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日本計量新報 2009年3月22日 (2766号)

頑張(がんば)れ地方公共団体の計量行政

人口150万人規模の県において、7名ほどの計量検定所職員で計量法の定めにしたがって定期検査などの計量行政を実施するのは、実際には困難だ。
 だから定期検査を実施する指定定期検査機関として計量協会を指定して業務の一部を担わせている。それでも適正計量の実施の確保に欠かせない立ち入り検査ほかの指導業務に手がまわらない。計量行政に従事する地方公共団体職員の中には計量行政が不完全にしかできないようになった現状に、大きな憂(うれ)いと嘆(なげ)きと怒りを表明する人が少なくない。

 計量行政が国の事務である機関委任事務から、地方公共団体の事務である自治事務に変更されて以来、地方公共団体は計量行政に従事する職員と関連予算を、ひどい場合には半分どころか三分の一にも減らしている。計量器(特定計量器)の検定が役所による検定から製造者(メーカー)自己検定になって、過半の計量器が製造と連動するメーカー自己検定になったために、役所が実施する検定業務が大きく減じたことを差し引いても、地方公共団体の計量行政への予算配置は意欲も義務も投げ捨てたようなみすぼらしい状態になった。
 機関委任事務時代に地方公共団体の計量行政は定期検査ほかの義務を怠りがちであったのだが、自治事務にした後はこうした怠慢の状態がさらに加速している。
 地方公共団体は、地域の事情に応じた行政を実施できないことや予算配置のことなどから三割自治と呼んでこれの改善を強く望んできた。計量行政が機関委任事務から自治事務に変わるということは、迂闊(うかつ)にその言葉に惑わされると改善にみえるが、計量行政はそのほとんどが全国一律に実施すべき内容であり、自治事務になった現在でも計量法の検定や質量計(はかり)の定期検査は全国一律に実施する内容として変わりはない。
 「自治事務へ」という甘い言葉に惑わされて安易にそれに同意してしまった地方公共団体の計量行政職員の思慮の足りなさが悔やまれる。この変更は、計量行政審議会にかけられずに政府の規制改革など一連の方針実行の数あわせとして行われたもので、議論せずに有無を言わさずに強行された改変であった。
 しかも、計量法の諸規定の方は、この改変と連動した変更がなされていないから、地方公共団体にとって都合のよいことは何もない。
 むしろ、計量行政にほぼ自動的に振り分けられてきた行政費用が計量行政にまわらなくなることなってしまう恐れが多く、実際に自治事務に変わってからは振り分けられる計量行政費用が半減している。
 「頑張(がんば)れ地方公共団体の計量行政」と声を大にする一方で、国の計量行政関係機関の地方応援の諸施策を望む。


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