事故を無くし安全な輸送環境を実現するために
過積載等、資格者が命令、容認した場合 資格者証の返納命令
トラック業界を取り巻く経営環境は、軽油価格の高騰、安全対策や環境対策への対応等のコストアップの他、過当競争による運賃の低迷などにより厳しい状態となっている。
また長時間労働などによる事故、飲酒運転なども社会問題となり、関係機関などは、輸送の安全性を向上させるために、事業者や運行管理者に対し事故防止への対策を強めている。
運行管理者資格者証の返納命令発令基準などを強化
国土交通省は、自動車運送事業における運行管理者資格者証の返納命令発令基準などを強化する。7月1日から実施する。
自動車運送事業者は、営業所ごとに車両数に応じて国家資格を有する運行管理者を選任することが義務づけられている。これまで運行管理者に関する違反が一定以上であり、運転者に対する適切な指導及び監督を怠った場合などには運行管理者資格者証の返納命令を発令しているが、改正後は運転者が過労運転、酒気帯び運転、速度違反、過積載運行などを引き起こした場合に資格者がこれらの行為を命じたり、容認した場合ただちに返納命令を発令する(表4)。
「運輸安全マネジメント」導入
昨年10月から、運輸安全マネジメントの導入に伴う自動車運送事業関係法(道路運送法及び貨物自動車運送事業法)の一部を改正する法律が施行され、事業経営者の安全確保義務が明確になった。(法令等 http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03management/laws.html)
処分歴等検索サイト開設
国土交通省は、運輸・建設などの事業者に関する処分歴などを検索するサイトを2007年10月を目途に開始する。事業者名を入力すると、行政処分や行政指導、指名停止、刑事告発などについて、過去2〜5年分の処分歴を見ることができる。同省は、事業者に対し国民の「監視の目」をつくることで、適正な事業運営を促し、安全の確保につなげたいとしている。
過積載に対する処分
過積載を防止するためには、トラック事業者に対する行政処分(表1〜3)のみではなく、荷主に対しても啓発活動等を積極的に推進する必要がある。そのため、同省は荷主に対しても過積載運行の再発防止のための協力要請書等を発出し、その注意喚起を行なっている(表5)。
【表1】
違反回数 |
処分 |
初違反 |
車両停止処分 |
再違反 |
5割未満を3年間で4回行った場合 |
運輸支局等の指導、定期報告 |
5割以上で10割未満を3年間で4回行った場合 |
事業の停止処分 |
10割超を3年間で4回行った場合 |
事業の許可の取消処分 |
【表2】
違反点数の累積機関 |
原則3年間 |
違反事業者名の公表 |
累積違反点数が20点超となった場合 |
事業の停止処分 |
(1) 1回の行政処分で270日車以上を受けた営業所(ただし、運輸局内の累積違反点数が30点超の場合は180車以上)
(2) 運輸局内の累積違反点数が50点超となった場合、当該運輸局内の全営業所 |
事業の許可取消処分 |
(1) (地域に関係なく)2年間に事業停止処分を4回受けた場合
(2) 運輸局内の累積違反点数が80点超となった場合 |
【表3】
事業者への罰則 |
「過積載関係」行政処分等の基準(貨物自動車運送事業法) |
違反行為 |
処分等の基準(車輌の使用停止) |
過積載等による運送の引き受け |
初回 |
2回目 |
3回目 |
4回目 |
過積載の程度が5割未満のもの |
10日×違反車両数 |
30日×違反車両数 |
80日×違反車両数 |
200日×違反車両数 |
過積載の程度が5割以上10割未満のもの |
20日×違反車両数 |
50日×違反車両数 |
130日×違反車両数 |
330日×違反車両数 |
過積載の程度が10割以上のもの |
30日×違反車両数 |
80日×違反車両数 |
200日×違反車両数 |
500日×違反車両数 |
※過積載違反により、社会的影響の大きい事故を引き起こした場合等には、処分の荷重がおこなわれることがあります。 |
【表4】
「道路運送法に基づく運行管理者資格者証の返納命令発令基準等について」一部改正の主な概要
(1) 事業用自動車の運転者が過労運転、酒酔い運転、酒気帯び運転、薬物等使用運転、無免許運転、大型自動車等無資格運転、最高速度違反行為又は過積載運行(貨物関係)を引き起こした場合であって、資格者が当該違反行為を命じ、又は事業用自動車の運転者がこれらの行為をすることを容認していた場合
(2) 資格者が事業用自動車により、酒酔い運転、酒気帯び運転、薬物等使用運転、無免許運転、大型自動車等無資格運転又はひき逃げを行った場合
(3) 運行管理者に選任されている資格者が、運転者に対する点呼を全く実施していない状態が認められる場合
(4) 資格者が運行の安全確保に関する違反の事実若しくはこれを証するものを隠滅し又は改ざんを行う等これを疑うに足りる相当の理由が認められる場合 |
【表5】
荷主への罰則 |
過積載車輌の運転の要求等の禁止(道路交通法) |
道路交通法において、荷主は運転者に対し過積載となることを知りながら、積載物を売り渡したり、引き渡したりしてはいけません。これに違反した荷主等が、反復して過積載の要求をする恐れがあると認められるときは、警察署長から過積載の「再発防止命令」が出されます。
罰則 再発防止命令に違反すると、6月以下の懲役又は、10万円以下の罰金が科せられます。 |
荷主勧告の積極的な発動(貨物自動車運送事業法) |
国土交通大臣は、貨物自動車運送事業法第64条に基づき
○どうしても過積載しなければ、輸送できないような依頼をした場合
○過積載となることがわかっていながら過積載運行を要求した場合
荷主に対し、再発防止の措置を執るように勧告します。
・協力要請(イエローカード)
・警告書(レッドカード) |
乗務員への罰則 |
違反点数及び反則金(道路交通法) |
過積載の程度 |
大型車 |
普通車 |
・車輌の停止と過積物の重量の測定等
・過積載車輌に係わる処置命令及び通行指示
・従わない場合は3月以下の懲役又は5万円以下の罰金 |
10割以上 |
※6点 |
※罰則適用 |
3点 |
3万5千円 |
5〜10割未満 |
3点 |
4万円 |
2点 |
3万円 |
5割未満 |
2点 |
3万円 |
1点 |
2万円 |
※6点は免許停止処分、罰則は6月以下の懲役又は10万円以下の罰金 |
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