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日本計量新報 2007年2月4日 (2662号)

企業の悪事は隠蔽できない、不二家事件は「ずさんな品質管理」の結果ではない

「ずさんな品質管理」ということで(株)不二家(菓子製造販売と洋菓子店チェーン及びレストランをフランチャイズ展開、東証1部、売上高単体709億円、連結848億4300万円(2006年3月期)、従業員数単体1020人、連結1323名(2006年9月現在))が、消費期限が切れた牛乳を使用してシュークリームを製造していたことが内部告発を受けた報道機関の手により公になり、国の機関からも指弾を受ける事態になっている。
 不二家では2006年10月と11月の計8回におよんで上記の行為を埼玉県新座市の同社埼玉工場でしていたことを知りながら「マスコミに知られたら雪印乳業(雪印集団食中毒事件)の二の舞になることは避けられない」と隠蔽(いんぺい)指示の内部文書を配布して対応していたことが2007年1月10日に明らかになったものである。このようにして製造されたシュークリームを食べての健康被害はでていない。
 この事件報道と政府機関の対応は建前主義の色彩が濃厚であり好ましいとはいえないものの、企業の諸事業における品質管理など基本的な姿勢の在り方を考えさせる事項ではある。
 企業のコストということでは技術やノウハウなど秘密にしておくべきことが少なからずあり、それが必要な人々の間で利用され外部に漏れないことは大事である。この技術ノウハウなど秘密を保持することには、社内の従業員にもそのことを明かさないことにより技術向上の進展を阻害することなどを含めると、総合的にはそれを隠すことがそうしないことよりも実際的にはコストを要することが多い。
 消費期限が切れた牛乳を使用してシュークリームを製造していたことを内部告発されて事件になって、その後の企業生命をおびやかす事態を招いた不二家事件は、「ずさんな品質管理」ということよりも、「不正」を隠し事としてせっかくの牛乳が「もったいない」という形式のコスト意識で行動してはならないことを物語っている。やむを得ずあるいは捨ててしまわなくてはならない牛乳の仕入れ価格200万円のために100億円をはるかに超える売り上げを捨ててしまうことになるという事態が待っていたのである。
 企業は決して従業員にも顧客にも人にも地球の環境にもやさしくなどない。人に愛で報いようとしない企業は、従業員でもある人から憎しみで対応される。臨時雇用で使い捨てされる従業員は同じ労働をしている不二家とその社員に恨みと怒りとつねにもっているのが普通である。クリスマスのケーキ商戦が終了したら「ハイそれまでよ」と捨てられる人々のうち誰かが消費期限が切れた牛乳を使用していたことを告発することは十分にあり得ることであり、こうした悪事の秘密は隠すことはできないのである。
 技術は特許その他で保護を得ることができるからそうした仕組みを大いに利用すればよい。企業会計でも秘匿していい部分は多い。プライバシーに関することは隠さなくてはならない。企業会計の奥の奥とプライバシー以外はすべて明らかにするという行動様式でないと、不二家事件のような「不測の事態」というのは予測の事態であり、起こるべきして起きた事態であるといえる。
 「策士策におぼれる」は、NHK大河ドラマの山本勘助の川中島の戦いの失敗で明らかである。よい意味での正直や愚鈍の者は策士を打ち負かすことが多い。


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