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日本計量新報 2008年8月5日 (2735号)

オリンピック競技は量を比べる競技と基準を実現する競技に分類できる

北京オリンピックが8月8日から8月24日まで北京を主な会場として開かれる。開会式は2008年8月8日午後8時8分に行われる。競技のいくつかは近隣の都市や沿岸部の都市青島で行われ、馬術競技は香港の沙田競馬場で開かれる。
 オリンピックはスポーツファンには最大級の楽しみであり、バルセロナやアテネオリンピックなども夏場の開催であったので夏の休暇中は退屈することがない。
 スポーツ(sport)の語源はラテン語のdeportareにさかのぼり、portare「荷を担う」の否定形「荷を担わない、働かない」から転じた「気晴らしをする、遊ぶ、楽しむ」から来ている。17世紀〜18世紀、sportは新興階級の地主の特権的遊びである狐狩り等の狩猟を指したように、スポーツの意味は時代とともに変化している。
 競技として勝敗や記録を主な目的として行う場合はチャンピオンスポーツであり、遊戯的な要素を持つ場合(楽しむ事や体を動かす事を主な目的として行う場合)はレクリエーションスポーツということになり、チェスなどもスポーツの概念に含まれる。そのように考えると散歩もスポーツになるので、犬と一緒に歩くのもスポーツである。
 オリンピック競技を計測の概念でとらえると、速さ、長さ、高さなどの量を比べる競技と、基準を実現する競技の二つに分類できる。
 基準を実現する競技には体操などがあり、その判定は必ずしもすべての人を納得させることができない曖昧さをもっている。ハンドボール競技では、アジア予選で審判部が不正な判定をして日本のオリンピック出場を阻止したことが、スポーツに抱かれていたフェアプレイや公正さへのイメージを打ち砕いた。サッカーでもゴールキックに結びつくファールの判定で勝敗が決まってしまうことが少なくなく、その判定に誤差要因が多いので競技そのものの面白みを台無しにする。野球におけるストライクとボールの判定における曖昧さはことのほか大きいから、国際競技ではボール球でも打ちにいかないと勝てない。
 陸上の短距離競技は、ゴール時点での時間の判定方法はよくできている一方で、スタート時点のでの誤差要因の決め方に大きな曖昧さがある。力が僅差である競技者の勝敗を決める大きな要素はスタートにあり、イチかバチかの博打(ばくち)を打って、限りなくフライングに近いスタートを切ることで決まる。
 走り高跳びや棒高跳びではバーが大きく弾んでも走高スタンドから落下しなければクリアとされるから、それよりも高い地点を飛んで通過した者もバーに触れていたにもかかわらず弾んだバーが偶然走高スタンドに残っていた者も同じ高さの記録となる。
 夏のオリンピックの水泳競技では、水の抵抗の小さい水着やストレッチ機能の付いた水着によって競技記録の時間に差が生じる。水着が同一だとしても競技の順位を決める時間の差以上にプールの中央部と端の部分の長さ(距離)の差の方が大きいという事実があるから、時間計測の差を突き詰めていくと別の誤差要素が出現してくる。
 オリンピックは純粋にスポーツ競技を楽しむだけではない。「ひとつの世界、ひとつの夢」(One World, One Dream)という北京オリンピックの標語には、さまざまな政治的な難しさを一応は棚上げにして人類が垣根なしに集まる場にしたいという思いが込められている。しかし、無いよりはましだとはいえ、オリンピックがあるからといって世界平和は実現しない。


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