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日本計量新報 2014年12月7日 (3036号)

計量法における適正計量管理事業所制度の在り方

サシ、マス、ハカリと表現される度量衡器は、長さを測って取引するもの、容積をはかって取引するもの、質量(一般には目方とか重量といわれているが、厳密には質量)を計って取引するもの、などであり、明治以降において古い時代はこれらの計量器はすべて検定付でないと販売できなかった。
 現代のサシに類する計量器としては、長さとしての距離を測るタクシーメーターが検定を要する計量器になっている。マスの容積に関係しては、ガソリンメーター、水道メーター、ガスメーターなどが検定を要する計量器である。ハカリでも同じようなことである。ここには例外があることを添えておく。
 取引と証明に関係して計量法で規定されて検定受検とその合格が義務として課せられている計量器は、使用者は器差など性能に関係することについては、手を入れることができないしくみになっている。
 造った計量器の性能にかかわる検定について、計量法は指定製造事業者制度を新設してこれを運営しており、これはメーカー自己検定として上手く運営されている。水道メーターやガスメーターの検定に際しては、かつてはそのメーカーの所在地の計量検定所からメーカーの製造現場に出向いて、器差検査としての検定を実施していた。この様は検定所の職員があたかもメーカーの検査員の状態であったから、メーカー自己検定が実施されて以降は不思議な光景に見えてしまう。
 ハカリの定期検査あるいは計量証明検査は、この検査のための指定機関制度が指定製造事業者制度と同時期に新設された。株式会社を含めて法人格を有する者を地方公共団体が指定することで、ハカリの定期検査や計量証明検査をさせることができるようになった。地方の計量協会が法人格を取得して、この指定を受けて、計量検定所や計量検査所などの計量行政機関がする検査を実施している状態が大きく広がっている。
 指定製造事業者制度は円滑に機能しており、この制度導入が成功であったと判断される。ハカリの定期検査のための指定定期検査機関の制度は、定期検査の料金が実費には遠くおよばない内容になっているために、この不足分を指定する側が補填することでなくては運営ができない。ハカリの定期検査は検査料金は形式的な内容になっているので、この検査は役所の費用ですべて賄うということである。1967(昭和42)年まではハカリの定期検査は無料であったことがこの方面の検査料金にまつわる経緯と事情を物語っている。
 指定製造事業者制度、指定定期検査機関制度といった計量法の業務委託制度と関連する制度として、定期検査に代わる計量士によるハカリの代検査がある。そして実質はハカリの代検査というと語弊があるが、適正計量管理事業所制度があり、ここでは使用するハカリを定期検査と同等以上に管理し、検査することによって、役所などが実施する定期検査を受けたこととみなされるしくみがつくられている。
 電気式のハカリにまつわっては、このハカリの性能を維持するために、それほど難しくない調整の操作をすることが実際上は求められる。同じ性能、同じ機能、同じようにして同時期に造られた電気式のハカリであって、片方が取引と証明に用いられる検定付(その多くはメーカー自己検定品として供給されている)のハカリは、性能を確保するための器差などの調整がおこなえず、もう一方の検定の付かない取引と証明の分野から外れた管理用として用いられるものは、これを調整しても計量法の上では何らさしつかえない上に、その調整をして用いることの方が、調整しないものに比べて質量の測定の精密度をはるかに上位に確保することができる。
 この分野の計量法の融通性を求める動きが長い期間にわたって、適正計量管理事業所と関係する計量士からでている。これに対して計量法は反応をしていない。計量法を制定し、運営する側の人々がこのことを問題あるいは課題として対処することを怠ってきたといってもよい。ハカリのメーカー側からは電気式のハカリの調整の方法が公式か非公式かにかかわらず示されていて、その調整が実際におこなわれており、それで支障がないにもかかわらず、立法と法の運営の当事者はこのことに手をつけたがらない。
 適正計量管理事業所制度は、その事業所が使用しているハカリほかの計量器を機能させるために必要な管理をしていることを、ハカリの定期検査として認めたということである。これが「定期検査の免除」という表現は、物事の技術的な側面を無視した状態の説明になっている。
 計量法は適正な計量の実施の確保を主眼として、このことによって国民の生活と産業と文化活動がうまくいくということで、これを目標にしている。適正計量管理事業所制度は、その事業所がハカリを含む計量器を適正に管理し、使用することを旨として指定を受けるのであるから、その指定を促進する立場にたつと、自らが実施するハカリの定期検査の数が減り、検定所の勤務員の数も減ることになるということから、地方公共団体によっては機運が高まっている時期にその指定推進をしてこなかった。
 地方公共団体が福祉方面ほかの費用が膨らんで、計量行政に関係する費用の手当をサボる傾向がでてきているのが現在の状態であり、この結果、検査すべきハカリの検査漏れが驚くほどの状態になっているのは皮肉ではあるが、放置はできない。
 企業はおのずと計量器の管理を適正におこない、適正な計量を実施するかといえば、計量に関係する知識と技術の普及などの関係でそのようにはなっていない。計量の専門の知識を持っている者の働きかけによって、計量器と計量への意識が啓発され、適正な計量の実施の確保が誘導される。
 ハカリもほかの計量器もその使用者である事業所が自ら意識して管理するということの促進のため、計量器の管理に関する法令上の融通をはかることは社会的に有益である。現状の計量法とその運営に関係しては、適正計量管理事業所制度への対応は無思想であり無策であり、怠慢な状況にある。制度創設時の壮大な夢と情熱に学ぶとよい。

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