、全国の小学校の授業の中で活用してもらうといった活動にも取り組んでまいります。

 このような新たな取り組みに加え、従来実施している事業についてもリニューアルを行い、会員各位の製品開発、需要拡大に資する事業を展開してまいります。

 最後になりましたが、本年もなお一層のご支援とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げまして新年のご挨拶とさせていただきます。
↑トップへ


イノベーションを続けることで、安定した成長を続けられる
経済産業省製造産業局産業機械課長  安田 篤

 令和5年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

 新型コロナウイルスの世界的拡大から3年弱が経過しました。産業界の皆様には、テレワークの推進や時差出勤、職域接種によるワクチン接種の加速など、様々な形でご協力をいただき、改めて御礼申し上げます。

 他方で、昨年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、米中対立、新型コロナウイルスによるパンデミックに引き続き、1990年以降拡大してきたグローバリゼーションを逆回転させる歴史的な出来事となり、これを背景として、世界的なインフレの加速と急激な円安の進行など先行き不透明な状況が続いており、我が国の製造業は、半導体をはじめとした部素材の供給途絶やエネルギー価格の高騰など、様々な面で引き続き影響を受けておられると承知しています。我が国製造業の成長のために引き続き皆様と全力を尽くして進めてまいりたいと思います。

 ロシア・ウクライナ情勢に加え、グローバルなサプライチェーンの脆弱性や国家、地域間の相互依存リスクが顕在化する中、昨年5月に成立した経済安全保障推進法に基づき、我が国では日本の経済構造の自立性の向上、技術の優位性、ひいては不可欠性の確保を目指し様々な施策に取り組んでおり、昨年、政府は広く国民生活・経済活動が依拠している必要不可欠な物資として、工作機械・産業用ロボット、半導体、蓄電池を含めた11物資を政令にて指定しております。

 令和4年度第2次補正予算では、重要物資のサプライチェーンの強靱化を図るための事業を盛り込んでおり、特定重要物資の安定供給の確保に資する民間企業の設備投資や研究開発の取組を後押ししてまいります。

 経済産業省では、2050年カーボンニュートラルという野心的な目標に向けて、脱炭素化に向けた長期にわたる研究開発・社会実装を行う企業等に対して、グリーンイノベーション基金にて、継続的な支援を行っており、今後も必要な支援を行うとともに、カーボンプライシングの制度の在り方や、特に脱炭素化が難しい(hard-to-abate)産業セクターも含め、規制・支援一体型の投資促進策を講じてまいります。昨年2月に発表したGXリーグ基本構想には、既に日本のCO2排出量の4割以上を占める約600社の企業より賛同を頂いており、本年は、予見可能性を高め、企業がGXに向けた投資をしやすい環境作りに取り組んでまいります。

 新型コロナウイルス拡大の影響もあり、リモートワークなど日常生活におけるデジタル化が幅広く浸透し、物流や小売業等でのロボット導入や、インフラ点検や物流、災害対応でのドローン活用など、新たな技術の活用の場が拡大するなど、データ連携・利活用をはじめとした、デジタル化の促進や、その実現に必要な技術を持つ人材育成が重要となっております。

 経済産業省としては、設備投資やIT導入支援を後押しすべく、ものづくり補助金などの生産性革命推進事業や、リスキリング等に取り組んでおります。

 2年後に迫った2025年には、大阪・関西万博において「空飛ぶクルマ」の商用運行を開始することを目指し、政府では制度整備や研究開発を進めています。こうした取組などを通じて、経済産業省としては、未来の豊かなモビリティ社会を構築してまいります。

 福島の復興は、継続して経済産業省の最重要課題です。経済産業省では、昨年末に官民連携の枠組みである「魅力発見!三陸・常磐ものネットワーク」を立ち上げました。本ネットワークでは、産業界、自治体、政府関係機関等から広く参加を募り、水産物等の売り手と買い手を繋げることで、「三陸・常磐もの」の魅力を発信し、産業界での消費拡大を後押ししていますが、皆様におかれましても、ぜひネットワークへの積極的な協力・参加をお願いいたします。

 日本の製造業は、急速に変化し続ける環境の中で、複雑で困難な課題にも多く直面しています。しかし、それらに果敢に取り組みイノベーションを続けることで、安定した成長を続けられると確信しております。引き続き、皆様の現場の生の声をお伺いし、それを産業政策に活かしてまいりたいと考えております。

 本年が、皆様にとって素晴らしい1年となることを祈念いたしまして、新年のごあいさつとさせていただきます。

↑トップへ


環境問題や経済成長の鍵を握るのは科学技術・イノベーション
経済産業省産業技術環境局長 畠山 陽二郎

 令和5年の新春を迎えられたこと、お慶びを申し上げます。昨年は、未だ続くコロナ禍やロシアによるウクライナ侵略の脅威など、大変な困難に直面した一年となりました。こうした中ではございますが、本年が皆様にとって幸多く、実り豊かな一年となることを心よりお祈り申し上げます。

 昨年エジプトにて開催されたCOP27では、世界全体での気候変動対策を更に加速していくことが合意されました。日本政府としても、これをしっかりと進めていきます。また、国際公約である2050年カーボンニュートラルと、産業競争力・経済成長をともに実現するGXを促進するためには、今後10年間で150兆円を超える官民によるGX投資が必要です。これを実現するため、昨年末に行われたGX実行会議では、政府による大胆な先行投資支援や将来のカーボンプライシング導入によってGX投資の前倒しにインセンティブを与える「成長志向型カーボンプライシング構想」をまとめた「GX実現に向けた基本方針」を取りまとめていただきました。今年度の補正予算として3000億円の拡充を行い、来年度当初予算案において約4600億円を計上したグリーンイノベーション基金を始め、様々な形で脱炭素への投資を行ってまいります。また、気候変動だけでなく、世界的な資源需要と地政学的リスクの高まりを背景に、循環経済への移行も喫緊の課題となっています。昨年秋に「成長志向型の資源自律経済デザイン研究会」を立ち上げましたが、資源自律経済戦略の今年度中の策定に向けて資源循環経済政策の再構築の議論を進めております。中長期的にレジリエントな資源循環市場の創出を通じて、国際競争力の獲得と持続的な成長の実現を目指していきます。

 環境問題への対策においても経済成長の実現においても、鍵を握るのは科学技術・イノベーションです。水素・アンモニアなどの脱炭素技術に加え、量子・AI・バイオなど我が国の国益に直結する重点分野においても、政府も民間も一歩踏み込んで、成長に繋がる投資を拡大していきます。

 また、研究成果は、社会実装されることで経済成長につながります。その担い手の核となるのは、大胆な研究開発とそのビジネス展開を図るスタートアップです。大学等にある技術シーズと経営人材とのマッチング支援や、成長に時間を要するディープテック・スタートアップへのNEDOに造成した基金による支援など、スタートアップを通じた研究開発成果の社会実装への取り組みを進めてまいります。加えて、イノベーションの成果を確実に社会実装していくためには、官民ともに、標準化をはじめとするルール形成に、これまで以上に取り組む必要があります。そこで企業に対する啓発に努めると同時に、企業におけるルール形成の体制整備を進めているところです。例えば、グリーンイノベーション基金に採択された国主導の重要プロジェクトについて、参加企業の経営者に経営戦略を確認し、標準化活動の状況をフォローアップする取組を開始しました。こうした取組を通じて、企業の経営戦略に標準化戦略を位置付け、研究開発の早い段階から社会実装に向けた国際標準をはじめとするルール形成に積極的に取り組んでいただけるよう後押ししてまいります。さらには、これからの我が国の標準化活動における課題や取り組むべき事項について、JISC(日本産業標準調査会)に設置された「基本政策部会」においても、今春の取りまとめに向けて議論・検討を進めてきているところです。

 また、科学技術の発展には測定・計量の正確性が不可欠であり、その重要性は近年より一層増しております。計量器の技術革新や国際的な技術基準の変化に対応しながら、計量制度が引き続き、その機能を十分に果たしていけるよう、官民で一層の緊密な連携を図り、実効性のある計量行政を実現してまいります。

 本年も皆様のご支援、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

↑トップへ


詩人三好達治、その苦悩の人生を知る
―映画「天上の花」を観て―
埼玉県計量協会計量士 金澤利江

 昨年12月、「天上の花」という映画を観た。詩人、三好達治を描いた作品である。三好達治、萩原朔太郎、佐藤春夫という登場人物に胸が踊った。私がまだ十代で、文学少女だった頃、憧れていた詩人たちばかり。これはもう、観なくちゃいけないと、急いで池袋の映画館へと向かった。

 はたして、そこに観たのは、私の知らない三好達治であった。陸軍士官学校を中途退学し、詩人への道を選んだ珍しい経歴であること。戦時中は国威発揚となる「国民詩」を書いていたこと。萩原朔太郎の末の妹に恋心を募らせ、離婚して福井県三国町で同棲していたこと。私の知らなかったことばかり、とは言ったが、もしかしたら、活字の上では読んでいたのかもしれない。けれど、記憶には残らなかったのかもしれない。

  太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
  次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。

 あまりにも有名な達治の詩『雪』である。大雪に埋もれる北国の冬。その極寒の中にも、暖かい人の暮らしがあり、肌の温もりまでも感じられるような作品である。こんな詩が書ける人は、きっとやさしい人に違いないと、幼い私は確信していた。私だけでなく、多くの人がそう思っていることだろう。

 達治が師事する萩原朔太郎の末妹(映画では慶子という名。)は、美貌の持ち主であり、大正デモクラシーのモダンガール。自由奔放な女性である。達治は慶子に一目惚れし、十数年の間思いを募らせていく。その後、未亡人となった慶子を福井県三国町の家に招き入れた達治は、自らも離婚して二人のだけの暮らしを始めるが、生活は破綻していく。軍人気質の達治とお嬢様育ちの慶子は、初めから異質の存在であり、理解しがたい者同士であった。次第に達治は慶子を縛り上げたり、殴ったりするようになる。今であれば、監禁と暴力で逮捕されてしまうだろう。結局、慶子は達治のもとから去ることとなる。そして、残された達治はひとりで終戦の玉音放送を聞く。長年の間、心を尽くして愛してきた女性、そして勝利を信じていた日本国。人生で最も大事にしてきたふたつを失って、達治の絶望感はいかばかりであっただろうか。

 映画はあくまで「フィクション」なので、実際の三好達治がどこまで暴力を振るったのかは定かでない。しかし、暴力の描写がなかったら、達治の愛の強さ、重さ、深さを肌身に感じ取ることはできなかっただろう。映像はとても美しく、見応えのある作品だった。ロケ地、建物、調度品、着物、さらに光と影の使い方、細部にいたるまで、こだわり尽くしているのがよくわかる。そして、三好達治を演じた俳優の東出昌大は迫真の演技であった。狂気すれすれに愛憎劇を繰り返す達治を、また出口の見えない失意の底にある達治の姿を見事に表現していた。

 太郎と次郎のそれぞれの屋根に積もる雪は、暖かな愛情のほかに、抑えきれない憎しみや悲しみも一緒に包み込んでいるのだと、映画を観てからようやく私は理解できた。若い時に読んだ小説や詩を、年を取ってから読み返してみれば、また違った感じ方ができる。私が文学少女だった頃に読んだ詩集は、家のどこかに埋もれていないだろうか。探し出すには、相当な労力が必要になるだろうが……。

↑トップへ


私の趣味(エンジョイクラブ)
東京計量士会  徳 美恵子

 現在の地域に住んで四十年近くになります。子育て時代の住民も今や後期高齢者です。

 猛烈社員として、社会に貢献した人々が定年を迎えた時に地域に交流の場を作ろうとして出来たのが、「エンジョイクラブ」です。その頃各地で作られていた老人クラブに些か抵抗してとのことのようです。私は、創立の頃は、まだ勤めていましたので、参画はしていませんでした。常勤であった会社を退職して、計量士の資格を活かして、現在の株式会社島屋の計量管理を始めた頃、「カメラ同好会」という同好会があることを知り会員になりました。それまでも、ネットの仲間等とは写真を通じて、互いの情報を交換してましたので、少し写真の知識をつけたいと思ったことが入会の動機です。月2回の会合、1回の撮影会、年1回の展示会などが主とした活動です。

 東京計量士会の会報も十二月発刊で58号になりますが、その編集に初期の頃から携わっていますが、最近は、その表紙の写真も担当しています。

 十一月の撮影会は、神田川クルーズでした。日本橋発着場から日本橋川、神田川、隅田川を一周九十分のクルーズでした。

 日本橋の頭上の高速道路は、2035年に地下ルートが完成予定で、日本橋周辺は再開発がなされ、景色は一変することでしょう(最も、その景色をみることは、不可能でしょうけど)そのクルーズの写真を少し紹介します。

神田川クルーズ01

神田川クルーズ02

神田川クルーズ03

神田川クルーズ04

 また、「エンジョイクラブ」には、山歩き、ゴルフ、テニス、卓球、太極拳、健康体操などの「健康を進める活動」と、囲碁、まあじゃん、カラオケ、スケッチ、男の料理など「生きがいを高める活動」等の十八の同好会があります。私は、麻雀と卓球同好会に入っています。麻雀は月2回、卓球は月5回が平均活動です。同好会の会員も高齢化はさけられず、七十代、八十代です。子供達も独立し、連れ添った伴侶に先立たれ、ひとり暮らしの世帯も多くなりました。痴呆にならないで、健康な生活できることに一躍買っている同好会です。

 所属の東京計量士会も高齢化が諸活動に影響を及ぼしてきています。後数年は、東京計量士会で、何らかの活動に参画したいと思っています。

↑トップへ


勇猛果敢に挑戦することの意義
東京都計量検定所長 戸澤 互

 新年あけましておめでとうございます。

 日頃から東京都の計量行政に格別のご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

 昨年を振り返ると、長引く新型コロナウイルスの影響に加え、ロシアのウクライナ侵攻や円安を背景としたエネルギー価格や食料価格の高騰など、景気の好転には至らない厳しい一年だったかと思います。そのような中でも、昨年の秋以降には、入国制限の緩和のほか、旅行や飲食への支援が実施されるなど、経済活動にプラスとなる施策が採られ、多少の光明は見えてきたようです。

 昨年の明るいニュースと言えば、サッカーワールドカップでの日本代表チームの活躍でしょうか。スペインやドイツという強豪国を撃破して、困難と思われていた予選突破を果たしたことに対し、国内はもとより海外からも絶賛されました。これは決してフロックではなく、海外の主要なリーグで活躍する選手が増加したことに加え、対戦相手を十分に分析し、より勝利する可能性の高い戦術や選手の起用法を採用したことなどによるものと思われます。ノックアウトステージでは強敵クロアチアに惜しくも敗れ、悲願のベスト8入りは果たせませんでしたが、実力的は確実にレベルアップしてきており、4年後のワールドカップでの一層の躍進を大いに期待したいと思います。

 最近のサッカーの試合では、映像技術を駆使したVAR(ビデオ・アシスタント・レフリー)という手法が採られ、オフサイドやPK等の判定に活用されています。技術の進歩に伴いミリ単位での判定が可能となるなど、サッカーで起こりがちな「誤審」の解消に役立っています。スペイン戦での得点シーンで、三笘選手のセンタリングがゴールラインを割っていたかどうかが関心事となりましたが、VARの判定でボールがフィールド内にあったことが立証されました。VARのお蔭で「世紀の誤審」といった批判を抱かれ続けることがなくなり、改めて客観性の高い科学技術の持つ重要性を感じた次第です。

 皆様が関わっている計量分野についても、科学に基づいた正確なデータを提供するものであり、取引や証明といった経済活動を円滑に行う上で不可欠な要素となっています。今後益々複雑、高度化する先端技術のベースとなる技術として、計量の重要性は更に増していくものと考えます。

 計量の重要性を考える上でもう一点、IoTとの親和性が挙げられます。近年、成長分野の一つとして頓に関心を集めているIoTですが、機械製品から振動や音を感知し、そのデータを基にその劣化状況を認識し、適切なメンテナンスに繋げていくという試みも行われるとのことで、今後も益々環境測定の必要性が高まっていくかと思います。

 結びになりますが、東京都計量検定所では、社会経済情勢の動向を捉え、より時代に即した計量行政を展開していく所存です。皆様の益々のご活躍とご健勝を祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。

↑トップへ


3年振りJASIS関西を2月1日から開催
(一社)日本分析機器工業会会長 中本 晃

 2023年の新春を迎え、謹んで新年のごあいさつを申し上げます。

 昨年は、新型コロナウイルス感染症対策と社会経済活動の両立が進む中で、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー・食料の需給逼迫や、世界的な部材・部品の不足と価格高騰など、たいへん重苦しい状況が続く一年となりました。

 このような中、分析機器の2022年度上半期の生産高は、3,167億円で前年比116%、輸出高は2,407億円、同120%と輸出が牽引して大きな伸びを示しましたが、これは円安による押し上げ効果が大きいと思われます。

 下期以降も堅調な業績が継続することを期待しますが、国内製造業にとっては、半導体など部品の不足や物価上昇などの懸念材料があり、予断を許さない状況です。

 さて、弊会の主たる事業である最先端科学・分析システム&ソリューション展JASIS 2022は昨年9月に千葉市幕張メッセで開催し、来場者は昨年比5割増の約12,500名となりました。これもひとえに来場いただいた皆様と出展社並びに関係各位のご支援のおかげであり、心より御礼申し上げます。

 今年は2月1日から3日にグランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)にて、JASIS関西 2023を3年ぶりに開催致します。

 分析・科学機器約100社の展示と関西独自のコンテンツを加えた約80のセミナー・講演を行いますので、こちらにも是非足をお運びください。

 また、JASIS 2023は、2023年9月6〜8日に同じく幕張メッセで開催する予定です。一層充実したJASISとなるように努めてまいりますので、多くの方々のご来場をお待ち申し上げます。

 JASIS は、科学技術の発展と関連する業界の振興に寄与するために、今後とも分析・科学機器のユーザーに、多様な最新情報が発信できるよう努めてまいります。

 最後に、2023年が皆様にとりまして大きな飛躍の年になることを祈念申し上げ、新年の挨拶とさせていただきます。

↑トップへ


計量人材の育成と新しい計量管理の推進を
(一社)日本計量振興協会会長 鍋島孝敏

 新たな年を迎えるに当たり謹んで新春のご挨拶を申し上げます。


 平素は、計量管理事業、校正事業、計量普及事業、研修事業及び各種部会・委員会等の活動を通して、当会の事業に多大なご支援ご協力を賜り誠にありがとうございます。この場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。

 2020年、2021年と新型コロナウィルスの感染が世界中に広まり、経済社会に大きな影響を与え、我が国においても国全体が、感染防止対策と経済の打撃からの立ち直り策に終始し、国の主な行事も中止、または延期になり、計量界も同様な影響を受けました。

 昨年2022年は、3年ぶりに、地区計量協議会や計量記念日事業、計量士大会等の集会が平年どおりに実施され、当会においては、理事会、総会をはじめ郵政計量管理事業や試験校正事業、研修事業等の主力事業が比較的影響が少なく順調に推移しました。

 ウィズコロナ下においては、集会や会議及び審査等のリモート開催が日常的となり、今年もその流れは継続することになると思われ、今後はデジタル化を指向することと合わせ業務の効率化や経費節減を図っていくことが重要であると考えます。

 自動はかりの検定制度に関しては、昨年は指定検定機関4社が指定され制度が整備されつつあり、検定実施に向け関係者間の意見交換が進められております。

 当会においては、本年は検定を実施する計量士のための技術講習会を再開し全国に展開することにより、自動はかりの検定業務を実施する計量士の育成を進めていく方針です。


 また、自動はかりの使用現場における計量管理実施事例の調査・分析を進め計量士による新しい計量管理の在り方を追求していきたいと考えています。
 
 グローバルな計量管理の推進の観点では、ISO9000、ISO17025、ISO10012、TS16949等の海外計量関連規格の要求事項を統合活用して、現行の製造部門の適正計量管理事業所制度を将来的にものづくりに合致させた制度にしていくための検討・提案を行っていきたいと考えます。

 計量界の喫緊の共通課題である若手計量人材の育成・確保に関しては、有効な解決策が見当たらない中にも避けて通れないことであるため、関連機関や企業及び団体の方々と協議の場を作り、有効な改善事例を紹介し合い水平展開する取り組みを粘り強く続けていきたいと思います。

 本年も役職員一同、関係方面の方々のご支援により充実した活動をしていく所存でございますので、昨年同様に関係各位のご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。改めまして、皆様方のご健勝とご発展を祈念いたしましてわたくしの年頭の挨拶とさせていただきます。

↑トップへ


JCSS創設30周年、『新たな価値に信頼を』
(独)製品評価技術基盤機構(NITE)認定センター所長 斉藤和則

 令和5年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

 ポスト・コロナ時代という話もございますが、未だコロナウイルスに対する配慮が欠かせない日々が続いております。本年が皆様にとりまして幸多き年となりますよう祈念いたしますとともに、NITE認定センターを引き続きご厚誼賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 脱炭素社会の実現といった近年の世界的な潮流について、ウクライナ危機に伴う国際社会の分断や経済環境の悪化を受けて、逆流が強まっており、昨年11月に開催されたCOP27の議論は、温暖化ガスを殆ど排出しない途上国への被害補償等が中心となり、炭素排出の削減等緩和策には顕著な進展がありませんでした。他方、COP27報告書発表時に国連グテーレス事務総長は、多くの国で脱炭素を誓約している一方で、排出量正味ゼロ・コミットメントの基準にはディーゼルトラックが通れるほどの大きな抜け道があり、自発的に市場で取引される炭素クレジットに関して、基準や規制、厳密さがないことが深く懸念される等主張され、信頼のおける第三者機関が存在せず、検証と説明責任確保のプロセス等の強化についても言及されました。

 これらへの対応は、容易に実現できるものではありませんが、その技術基盤として、計量産業や計測技術の存在があると思います。皆様方は常日頃、生活や産業を支える重要な役割を担っておられますが、地球温暖化が原因とみられるさまざまな悪影響は現実の問題となり、カーボンニュートラルといった気候変動への対応は、待ったなしの問題です。炭素排出の削減等緩和策の推進も不可欠ではありますが、脱炭素社会の実現のため、計量産業や計測技術に携わる皆様方のご助力とご活躍を期待しております。

 本年は、我が国で最初に「認定」の概念を取り入れた適合性評価制度でありますJCSSが創設30周年の節目を迎えます。NITEは、その起源を絹織物検査所として昭和3年に産声を上げ、本年で創立94周年となりますが、適合性評価に係る4つの行為(試験、検査、認証、認定)の1つの検査からスタートした組織です。その後、検査方法等の標準化、商品テスト、試薬等の認証などを経て、校正事業者の認定業務へと進んできております。

 JCSSは、認定センターが運営する4つの認定プログラムの中で、最も皆様方に活用いただいており、試験・校正データの信頼性向上等、安全・安心な国民生活や健全で持続可能性のある産業発展への貢献に対し感謝申し上げます。認定センターでは、JCSS創設30周年ということから、『新たな価値に信頼を』〜これまでも、そして、これからも〜というテーマで、セミナー、HPへの特設サイト設置等、記念イベントを開催します。社会基盤としての適合性評価制度のこれまでを振り返り、来たるべき未来に、社会が、産業が、生活がどうあるべきかを考え、その未来における適合性評価のあるべき姿を議論する機会になればと考えておりますので、是非とも御参加ください。

 認定センターとしましては、国内外の適合性評価の動向の把握と共有をタイムリーに行いつつ、ニーズに適時に対応する一方で、公的制度での適合性評価結果の活用を促し、認定機関として日本の適合性評価の普及啓発を積極的に展開してまいります。

 NITEに対する関係各位の忌憚のないご指導・ご助言をお願いいたします。

↑トップへ


「見えない価値を 見える証に」公正・中立な第三者機関の使命
(一財)日本品質保証機構理事長 小林憲明

 謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。旧年中は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。

 世界情勢の長引く混乱は物価やエネルギー価格の上昇、国際輸送の逼迫、食料不足等を引き起こし、人びとの命と世界経済に深刻な影響を及ぼしています。一刻も早くこの状況が終結し、困難な環境下にいらっしゃる方々に平穏な日々が戻ることを切に願っています。

 新型コロナウイルス感染拡大は未だ終息していませんが、当機構においてはコロナ禍を契機にリモート審査、WEBセミナー、オンライン会議等が定着し、さらにデジタルコンテンツの拡充、社内手続のオンライン化等を推進することで、滞りなく事業を運営しております。変化の過程ではお客さまに多大なるご理解、ご協力を賜りましたこと、改めて感謝申し上げます。

 さて、当機構で行っているさまざまな第三者認証事業のうち、計測器の校正は、このような状況下においても自動車業界や航空機業界を中心にニーズが拡大しており、社会・経済インフラの一部としてますます重要度が増しております。われわれの事業は社会の安全・安心の確立に必要とされているものであり、当機構が重要な使命を負っていることを強く感じております。

 当機構は、従来からISO/IEC 17025に基づく認定校正事業を中心に行っており、国家計量標準へのトレーサビリティを確立した信頼性の高い校正サービスを提供しています。昨年、長さ分野においては真円度測定機や膜厚計の校正、電気分野では波長計の校正など、長さ、電気等の基本量での認定品目を増やしました。また、さらに広い分野や組立量へも範囲を広げる一環で、光学フィルタや光沢計校正の認定も取得しました。校正に付帯するサービスとしては、次回校正案内サービスや、WEBを活用した計測セミナーなども実施し、お客さまに大変ご好評をいただいております。

 そのほか、計量法に基づく指定検定機関として、特定計量器のうちの環境計量器の型式試験を含めた検定業務も実施しております。

 昨年6月、当機構の事業を端的に表現したコミュニケーションワード「見えない価値を 見える証に」を新たに制定しました。コミュニケーションワードは、当機構の事業と社会のつながりを、お客さまをはじめとするすべてのステークホルダーの皆さまに知っていただくためのメッセージです。

 当機構は、産業界や社会のニーズに応えるため、第三者機関として公正・中立な立場でサービスを提供するだけでなく、これからも新たな技術を用いた「総合的な計測管理サービス」を確実に提供することで、より多くの皆さまに確かな「証」を届け続けることができるよう、一層努力していく所存です。本年も引き続きご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

 最後になりますが、皆さまのますますのご健勝を心から祈念申し上げます。

↑トップへ


未来に繋げる信頼と技術のJEMIC
日本電気計器検定所 理事長 豊木則行

 2023年の年頭に当たり、謹んで新年のお喜びを申し上げます。

昨年は新型コロナウイルスのみならずロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰など、激しい環境の変化に見舞われ、その対応に続く中で新年を迎えることとなりました。

 さて、当日本電気計器検定所の現在の状況をご説明しますと、法定業務である検定検査においては、スマートメーターの新しい技術基準(2017年改正・発行 新JIS)に対応するため、本社敷地内に試験棟を新設し、試験方法の確立と試験設備の整備を進め、2022年4月からは型式申請を受理できる体制を整えております。

 また、2025年度から導入が計画されている次世代スマートメーターについては、経済産業省の次世代スマートメーター制度検討会において2022年5月に取りまとめを終え、統一仕様化が図られております。詳細な仕様に関しては2022年中検討が続きましたが、これに基づき次世代スマートメーターの形式承認、検定に対応する体制の構築に向けた取り組みを進めてまいります。

新JISの対応も次世代スマートメーターから始まるものが大勢を占めると思われ、当所2ステップで考えていたものをまとめてハイジャンプする必要があり、これに向けて万全の準備を進める所存であります。

 次に自主業務である標準業務については、校正試験業務の範囲拡大等により、産業界及び顧客のニーズにお応えできるよう取り組んでおります。本社においてはJCSS校正の光区分における照度応答度標準受光器及び輝度計の校正対象の追加、湿度区分における霜点の範囲拡張及び湿度計等の校正測定能力の向上を行いました。また、校正サービスを行っている中部、関西、九州支社においても、本社と同等の校正サービスを提供できるよう校正範囲の拡張と校正対象の計測器の追加を予定しております。

 本社においては、国際規格「ISO/IEC 17025(試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項)」に適合した校正機関として、高調波測定装置・高調波発生装置の校正及び試験槽、恒温槽等の校正も実施しております。是非、多くのお客様にご利用いただければと考えております。

 日本電気計器検定所は2022年度からの中期経営計画に掲げる「未来に繋げる信頼と技術のJEMIC」を掲げて事業を進めてまいります。培ってきた技術にさらに磨きをかけ、よって電気の適正な取引を支え、ものづくりの計量精度確保を支援することによって、社会貢献する企業として皆様に信頼されることを目指してまいります。引き続きご指導、ご鞭撻を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

 末筆ながら皆様の一層のご発展とご健勝を祈念申し上げます。

↑トップへ


社会の変化と新たな時代を見据えた計量標準
産業技術総合研究所計量標準総合センター長  臼田 孝

 2023年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。皆様、及びご家族がご健勝であられることを心から祈念しております。また平素より産業技術総合研究所計量標準総合センター(NMIJ)の活動にご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。本年も皆様のご健勝とご繁栄を祈念いたしますとともに、引き続き、ご支援、ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症(COVID−19)禍での年明けも3回目となり、長期化による多種多様な変化、多大な困難に直面されている皆様に心からお見舞い申し上げます。また、引き続き我々の日常を支えるべく、働いておられる医療従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーの皆様には、心より感謝申し上げます。一方で、ワクチン接種が進み、様々な制約は受けつつも、感染対策を十分に施し、工夫を凝らした取組が随所で見られております。

 このような状況におきまして、昨年もNMIJは、各位のご理解、協力により基準器検査、校正・依頼試験、標準物質の頒布については、概ね支障なく進めることができました。また、計量研修については、十分な感染症対策を行い、継続することができました。関係者各位には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

 NMIJではコロナ禍での普及啓発として、オンラインによる情報提供の充実にも努めて参りました。昨年は、9月に開催されましたINTERMEASURE 2022において、関係各位のご協力により、計測標準フォーラム第20回講演会(NMIJ計量標準セミナー)を現地とライブ配信によるハイブリッド形式で開催し、多くの方にご参加いただきました。また、毎年開催しておりますNMIJ成果報告会のオンライン化による成果普及、情報発信に取り組み、遠方の方を含め多くの方にご参加いただきました。今年度のNMIJ成果発表会もオンラインで1月30日〜2月3日に開催いたしますので、是非ご参加ください。

 また、昨年11月にはフランスのベルサイユにて、第27回国際度量衡総会が開催されました。総会では新たなSI接頭語として、1030、1027、10-27、10-30を表す名称と記号、Q(クエタ)、R(ロナ)、r(ロント)、q(クエクト)の採択、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取組として、国際的に受け入れられる校正証明書のデジタル化の促進など、計量標準におけるDX化への提言の採択など、新たな展開がなされております。

 さらに、これまでオンライン開催となっていた国際会議も徐々に対面での開催が再開されてきております。日本でも、昨年11月28日〜12月2日に、APMP(アジア国際計量計画)総会及び関連会議をホスト国として、(国研)情報通信研究機構、(一財)化学物質評価研究所)及び日本電気計器検定所、ほか関係者各位のご協力の下、ハイブリッド形式で開催いたしました。この大きな社会変容の中で、新たな時代を切り開くための変化、進歩が求められています。コロナ禍での社会活動も3年が経ち、感染症対策と経済活動の両立により、ポストコロナを見据えて動き出した国際社会において、NMIJも遅れることなく、産業・社会に必要となる知的基盤の整備と普及に邁進してまいりたいと思います。

 これまでの国際社会秩序を大きく揺るがす事象が続いている中、燃料価格の高騰や経済安全保障によるサプライチェーンの見直しなど、産業界におかれては引き続き厳しい環境下での活動を余儀なくされるところですが、弊所も所管官庁や関係機関と協力しつつ、産業競争力強化に寄与すべく、取り組んでまいりたいと思います。

 最後になりましたが本年もNMIJに対する一層のお力添えを賜りますようお願いするとともに、皆様方のご多幸とご健康、COVID−19の一日も早い終息を祈念いたしまして、新年のごあいさつとさせていただきます。

↑トップへ


現場の議論に参加し、課題の帰結に共に進んで行く
経済産業省産業技術環境局計量行政室長 大崎美洋

 2023年(令和5年)の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

 引き続き、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策が必要とされウィズコロナの生活様式が定着してきており、デジタル化の波は非遡及的になりつつあると感じているところです。計量行政室としても、計量法に規定する各種申請等のデジタル化を目指し、日々努力しているところでございます。計量行政に関する手続のデジタル化は、地方自治体との協力が不可欠であることから、今後とも地方自治体と協力しながら、計量行政のデジタル化に向けた取組を進めていきたいと思います。

 計量制度は我が国経済・産業の根底を支える重要な基盤としての機能を果たしており、時代に合わせた新たな計量制度の構築を行う必要があります。2022年は、自動はかりの指定検定機関として新たに1社が指定され、これまでに5社の民間事業者が指定検定機関に指定するなど、来年4月の取引・証明に使用する自動捕捉式はかりの検定の義務化に向け、指定検定機関の指定を着実に進めているところです。この新たな検定制度が着実に実施されるよう、引き続き所要の対応を行っていきます。

 近年の国際的な動向としては、2022年3月、日本の質量の基準として大きな役割を果たしたキログラム原器が、重要文化財「メートル条約並度量衡法関係原器」として指定されました。日本のキログラム原器は、他国に比べ質量変化が小さく、日本の質量の基準を極めて高い精度で保ってきたといいます。さらに、2022年11月にフランスのベルサイユにて開催された第27回国際度量衡総会で、新たなSI接頭語(1030 は quetta(クエタ)、1027 は ronna(ロナ)、10-27 は ronto(ロント)、10-30 は quecto(クエクト))が採択されました。これにより、急速に高度化しているデジタル化の流れにも対応できるようになります。これらの新たな接頭語については、今後、円滑に国内法に落とし込めるよう、計量単位令の改正等の準備を進めてまいります。

 このように常に変化していく時代の中で、我が国の計量制度が引き続き実効性のある制度設計・運用を行い、国内外の様態に対応していくためには、地方自治体や計量団体、民間事業者の皆様など、多くの方々による御協力が必要不可欠です。依然、新型コロナウイルスによる制約はありますが、機会をとらえて現場の皆様の議論に積極的に参加させていただき、それぞれが抱える課題の解決に向けて共に進んで行くことができるような1年となることを期待しています。

 最後になりますが、新たな年が皆様方にとって輝かしい年となりますとともに、皆様の御健勝、御多幸を祈念いたしまして、私からの新年の挨拶とさせていただきます。 

↑トップへ


雑学大学で学び、教える
東京学芸大学名誉教授・日本計量史学会理事 大井みさほ

 この半世紀の間に日本人は長寿命になり、定年退職後も元気な老人が増えた。

 私はおよそ25年を国の研究機関である計量研究所で研究者として、その後の15年を東京学芸大学で教育者として過ごし、定年後はなんともう23年近くも好きなことをしている。

 定年後の最初の2年はいろいろやってみた。時間の取れなかった趣味や、旅行などだが、そのうち自分の生活スタイルが出来てきたのか、家庭の仕事の合間に教育に関係したいくつかのNPO法人の活動に参加するようになった。

 その一つが東京雑学大学で、もう一つが小金井雑学大学である。そこでは、色々な分野の人が教授となって無料奉仕の授業をする。私はそれを聴講するし、ときには私が教授として授業をする。最近では東京雑学大学で光の進み方について講義と実験をした。そうしたら小金井雑学大学でも同じ内容でよいからといわれて、2022年12月に授業をした。

 この時、いつもより学生数が少なく、しかも大部分が男性であった。そのせいだろうか、講義の後の質疑応答が長く続き、光とは何かについてなど話が発展し、30分近くもいろいろ話しあったように思う。

 小人数での授業は面白い議論ができ、講師にも学ぶことが色々あった。私はこの時、自由な時間をもった元気な老人が増えたと感じたのである。私もその一人である。

↑トップへ


絶滅危惧種の計量士
愛知県計量連合会・計量士 中野廣幸

 計量士の国家試験受験者・合格者数は、緩やかな減少傾向がみられ、国家試験受験者の減少が、合格者の減少の原因となっている。計量従事者の高齢化も著しく将来的な計量士の確保が危ぶまれてきている。

 国家試験合格者が全て計量士登録をするわけではない。計量士登録には1以年以上の実務経験が必要であるが、計量士の国家試験に合格しても、計量士登録をするための実務を経験する手立てが近くになく、計量士の国家試験は受けるだけ無駄であると考える若い人が多いのではないだろうか。

 既に深刻な計量士不足に陥っている地方計量団体があるとも聞く。今や計量士は絶滅危惧種と呼んでも良い状態にないる。

 適正計量管理事業所も減少しており、それにつれ適正計量管理事業所内で実務経験を積む機会が無くなってきている。

 企業内での計測開発、計測設計、計測器の校正及び測定の不確かさ評価、計測の監視、監査等の業務、又計測による製品評価、分析等の仕事が、計量士としての業務実績として認められない。ISO9001あるいはIATF16949を取得した事業所において計量管理の業務をしていても、それは計量士としての実務実績としては認められない。計量法134条、135条にかかわるJCSS校正業務や、ISO/IEC17025に基づいた校正業務、あるいはラボの仕事すらも、計量士の実務実績としては認められない。

 実務実績として認められるには、現役の計量士について“はかりの検査実務”の経験を積むしかない。もちろん“はかりの検査”は大切なことではあるが、“はかりの検査”の実務知識だけで、日本の国際競争力を下支えする計測計量を維持、発展させることができる人的資源を継続的に確保できるかは疑問である。計量士としての実務経験は、技術の進歩に即応した国際的にも通用するものでなければならない。

 特に若い人にとっての仕事の魅力は、最先端の技術に触れられるか否かが大きな要素になる。現行の計量士という職業が、若い人にとって魅力のないものに陥っているのはこのあたりにも原因があるのではないかと思う。

 最先端企業が求める計量士像はどのようなものか。それを実現するための実務経験とは何かを明確にして認定条件にしない限り、計量士が絶滅危惧種から脱することはできない。

↑トップへ


心に残る人々シリーズ(3)
計量士 都筑千秋

 明けましておめでとうございます。2023年の新春を何とか迎えることが出来ました。今年も計量新報社編集部から新年のご挨拶を兼ねて投稿の機会を頂きました。

 これまで、心に残る人々シリーズとして、2021年の新春号には「ベガポン、・・・」の副題で大学を出るまでの期間に影響を受けた方々3人、2022年の新春号には「心に残る人々シリーズ(2)」として社会人となってからの前半の期間の人々3人を紹介させて頂きました。

 今年は社会人になってからの後半、退職するまでの期間に思い出に残る方々3人を紹介させて頂きます。

1.シアーズタワーでの溶接; 溶接技術者・デル・コンクリン氏

 彼は、私が四十代の前半に初めて海外で仕事をした時の技術提携先のエンジニアです。ロボットの売り込み先としてアメリカで3大溶接機メーカの一つH社のベテランエンジニアです。オハイオ訛りのわかりにくい英語をしゃべるアメリカ人で、苦労しましたが彼からは色々アメリカの商習慣やルールを見て教わったものです。

 彼から聞いた話ですが、当時全米一の高さを誇ったシアーズタワー(地上110階420m)の建設に彼は溶接のエンジニアとして立ち合い大変苦労をしたと言う経験談です。

 シカゴは5大湖に面した全米屈指の大都会ですが冬はミシガン湖の湖面が凍り付いて数メートルの岩のような氷の塊がごろごろ湖岸を埋めつくすところです。私も4年間の滞在中に気温マイナス42度を経験し車のエンジンが止まり死ぬ思いをしたものです。そのような環境の土地でシアーズタワーの建設は進められ地上400mの高さで風速40m/sの強風の中鉄骨の溶接に携わったのがデル・コンクリン氏です。

 寒冷下、強風下での溶接品質の維持向上を彼は日夜研究して現場を指導したそうです。まじめなアメリカ人の技術屋との出会いはその後のちのちまで国籍は違っても技術屋と言う点で共感するものを覚え忘れられない人です。ちなみに当時の日本で一番高いビルと言われた横浜ランドマークタワーは70階296mで、池袋サンシャインビルは60階226mです。シアーズタワーがいかに高いビルか比較すると理解できます。

2.弁護士との付き合い; 船井弁護士(シカゴ)

 やはり1980年代のシカゴでの話ですがシカゴを拠点に活躍し日系企業の訴訟案件の相談に乗ったり、担当してくれたのが船井弁護士です。

 アメリカのロボットメーカS社からロボットの軌跡を生み出す円弧補間のやり方について特許抵触の警告を受けた時です。当時日系のロボットメーカ全てが訴訟の対象でした。シカゴのダウンタウンの船井弁護士事務所を訪ね相談をした時最初挨拶を交わしたり世間話をした後、船井さんがそれでは始めますかと言って机の上のタイマーの“入り”ボタンを押しました。それからだいたい仕事の話が終わる頃に船井さんが今度はタイマーの“切り”ボタンを押しました。世間話と退席の挨拶はタイマーを切った後の時間です。

 この業界では普通のやり方ですが今まで日本であまりシビアーに時間を意識して仕事をしていなかったので勉強になりました。弁護士でなくても欧米では一般に仕事に集中しダラダラ会議を続けることは無いと聞いていましたがその事を実感しました。

3.K社長との関わり

 私の社会人生活の後半は何といっても海外関係の仕事が中心でした。フランクフルトを起点に欧州をよく飛び回りました。そんな中でやはり記憶に残っている人と言えば当時の本社社長のKさんです。

 世界に通用する技術で海外にもビジネスを展開すると言う方針でぐいぐい引っ張っていかれました。

 大変思いやりのある温情ビジネスマンでしたが厳しい時は相当なもので、1990年代のある時やはりシカゴで、私の所属するグループが海外の拠点でビジネス拡大の戦略をK社長にプレゼンテーションした時、内容が今一つパッとしなかったため、その部長を含めて「お前たちは全員“首”だ」と本気で叱られました。全員真っ青になりましたが済んだことは取り返しがつきません。私はまだ中堅の一担当でしたがその時の部長の緊張は大変なものです。

 ところが、しばらく講評を続けた後言われたことは「今即刻全員首にしたら後をやれる人間がいなくなってしまうから置いてやる」と言う情けのある言葉でした。日ごろ温情のある社長でしたがやはり締める所はちゃんと締めておられました。その後、ヨーロッパ駐在時代も何かと温かい励ましの言葉をかけられたものです。

↑トップへ

人生百年時代の高齢者の働き方      
計量士 阿知波 正之

 80歳の壁を目前にして、基礎疾患の管理状態にはあるが、日常生活には支障なく、新しい年を迎えることができた。後期高齢者に区分されたが、高齢者としての優遇はなく医療保険料及び介護保険料、医療窓口負担など、負担が増すばかりである。一方計量士業務は年齢を意識することなく活動しており、高齢者としての体験的活動を紹介する。

■計量器の検査業務は一石二鳥

 計量士として、代検査業務、指定定期検査業務における計量器の検査作業を担当しており、300kg未満のはかりは10kgの分銅の手積作業を実施している。例えばひょう量150kgのはかりの場合、両手で手積すると器差検査で、8回、繰返し性6回、偏置荷重12回、合計26回となる。

 これを筋トレとすると、2セット程度で、推奨回数から3台の検査により、目標レベルを達成できる。また、はかりへの載せ降ろし動作は、下半身のスクワット運動にもなる。

 高齢者は筋力が短期間で筋力が低下するので、週1回程度の筋トレが必要で、、一時期会費8千円(月)のスポーツクラブで、筋トレをしていたが、現状は検査作業で目標を達成することができ、スポーツクラブの会費+検査料の一石二鳥の経済効果がある。

 分銅の載せ降ろし作業は作業員とか若手に任せ高齢者の仕事ではないとする諸兄がいるが、この作業の回避はせっかくの筋力維持の機会を逸することになる。

■高齢者はMT車に乗る

 高齢者は免許更新時に認知機能検査、自動車運転の実技指導を受けており、免許返納も進められるが、地方在の身では計量士業務と日常生活上車の使用が不可欠である。

 70代になった時先輩計量士から高齢者は手動変速(MT)の軽トラが良いと聞き、2016年にメカとしての興味から絶版車のスバルサンバーの中古車を購入した。

 MT車の運転は40年余りのギャップがあったが、数時間で支障なく運転できた、しかし、MT車は運転者の技量に左右され、両手足の操作に「精確さ」が求められる。さらに運転条件に合せ瞬時の判断と四肢への指令伝達の脳内活動も求められ、脳神経的な訓練にもなる。また誤操作による、エンスト、ギヤ音は起きるが、意図しない速度アップの機会は少なく、クラッチ操作による回避の手段がある。小生の体験からMT車は運転者の操作を超えて走ることはなく、他のAT車の運転時にも基本動作にリセットされ、安全運転に役立っている。

■再生医療への期待

 前回の運転免許更新時、視力に不安を感じ、眼鏡を調整したが、視力は限界の0.7で何とか更新できた。その後運転中⇒信号の確認がし辛く、眼科医の診察を受けた結果、「白内障」で要手術と診断され、スケジュール調整し、手術を受けた。手術は日帰りで、2週間間隔で、両眼の手術を終えた。術後の1カ月の養生期間後自前の汚れた水晶体を多焦点の人工レンズに交換した効果で裸眼視力は0.03から1.0に改善され、60年間使用していた眼鏡が不要となった。

 人体を構成する器官の中で、再生されないものの人工物への交換再生による効果を実感した。飛躍的ではあるが、最先端のiPS細部を始め、不具合部位の再生医療の進展により、高齢者の健康回復が期待される。

■計量士人材について考える

 現状の国内の人口構成から、生産人口は減少しており、さらに生産工場の国内回帰、コロナ後の景気回復などから、若手人材は顕著で、多くの計量団体で言わる若手計量士の確保はさらなる困難が予測される。一方年金生活の将来不安から65歳の定年後も働きたいととする高齢者も多く、潜在的な有資格者の発掘、セカンドライフとしての育成も考えられ、10年程度の活動が期待できる。小生の所属団体では従来から、企業所属計量士の参加が多く、退職後の計量士活動が円滑に進んでおり、人材不足はない。

 人生百年時代時代を迎え、自らの体験を通して計量士業務の遂行が健康維持につながる一挙両得となる活動を進めて行きたい。

↑トップへ



「計量計測データバンク」web記事 2023年
「計量計測データバンク」web記事 2022年
「計量計測データバンク」web記事 2021年
「計量計測データバンク」web記事 2020年
「計量計測データバンク」web記事 2019年
「計量計測データバンク」web記事 2018年

ページのトップへ


「計量計測データバンク」web記事(計量法、団体関連、科学、技術、計量史、寄稿、ほか)トップページ