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日本計量新報 2007年12月2日 (2702号)

計量行政の確かな実行は国民の健全な暮らしを実現する土台

日本計量新報に寄稿があって第2690号から07年9月9日号、9月16日号、9月23日号の三回にわたって掲載された平和衡機の横田貞一氏の「計量基盤の揺らぎ」に対して計量行政機関と行政経験者などからいくつもの便りや感想が寄せられており、その内容の多くは計量行政の将来に対していまここで確かな布石を打つことを望むものである。
 日本の計量行政のうち、適正な計量の実施の確保を実現する計量器の検定と検査の実務を担当する都道府県と特定市などの当事者能力ともいえる組織と体制の一部に大きなほころびや破綻がみえており、組織の脆弱化がほとんどの地域で進行している。ドイツをはじめとする欧州諸国が計量行政の在り方に大きな変更を加えずに質量を中心に取引証明分野で確固たる姿勢を貫き通していることを考慮すれば、日本の計量行政がいま何も乱れていないことを口実に手を抜き、計量行政機関の中身を空っぽにして名称も不明なものにしてしまうと取り返しのつかない事態に陥ることになる。
 こうした背景には、地方の行政予算が減り続けていて総合すると行政分野でも組織を減少させているという事実がある。地方の計量行政が数年前に国の機関委任事務から自治事務に変更されて以降、どこかの県や市で予算の削減と組織の縮小をすると、他がそれを先例にして同じことをし、どこかの県で検定などの法令違反といえる事務の放棄などをすると、他が同様にそれを実施するということが繰り返されてきている。文化の発展の基礎であるとうたっている計量法の実施を担当する計量行政機関が計量法の実施で手を抜いている状況は極めて異常であり、「貧すれば鈍す」であるとはいえ、これは明らかに計量行政機関と地方公共団体の法律履行違反であるので見過ごすことはできない。このような状況にあって人口が140万人ほど(この人口数は平均的な県の人口数でもある)の滋賀県の計量行政は、知事の理解を含めて計量検定所とそれに協力する計量協会ならびにその会員が、他の見本や模範となる活動をしている。地方計量行政が苦しくなるのはその地方公共団体にお金がないからではなく、計量行政の担当者に使命感や知恵が不足しているからであり、その典型事例は計量法や計量行政のことをほとんど理解しない者が担当していることである。だからこれをやらなければならない、などの説明などしないし、それができないままどこまでも予算と組織を縮小させられてしまうのである。この点でも、滋賀県の場合には計量行政担当者が議会関係者や知事や市長に必要な説明をし、県と市などが計量行政として何をどこまでやらなければならないのか認識にまでいたらしめている。地方公共団体では財政逼迫状況のおり無理して計量行政の予算と組織と人員を増強することはないがこれ以上減らしてはならない。
 計量行政に関連するかつての国の側の状況はどうか。経済産業省の計量行政室がらみのことは除外して、産業技術総合研究所の財政的な課題関連が新聞で報道されたのでこれに触れる。
 産業技術総合研究所の計量行政関連部署は独立行政法人として国から切り離された各種の検査検定機関ヘの自立採算性確保ヘの要請が強まるのは必至と考えられる事で、これは公私の類似機関にも今後波及されることになろう。財政的には手形の乱発と言われていた「独法」のツケが今になって回ってきたようだ。産業技術総合研究所(産総研)のみで隠れ損失593億円、平成18年度でこれは独法中でも多い部類〈07年10月12日本経済新聞より〉。いずれは経営構造の改善要求が鋭い形ででてくることになるであろう。また経済産業省が抱えるもっと深刻で大きな隠れ損失の話は別にしても、いずれ遠からず財政当局は民営化など手を打たざるを得なくなる事は自明だ。これにより起こりうる各種検査手数料値上げの圧力はどの辺りまで広がり、どう対処すべきか。こういったといった問題は計量の世界にとって一般の製造業より深刻である。

 日本の計量行政の在り方、とりわけ経済と文化の基礎を支える計量制度の骨格となる計量法とその法令の実行に法律違反が生じないようにするためには、計量制度と計量法の生きた模範であるドイツに大いに学んでいくことが必要であろう。計量行政の確かな実行は文化と経済と国民の暮らしを実現するための健全な血液の流れにたとえることができる。


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