タイヤ脱落事故発生に歯止め
ホイールの締め付けにはトルク機器を使用する
「安心・安全輸送のため」特集の第1回は、貨物輸送車輌の整備面で大きな役割を担っているトルク計測機器(レンチ、ドライバー、テスタなど)を取り上げる。過去にトラックやダンプカーなどから大きなタイヤがはずれ、重大事故が発生したことを踏まえ、国土交通省(以下、国交省)や関係団体、事業者が協力した結果、現在では車種ごとに規定されたトルク値を、専用の工具であるトルクレンチで科学的に管理する手法が、法的に整備されている。タイヤ脱落事故は、2004(平成16)年をピークに年々減り続けていたが、ここ2年間は増加傾向にあり、国交省では制度の徹底を呼びかけている。
事故件数が近年増加傾向に
国交省が調べた過去10年間のタイヤ脱落事故発生件数は、2004(平成16)年度の87件をピークに減少傾向が続いていたが、2012(平成24)年度から増加に転じ、2013(平成25)年度も前年度比4件増(3割増)の19件と大きく増加しており、特に、2013年11月以降では13件、とりわけ2月と3月に7件(うち人身事故2件)と多発し、憂慮すべき状況となっている。
2002(平成14)年度から2013(平成25)年度までに発生した事故は392件であり、月別の発生状況を見ると2月に63件、3月に55件と、特に2月と3月の冬から初春の時期に発生が集中している。また、地域別(使用の本拠の位置別)の発生状況を見ると、積雪地域の発生率が高い傾向が見られる。国交省では、2月と3月に発生が多くなる原因の1つとして、例年10月から12月にかけて夏用タイヤから冬用タイヤに交換する際にホイール・ボルトとナットの締結不良(締付力不足、誤組、過締等)があり、ボルトの疲労破壊が進行して数カ月後に集中的に折損し、車輪の脱落が発生することが考えられている。
規定トルクで車輪の脱着作業が重要
国交省では、大型車の使用者に対して、規定トルクでのホイール・ナット締め付けを確実におこなうなど、ホイールの脱着作業を正しく実施することをはじめ、適切な車両管理の徹底をお願いしている。また、日常点検をはじめとした定期点検においてホイール・ナットの脱落・緩みやホイール・ボルトの折損などの異常の有無を重点的に点検するよう訴えている。
トルク機器での管理
適正なトルク値がある。この規定値を把握していないと、締め付けすぎてボルトやナット類を痛めたり、逆に締め付け不足によって、部品の脱落を発生させたりしている。結果、重大事故につながったり、製品の不良を生む。
数値で管理が大事
自動車や電車、飛行機等の整備工場における現場では、日常的に使われている各種のトルク機器は、数値で管理することで、勘に頼ることなく、締め付け忘れや個人差もない安全な生産と整備作業ができる。 |