計量新報記事計量計測データバンク会社概要出版図書案内
2014年12月  7日(3036号)  14日(3037号)  21日(3038号)
社説TOP

日本計量新報 2014年12月14日 (3037号)

イノベーションとしての燃料電池車と計量計測分野のそれ

写真とカメラの専門雑誌は昭和から平成に移る時点で印刷技術の大転換があり、印刷された写真の鮮明度が格段に向上した。自然写真の現代の人気写真家の写真集と1982(昭和57)年7月に朝日新聞社から刊行された田淵行男氏の『安曇野挽歌』の写真との画質の差がそれを物語っている。挽歌とは葬送の歌であるから、くすんだ色の印刷にしているのかも知れないが、それにしても印刷技術の30年ほどの差は歴然としている。
 トヨタはセダンタイプの新型燃料電池自動車「MIRAI」(未来)を日本で2014年12月15日から発売する。米国では2015年秋頃から、欧州では2015年9月頃から販売を開始する。クルマに充填した水素を大気中から吸い込んだ酸素の化学反応によって生み出されたエネルギーを電気に転換して電気モーターに送って、そのモーターの力によって駆動する。ハイブリッドカーを世界に広めたトヨタの次のイノベーション(社会性をともなった技術革新)への現実的な挑戦が燃料電池自動車の一般向け発売である。燃料電池車の開発は1992年からおこなってきてこれが実を結んだ。
 水素燃料電池車「MIRAI」(未来)の車両本体価格は税込み723万6000円であり、最大202万円を国が補助するので実質価格は520万円になる。高級乗用車はこれより高いので普及は早そうだ。自動車と内燃機関と石油燃料という関係が燃料電池車によって革新される。蓄電式の電気自動車の普及と燃料電池車の普及が進むと、石油を使った内燃機関との割合がどのようになっていくか。石油燃料を使う自動車は漸次(ぜんじ)減っていく。石油使用の内燃機関と蓄電池とモーターを使うハイブリットカーはこれをつなぐことになるのか。
 計量計測技術のイノベーションは電子センサーを使用することによって起こり、小さな演算チップやコンピュータとの連動で完結した。機械技術があってこそ電子技術を取り入れることができることであったが、電子技術の要素が一層ましていて、このことによって量産型の計器の低価格が進行した。計測機器は単独で測定値を表示するだけではなく、場合によっては測定値を次の要素に送り込んで作用させもする。
 硬さを測って強さを求め、くだものの果肉の硬さから甘さ(糖度)を求めることもある。液体の屈折率は甘さにも連動し、この原理によって糖度計がつくられる。温かさは美味さであるので、日本酒の燗(かん)の状態を表示するガラス製の温度計があり、アルコール度を浮力から求める浮き式の計器もある。果物の大きさ、重さ(質量)、色合い、甘さ、表面の傷やデコボコなどを判定し、選別する機械が普及している。さまざまな産業において同じようなことがなされており、普及も進んでいるが、販売対象となる需用者はこのことを知らないことが多いので、これを知らせることは大事だ。

※日本計量新報の購読、見本誌の請求はこちら


記事目次社説TOP
HOME
Copyright (C)2006 株式会社日本計量新報社. All rights reserved.