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日本計量新報 2012年12月16日 (2946号)

計量行政が細って動物愛護などの行政事務が増大する現代

テレビ、ラジオなどが伝えるニュース報道などの言葉は、日本に住む人々の言葉に作用する。テレビなどは文章をつなぐ助詞の「が」「を」などを「について(に就いて)」という言葉で代用する。「について」は、格助詞「に」に、動詞「つ(就)く」の連用形と接続助詞「て」の付いた「につきて」の音変化、である連語だ。そのもともとの意味は「ある事柄に関して、その範囲をそれと限定する。」であるが、これに助詞の役割をさせておくと、助詞の使い方が極めて楽になるというか手間が省け、なおかつ間違いに似た状況を消してしまう。しかしニュース用語に用いられる「について」は極めて曖昧な用語であり、多くの場合日本語になっていない間違い言葉であると受け取ることができる。
 ニュースの用語で常用される言葉に何々を「受けて」というのがある。答申を受けてなど、と使われるのであればそれなりに正しいのかもしれないが、物事に対する対応のすべてに「受けて」の言葉で間に合わせるのは軽佻浮薄といってよい。テレビ、ラジオのアナウンサーは老いも若きも普通の言葉を用いてよいところに敬語を代用するので、その発する日本語は聞きにくい。「話を聞きたい」ことが、「お話を伺わせていただけますでしょうか」になってしまうので、これに倣って日本語を使う気になどならない。そのNHK報道では警察署のことを警察と言い、消防署のことを消防と言う。消防が火を消しに行った、となるからこれはおかしい。警察にしても警察が警察したになってしまう。警察には、社会公共の安全・秩序実現のために国家権力をもって国民に命令し、強制する作用という意味もあるので、「署」を抜かしてしまっては不都合が生じる。敬語などで言葉を長くしてしまっているのに、一方では必要な言葉を省くことは愚かしい。
 東京といえば一般には地域としての東京を指す。これが都庁との代用に都という言葉を用いることが多い。神奈川県庁のことを県という言い方をすることも多い。ある県の行政組織の重要人物が計量行政に関して未発表の事実や考え方を一般の計量組織の会合で述べた際に、ある報道機関が「県庁の職員が」とすべき事実を、「○○県の人が」とぼかして表現したのに対して、県庁の下部機関の職員が「県の人が」というのは「県庁の職員が」と同じ意味だと述べたのはよいとしても、その意味することは秘密に属することを上部機関に秘密事項である旨の念を押さなかったことで生じる不始末であることを心配しての、報道機関への当てつけであった。
 東京都といえば都庁のことであり、神奈川県といえば神奈川県庁のことであり、愛知県といえば、愛知県庁のことであり、大阪府といえば大阪府庁のことであると考えるのは、地方公共団体職員の思い上がりであるように思う。県庁などに隣接した場所に事業所を置くNHKや新聞社が、役所が出す方法にそのまま便乗してニュースを流すのはお手軽であり便利でもある。報道の視点が住民や生活者の側になく、役所の側に位置するのはこのためである。計量行政の従事者である計量公務員が、適正な計量の実施を通じて社会の計量の安全を確保することよりも、役所の上部機関の思惑を最優先に配慮して行動する傾向が顕著であるのは、○○県の報道文書を○○県庁と受け取ることにどこかで通じるように思える。
 大きな樹木は太いがっしりした幹があってこそのものである。細い幹に枝葉だけが生い茂るという現象に似ているのが、現在の行政機構なり行政組織である。太い幹に属する計量行政がお金と人と組織の面で極度に削られていて、動物愛護などの名目を立てた環境庁の組織がこれよりも大きくなっている事実は奇怪なことである。動物愛護行政を否定しない立場に立ったとしても、この分野の急激な組織と行政事務の増大との対比で、計量行政の重要な分野であるハカリ(質量計)の定期検査の実施率が5割を下回ると言い放つ現場計量士の言葉の確認もまた大事である。

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