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日本計量新報 2008年11月30日 (2751号)

日本の計量器産業を2倍にするという意気込みが企業を発展させる

08年夏、アメリカ(米国)の低所得者向け金融商品の設定に根本的な無理があることが明らかになったことを発端として、大手証券会社が倒れた。この商品を大量に購入していた欧州の証券会社、銀行が連鎖的に大損失を出し、金融機関に機能不全が生じて、結果的に金融面のパニック(恐慌)が発生した。
 中国、インド、アジア諸国の国々は経済成長を背景に異例の株高が続いていて、中国ではかつての日本のバブル期と相似した不動産投機現象により金余り現象が生じ、バブル経済となっていた。しかし、上海の株式市場を含めてアジアの株式市場はリーマンブラザーズの破綻を前に、株価ピーク時から60%ほど下げていた。
 日本の経済はここ数年、GDPが1%強ほど拡大する成長を続けており、経済が安定しているように見えるが、石油価格急騰の衝撃が及ぶ部分を度外視した物価状況をみると、物価下落のデフレ現象はそのまま残っており、勤労者賃金の下落(国民所得の減少)、通貨供給量などを総合して観察するとデフレ現象が続いている。
 本紙ではデフレ脱却宣言をしたい気持ちはあったものの、物価下落、国民所得の減少、人口の未来予測と就労人口の減少、国の債務の増大と政府の経済政策の混迷など幾つかの要因を考慮すると、日本の経済はデフレ経済の世界にとどまっていると判断するしかない。デフレ経済かインフレ経済かという判定とは別の次元に日本の経済があるのかも知れないが、経済状況を把握する理屈としてはこの二つしかない。日本のデフレはバブル現象の炎を収めるために、ガスの栓(せん)を絞るように通貨供給量を急激に減らしたことによって発生した人為的な現象であった。
 バブル経済は実体経済よりも30%から40%膨らんだかたちをとり、時にはそれは50%にも60%にも達する。北京オリンピック以後にあるかも知れない、あるいは上海万博後ともいわれていた中国経済のリセッション(景気後退)が、アメリカ(米国)のサブプライムローンの破綻によって直接的な影響を受けることになった。中国とインド、そしてアジア南東部、欧州など多くの国と地域が、経済成長率の下方修正を余儀なくされている。米国も含めたこれらの日本と関係の深い国と地域への商品の販売は、なにもしなければ10%は減り、場合によっては30%ほど、そして瞬間的には50%ほど減少することになるであろう。
 日本企業の成長要因の一つは、日本国内での販売と海外での販売を組み合わせたことであり、デフレ経済で伸びがほとんどない日本ではなく、海外での販売拡張が企業の成長を決定付けていた。  経済を日本全体というマクロでみるGDP(gross domestic product、国内総生産)指標は、ゼロ成長といってよい。企業側の視点では1%程度の伸びはゼロと同じである。政府は、マクロ視点だから日本の経済が1%でも規模を拡張すれば自己の責任は全うされたと考える。企業の側は、現状維持は後退ととらえる。競合他社が伸びれば自社の立場は相対的に弱くなり、後退と同じ現象が生ずるからである。どのような企業でも現状維持ではなく、少なくとも日本のGDPの3倍の伸びを計画する。
 日本の企業経営のご都合主義と思われるところは、伸びが大きいからそこで稼げばいいと考え、海外で安易に稼ごうとする点だ。海外で稼ぐ力は、世界一の品質と機能を要求する国内市場で活動することによって育(はぐく)まれる。電器産業や自動車産業がそうであったし、ほとんどすべての産業がそうである。
 市場や産業は、これまでの政府経済統計の対象の内側にあるものばかりではない。未来の市場や産業はこれらの外側にある。ビル・ゲイツのマイクロソフトや検索エンジンのグーグルなどは、そうした外側の事業を開拓することで成功を収めた。
 計量器産業においても、その企業が現在の儲け頭になっている事業はすべて経済産業省統計や計量器産業の統計の外側にあったものばかりである。計量器産業で活動する企業は、その企業の特性である特別な技術を発展的に活用して、新しい計量器事業やその外側に属する事業を創り出していくことで、大きく活路を拓くことができる。自分がやってきた仕事に誇りをもって、その技術の先にある未来の仕事と事業に挑戦的に取り組むことだ。既存の産業統計だけをみていたのでは未来は見えてこない。日本の計量器産業とその周辺産業を2倍の規模に拡張する意気込みこそ大事であり、それはやればできることである。
 過去の日本の計量器産業もそのようにして発展してきたのである。


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