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日本計量新報 2007年2月18日 (2664号)

地方公共団体の計量行政実施の困窮は国の一大事

計量法は計量制度の骨格となる法律であり、その公正な実施はこの国の経済と文化の発展に寄与し、国民の福祉を向上させる。計量制度は社会の基盤をなす仕組みでありそれは社会基盤でもある。計量法は計量の基礎である計量単位を決め、計量が適正に実施されるための計量器の在り方と計量の仕方なども定めている。こうした計量制度が円滑に実施されるための仕組みとして政府と地方公共団体に計量行政の組織がおかれている。かつて計量は度量衡といって差し・枡・秤(さし・ます・はかり)に関係するような量の計量であったものが、環境計測としての濃度、振動、騒音などその他の量の計量を対象とするようになって今の計量制度がある。日本の計量制度の骨格をなす計量法が計量規制で直接的に対象とするのは「取り引き」と「証明」に関する分野である。計量単位を定め、その使用を求める単位の規制法規に関係する機能は、科学技術や産業や文化などが振興するための基礎となり、それは兵站(へいたん・英語ではコミュニケーションズ〔communications〕)である。兵站とは「戦闘部隊の後方にあって、人員・兵器・食糧などの前送・補給にあたり、また後方連絡線の確保にあたる活動機能」(国語辞書)のこと。
 世界の国々が共通して実施することが望ましく、その実施について加盟国が道義的な義務を課する国際的な計量の取り決めがある。この取り決めは理想(その理想が欧州の国々の人々にとって好都合な理想であることなどが指摘されることもある)ではあるものの、国々によって計量単位や計り方や計量取り引きなどの慣習の違いがあるため、たとえばOIML(国際法定計量機関)の規定が各国で完全に共通に実施されているわけではない。
 国や地域といわれるように、宗教や文化のことを含めて民族のことなどがあって現代の国家の概念は決して固定的ではなく、一つの決まりで世界の国々を縛っていくことは難しい。一つの決まりですべてを統一して実施していくことは数学的な美しさをもつものの、文化や宗教などを含む民族意識と計量の慣習があるからそのようにはいかないものである。欧州では計量器に対して厳格な決めごとをして計量が適正に実施されるように役所が深く立ち入る計量の仕組みになっており、このことは崩れそうにない。
 日本では国と地方公共団体が旧来の行政機構を維持していくための収入が極端に不足するようになったために、行政費用を削減することを目的に含んだ「規制緩和政策」が打ち出され、地方公共団体の計量行政は法律で定めた計量器の規制として検査など、すべきをしない傾向が出てきている。はかりの定期検査に関しても対象となるはかりの存在を知らないこととして、その定期検査をしないということが起こっている。はかりの定期検査もれの状況は改善の傾向にはなく、悪い方向に向かって進んでいる。それは地方の計量行政機関が行政費用をここに向けることをしなくなっているという法律の実施義務を放棄しているのに似た状況を増大させている。これは計量行政職員に必要な知識と技術を要請するという訓練を怠ってきたこととも関係している。日本経済は「バブル経済」の後に「デフレ経済」に陥っていたが、日本の計量行政は行政費用を確保しないために、計量法の規定に従って実施すべき行政事務としてはかりの定期検査などをかなりの部分怠るという事態になっている。
 国民福祉の向上、経済と文化の発展のために適正な計量の実施を確保することが計量法の目的である。地方公共団体が計量法の規定を望ましい形で実施できないのであれば、国民も事業者も計量法を信頼し適正な計量をする気持ちをなくしてしまうことになる。国際的な計量の取り決めに対応するために形だけのことをするよりも、日本の計量制度がしっかりするように計量行政機関の行政費用と人員の確保のために必要な対応をすることが大事である。地方公共団体の計量行政費用の削減は、計量行政が機関委任事務から自治事務に変わってから顕著になり、はかりの定期検査の実施率もこれと連動して悪くなっている。ある県が計量行政をさぼると、それにならって他の県が計量行政費用を削減して同じように計量行政をさぼるという連鎖が発生している。日本の計量制度の確かな存立は日本の経済と文化と国民福祉の支えになるものであるので、地方公共団体が計量行政の体制を確かなものにすることの施策こそが肝心なことであり、急務でもあり、有効な手だてを早急に施さなくてはならない。


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