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日本計量新報 2017年9月3日 (3162号)

計測器産業は生産財産業であり人の神経機能に似た働きをする

「韓国の計量事象を視察するように」という言葉での招きに応じて2017523日をから34日の日程ででかけた。計測機器企業のソウル本社と工場と研究所に行き、韓国の標準機関を案内され、韓国の公的機関ともいえる団体を訪問した。当方の意思ではなく当然のごとくということでこの日程が組まれ、そのうちの2時間30分ほど、団体が企画する年間行事のセミナーに1人だけの講師として説明に立つことを命じられていた。日本の計量器産業と計量法に基づく計量行政の事情をつぶさに語るようにということであった。計量器産業の項目で話したことは以下のようなことだ。

日本のGDPはおおよそ500兆円である。それを超えている統計もある。大まかに考える場合には日本のGDP500兆円とするとよい。対する日本の計量器産業の生産高は産業統計や工業会統計から単純に推計すると8000億円ほどである。ほかに計量器の保守整備を含める費用が2000億円ほどがある。これを寄せると1兆円である。計量器企業の計量器についての売り上げ割合は7割ほどである、5割以下という企業もある。計量器を内蔵したシステムに対する計量器の構成比は3割というのが妥当だろう。半導体関連の計測器と半導体製造装置の生産高は1兆円である。それを含めると2兆円だ。含めない場合でも計量計測機器関連企業の生産額合計は2兆円になる。ある半導体製造の有力企業は計量標準の役所からでて創業して精密計測器を製造していた。韓国での日本の計量器産業の総生産高は1兆円と説明した。

日本の計量器生産高を1兆円とするとGDP500兆円に対する割合は02%である。計量器生産高を2兆円とすると04%。3兆円とすると06%になる。GDPと日本の計量器生産額と構成比は何を物語るか。産業として動向だけを取り出すと計量器産業の推移は産業機械の動向と重なる。工作機械産業が伸びているときには計量器産業も同じ動きをしている。計量器産業は生産財産業と概括することができる。ハカリの生産額の約6割は工業用ハカリであるから生産動向はそのようになる。計量器産業は産業機械産業だと言うことになるがうわべだけを見てのことだ。

空気の状態をはかる計測器がある。雰囲気をはかる計測器といってよい。水の状態をはかる計測器がある。水臭さをはかる計測器だ。震(振)えている状態をはかる計測器がある。体温をはかり、血圧をはかる計測器がある。血液の成分をつうじて身体の状態を推しはかる計測器がある。塩水や砂糖の濃さは浮きガラスが知らせる。はかることを列記すると、とどまるところがない。今はとどまっていても明日には新しいことがはかられている。つぎつぎと計測することがおこって、はてしなく続く。これが計測の世界である。

空気や水やさまざまな状態を知るために計測がなされる。物象の状態の量をはかることが計量と呼ばれる。状態を感知する。痛い痒い、ちょっと痒い、ひどく痛いといった量の状態を人の神経は知らせる。同じことを計測器は経済と社会にという大きな器を相手におこなっている。計測器と計測システムは人の神経の末端と神経からなる神経機能と同じ働きをしている。

経済機能としての商品の取引については金10グラムは幾らということにハカリが公正中立な立場でかかわる。食肉でも石油でもガスでも水道でも電気でもその量と料金の関係式を計量器の目盛りが決める。消費生活に緊密に結びついた計量器は特定計量器と決めて計量法は検定制度をつうじて特別に強くかかわる。この数行の論考は余談といってよいものだがこれも計測の役割の一つである。

人の身体と神経の機能に計測器と計測システムは重なる。人の神経組織とその機能を解剖学的に細分すると数千あるいは数万いやそれ以上になる。同じ位に計測器が存在する。体重と神経の質量の比率を考えるとGDP対比の計量器産業の比率と釣り合うのかどうか。神経の総延長は血管の総延長に似ているだろうから、人の身長との対比ではとてつもなく大きい。計量器産業のGDP対比、そして人の身体と神経の機能との対比という2つのことを取り上げて計量器産業と計測の役割を考察した。計測の需要と計測器の開発に関係して上のことを思い浮かべるとよい。

韓国からの求めに応じて上のような内容のことを話したがこれで全部ではない。また滞在と交流をつうじて分かったことがあるのでそれはこの続きとして取り扱う。

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